不全防止の壁となる組織の規模(経営者の責任と限界)
不全防止の壁となる組織の規模(経営者の責任と限界)
文責:中野康範
分野:一般
区分:無料版
作成:2026/02/25
改訂:-
不正を防ぐための考え方を「不正を許す文化に対する問いかけ(ケースとしてのプルデンシャル生命)」(https://note.com/nack66/n/n0f3ddcd3200b)ですでに提示している。
このコンテンツは、その続きである。
ただし、単なる補足事項なので、内容の軽さはご容赦いただきたい。
◆ 建前としての「不正防止のための文化の醸成」
先のコンテンツで、不正を防ぐ組織風土として「心理的安全性」を軸に下記を提示した。
1.人間は弱いという認識
2.経営者の姿勢の明確化
3.イエスマンを排除
4.伝えるではなく耳を傾ける
また、経営者が文化をつくるとも述べた。
もっとも、これはそう単純な話でもない。
組織構造が、そもそも文化の変革を拒んでいる場合もあるからだ。
◆ 組織管理の複雑さを表す「1,3の法則」
組織論の一環で「1,3の法則」というものを聞いたことがある。10人という集団、30人という集団、100人という集団と大きくなり、階層の分化、機能の分化などが進み、その境界がこの数字だという。また、人の顔を覚えられるのも300人が限界で、これ以上になると労働環境の整備に労働者側の代表が必要になる。
100人を超えると
階層化が不可避
部署・機能分化が進む
評価制度・ルールが必要
経営と現場が分離し始める
組織が100人〜300人を超えると、
経営層が全員の声を直接聞けない
不満が構造化される
情報がフィルタリングされる
という特徴が出始める。この、組織の規模が一定以上になると
情報が階層を通る
フィルタリングが起きる
「都合の悪い情報」が上に届きにくくなる
現場と経営の認知が乖離する
となり、大規模組織になると
部署単位でサブカルチャーが形成される
組織文化が均一でなくなる
本社の理念は“スローガン化”しやすい
になる。
これは、単に経営者のスローガンでなんとかなる状況を逸脱する感覚が強い、
◆ 管理の不全と統治の不全
大規模組織での不正問題で思い出されるのは日本郵便の問題だろうか。
かんぽ生命と日本郵便は、2023〜2024年に発売した新商品において、保険業法の認可前に約681件の不適切な保険勧誘を行った。
日本郵便が、ゆうちょ銀行の口座情報を流用し、そのデータを基に保険勧誘を行う不正が全国の郵便局で発覚。
全国3188の郵便局のうち、バイクの配達でも約6割の郵便局で点呼不備が発覚した。点呼記録の改ざんや、自動二輪・軽自動車で点呼を省略する事例が常態化していた。
行政組織での不正も、話題になったことがある。
ハローワーク職員、求職者になりすます 偽名で面接、就職件数に計上 2025年12月1日
表面的には、管理面での不全が原因とされている。
強い販売ノルマ、契約件数・求職者数という数値中心の評価制度
形式的な内部チェック・チェック体制の甘さ
苦情情報が上に上がらないエスカレーションシステム
しかし、組織文化という側面を見ると
未達が許されない空気
上意下達の構造。誰も異論を言えない組織風土
「看板」が何をしても許されるという勘違い
などの統治不全の側面も見えてくる。
これらは表裏一体になる。
したがって、「再教育」、「周知徹底」。「管理強化」だけでは再発防止にならないことは自明であり。組織文化を変えなければならない。しかし、それは簡単でないことは、繰り返される組織の不正でも明らかであろう。
◆ 経営者の自覚と限界
最初に述べた
1.人間は弱いという認識
2.経営者の姿勢の明確化
3.イエスマンを排除
4.伝えるではなく耳を傾ける
は、ある程度の規模に収まる企業であれば経営者がなんとかできる範囲だろう。
経営者が現場の匂いを感じされるようであればなんとかなる。
例えば
A. 情報の質が変わったと感じる
報告が「成功事例」中心になる
数字は出るが、葛藤や違和感が消える
会議で反論が出ない
B. 現場の訪問時の違和感がある
現場が妙に整っている
質問に対して模範回答が返る
雑談が減る
C. 不正の“前兆指標”を感じる
中間管理職の離職増加
内部通報の減少(増加ではない)
KPI達成率が不自然に安定
異論を言う人が消える
等があるだろう。
それでも統治の難しさは、組織の規模が大きくなると、階層の多重化、昨日の細分化が進み、センシティブな情報は伝わりにくくなる。相応の努力をしなければ組織風土は変わらない。
最も厄介だと感じるのは、大規模組織は「経営者も組織構造に組み込まれている」ということだ。組織が収益を上げることの圧力が強ければ、また経営者も収益向上のための波の中から抜け出せない。
身も蓋もない結論で申し訳ないが、やはり不全防止は「経営者」次第ということになる。
