三題噺ショートショート_167
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、きかん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼四朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、気が済むのよね?
ブラックホールよりも重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「167」まいりましょうか。

土曜日の夜、休日出勤の憂さ晴らしに酔って帰ったら、本棚に卒業アルバムを見つけた。
懐かしさに、ひとり、缶ビールで飲み直した。
翌日、部活帰りによく立ち寄ったサイゼリアのミラノ風ドリアを頼んだ。
うん、あの頃の味だ。
立ちのぼる湯気の向こうに、ふと、アリスの顔が見えた。
「冴えない顔してんじゃん。ぶちかませよ、男なら」
言葉を返せないまま、ちょっと怒り顔のアリスは、だんだん透けていき、消えた。
帰宅してから徹夜で準備はしたものの。月曜朝イチのプレゼンは散々だった。
俺は、いつも、こうだ。
気まぐれでスタメンを任されて、初打席初安打。だがその後凡退し。2試合目2打席終わったところで交替。それからはベンチ、スタンド、幽霊部員。
マネージャーのアリスは、そんなどうでもいい俺を、よく叱ってくれた。
「頭使えよ!」
「サボんなよ!」
「簡単に諦めんなよ!」
あれは紛れもなく、青春だったんだ。
ドアを開けると、奥のソファーから声がした。
「手、洗えよ!」

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
そうなの?三題噺?落語の?ショートショートの?書いたの?また、下手くその?みんなに迷惑じゃん!じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しと参りましょうか。ぺぺペン、ペンッ!
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

