三題噺ショートショート_暑中見舞
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、聞かん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼志朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、いいんだろ?
ブラックホールよりも重い重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「暑中見舞」まいりましょうか。

湊には、少し年の離れた妹がいた。その子には障がいがあったが、人懐こく可愛らしい性格で。チームの人気者だった。
湊は性格が穏やかで。だが、揺るぎない信念と誠実さを兼ね備え。エースで4番。大黒柱だった。
「俺、来月、LAに発つ」
みんなで前祝いと称して出かけた夏祭りの帰り道。湊が発した言葉は、みんなを凍りつかせた。
みんな湊を知り尽くしている。
考え尽くし、もはや揺るがぬ決断なのだろうと理解した。
明日、予選の初戦だという日の宵の口、みんなで湊を見送りに、バス停に集まった。
「ありがとう、みんな。健闘を祈る」
その時、妹が言った。
「お兄ちゃん、蛍の光!」
柵の向こうには、無数の光跡が、揺らぎ、点滅し、まるで湊と妹に手を振るように舞い踊っていたのだ。
湊は微笑みを湛えた表情をして、妹の手を優しく、でも、ギュッと握っていた。
あれから何年経っただろう。
今年届いた暑中見舞は、湊も奥さんも子供たちも妹も。みんながみんな、笑っている写真だった。

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとして後ろを振り向くと、空のソファーが、静かに笑っていた。
先日から家内は、あるプロジェクトで、都心のホテルに泊まり込んでいる。
シーンとした部屋の空気に、なんだか、心が追いつかない。
あの時の、家内の言葉が頭の中に響く。
まだ三題噺続けてるの?じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しで、ね。ペペン、ベンッ!
……。
昼間のやりとりからすると、家内は、元気なようである。
家内が元気だと、我が家は、明るくて平和である。
だから。
これで、いいのだ。
(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。
俺にしちゃあ、三題噺も、けっこう書いたは書いたが。笑

