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元気な日は平気だった音楽が、疲れた日はうるさく感じた話――集中できる音楽の選び方を、内向型の脳の仕組みから考えてみた。

元気な日は平気だった音楽が、疲れている日は急にうるさく感じる。

歌詞が耳に刺さる。テンポが速い曲がやたらと気になる。でも静かな場所に移動したいわけでもない。あの不思議な感覚、覚えていますか?

私はずっと「気分の問題」だと思っていた。で
も少し調べてみると、音楽と脳の注意のシステムには、思っていた以上に深い関係があるらしかった。

この記事では、内向型の人がなぜ特定の音楽に救われやすいのかを、脳の「刺激量の処理」という視点から考えてみる。
バッハやミニマル・ミュージックが落ち着く理由も、高尚な趣味があるからではなく、もう少し別のところにある話かもしれない。


なぜ音楽で疲れることがあるのか

音楽は娯楽だ、と思っていると少し不思議な現象に気づく。

職場の環境音、電車内のノイズ、SNSの流れてくる情報。そういったものに一日さらされたあと、帰宅してから音楽をかけると、それがさらに「処理するもの」として脳に届いてしまうことがある。

脳は音を聞くとき、ただ受け取るだけでなく、音の構造やリズム、歌詞の意味を同時に処理している。曲の展開が激しかったり、歌詞が耳に入ってきたりすると、その処理量は思いのほか大きい。

消耗しているときに「うるさい」と感じるのは、音量の問題だけではないかもしれない。脳が処理しなければならない情報の量が、その日の限界をすでに超えていることのサインである場合がある。


内向型は刺激の「受け取り方」が違う

私の記事では繰り返し触れていることだが、内向型は外向型と比べて覚醒水準が高い傾向にあるという仮説が提唱されてきた。
しかしこれは「内向型の人は刺激に弱い」という単純な話ではないし、個人差も非常に大きい。現在も議論が続いている分野なので、断定的に語れることは多くない。

それでも、「にぎやかな場所に長くいると消耗する」「一人の時間がないと回復できない」という実感は、多くの内向型の人が持っているのではないかと思う。外からの刺激を、どれだけ処理するか。そのキャパシティが、人によって違うということだ。


なぜバッハが心地よく感じる人がいるのか

バッハの曲が好きだと言うと、少し気取った趣味に聞こえることがある。でもそこに好みの話だけではないかもしれない。

バッハの音楽、たとえば「ゴルトベルク変奏曲」や「平均律クラヴィーア曲集」には、強い規則性と対称性がある。次に何が来るかが、ある程度予測できる構造を持っている。

脳は「予測できないもの」を処理するとき、より多くのリソースを使う。逆に規則的で予測可能な音の流れは、注意をそこに集中させなくても、ある程度「流れに乗れる」感覚がある。

だから落ち着くのは、バッハが高尚だからではなく、脳が「これはついていける」と判断しやすい構造を持っているから、という可能性がある。もちろん個人差は大きいし、バッハが合わないと感じる人もたくさんいる。ただ、「規則的な音楽だから合う人がいる」という説明は、なんとなく腑に落ちるものがある。
(ちなみに私は、予測できない高音のせいで、モーツァルトとヴィヴァルディが、とにかく苦手である。)


ミニマル・ミュージックが効く理由

バッハと似た方向性で、ミニマル・ミュージックという音楽ジャンルがある。

スティーブ・ライヒやフィリップ・グラスの作品が代表的だ。短いフレーズが繰り返され、少しずつ変化していく音楽で、最初聴くと「単調」に感じる人もいるかもしれない。

でも、ポップスとミニマルを比べてみると、脳への負荷の違いが感じられる。

  • ポップス:サビ・Aメロ・転調・歌詞の展開と、次々と新しい情報が来る

  • ミニマル:小さな変化が積み重なっていく、穏やかな流れ

「新しい情報を処理する」という動作は、それ自体が脳に負荷をかける。ミニマルな音楽はその処理量を意図的に絞っているとも言える。だから、消耗しているときにふと効くことがある。


歌詞付き音楽が疲れる理由

集中して何かを書いているとき、歌詞付きの曲をかけると作業が進まない、という経験はないだろうか。

これには、言語処理に関わる説明がある。

読む・書く・話すといった作業は、脳の言語処理資源を使う。歌詞も同じように言語として処理されるため、文章を読んだり書いたりしながら歌詞入りの音楽を聴くと、使っているリソースが競合しやすい。これは音楽の好みの問題ではなく、脳の処理の問題だ。

音楽と認知課題への影響については研究が多く蓄積されているが、効果は個人差が大きいとされている。「自分は歌詞があっても平気」という人もいれば、「歌詞があると一切集中できない」という人もいる。自分のパターンを知っておくことが、一番の近道だと思う。


自分の脳に合う音楽の探し方

「集中力を上げる音楽」と検索すると、おすすめのプレイリストがたくさん出てくる。でも、その通りにしても合わないことがある。

それは当然で、脳の処理の傾向も、疲労の度合いも、作業の内容も、人によってまったく違うからだ。

一つ試してみてほしい簡単な実験がある。

3日間、音楽を変えてみる

  • Day1:無音の環境で過ごす

  • Day2:歌詞付きの好きな曲をかける

  • Day3:バッハかミニマル系の曲をかける

それぞれの日に、作業のしやすさや疲労感を簡単にメモしてみる。スコアをつける必要はない。「今日は気が散った」「今日は不思議と落ち着いた」、それくらいの粒度で十分だ。

自分にとって、どの状況が一番「脳の騒がしさ」が静まったかを知ることが、いわば自分の脳の取扱説明書を作ることになる。(もちろんその時々の自分の状態も影響するだろう。しかしそれでも、上記の方法で、一定の傾向を知ることは可能だと思う。)

また、シーンごとに選ぶのも有効だ。

集中したいとき

  • 歌詞なし

  • テンポが一定

  • 音量は小さめ

落ち着きたいとき

  • ピアノ曲

  • アンビエント系

  • バッハ系

考えごとを整理したいとき

  • ミニマル系

  • 雨音や川の音などの環境音(俗に言うホワイトノイズとして統合失調症の治療なんかでも使われています。個人的には焚き火の音が好きです。)


「静寂が欲しい」のではないかもしれない

疲れているとき、静かなところに行きたいと思う。でも実際に無音の部屋にいると、今度は頭の中がうるさくなったりする。

内向型の人が求めているのは、完全な無音ではないのかもしれない。

脳が処理しなければならない情報量の少なさ、だと思う。

静けさが欲しいのではなく、負荷の少ない音が欲しい。その違いに気づくと、自分の疲れ方の意味が少し変わって見えてくる。

気合いで刺激に耐えることが内向型の生き方ではなく、刺激を自分で設計することが、静かに生き延びる戦略だと私は思っている。


※この記事では、人格心理学の知見をもとに「内向型と刺激感受性の関係」を取り上げていますが、「バッハを聴けば集中力が上がる」「ミニマル音楽が内向型に必ず効く」と断定できるものではありません。音楽の効果は個人差が大きく、あくまで一つの視点として参考にしてもらえると嬉しいです。


このnoteでは、内向型・繊細な気質を持つ人が消耗しすぎずに生き延びるための情報を、当事者目線で発信しています。 社労士(有資格者)・キャリアコンサルタントとしての知見も交えながら書いています。    

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