おもしろい小説には「没入感」がある
おもしろい小説とは何なのか?――それはなかなか答えの出ない、永遠のテーマなのではないでしょうか?
設定が面白い、キャラクターが魅力的 etc…人によっていろいろ答えはあるかと思いますが…
ひとつ、「これは結構な人数が当てはまるのでは?」と思っていることがあります。
それはズバリ、「おもしろい小説には“没入感”がある」ということです。
■読んでいる間に現実を忘れられるほどの読書体験
読んでいる間に、思考がすっかり本の世界に入り込んでしまい、周囲の音が聞こえなくなる、時間も忘れる…
そんな経験をしたことはありませんか?
おもしろい小説はそれほどに読者を夢中にさせ、読んでいる間は現実さえ忘れさせてしまいます。
小説にしろ、映像コンテンツにしろ、そんな風に読者・視聴者がどっぷりハマり込んでしまう感覚を“没入感”と呼びます。
没入体験はそれだけで得難い経験ですし、一時とは言え“現実を忘れさせる”ことにより“ストレス解消効果”もあるのです。
…ですが世の中、そんな没入感のある小説ばかりでもありませんよね?
没入感のある小説と、無い小説、その違いはどこにあると思いますか?
■没入感を生むものは?
没入体験に必要なのは、まず読者が物語に“集中”することです。
実は、小説というコンテンツはこの時点でかなり“不利”です。
たとえば“映画”なら、真っ暗な部屋の中、スマホやおしゃべりは(マナーで)禁じられ、できることはスクリーンを見つめること(あとはちょっとした飲食くらい)のみ。
自然と映画に“集中”しやすい環境が出来上がっているのです。
気を抜けばすぐデッドエンドになってしまう“ゲーム”なども“集中”せざるを得ない仕組みが出来上がっています。
ですが小説は、その気になればすぐ本(画面)を閉じ、スマホをいじったり、別のことを始めたりできてしまいますよね?
そんな不利な条件の中、読者を集中させるには“読者の興味を惹く何か”が必要です。
そもそも、興味のあるものなら真剣に見聞きするけれど、興味のないものは上の空になってしまう…
人間って割と、そういう生き物なのではないでしょうか?
そして、逆に興味を惹かれると「もっと知りたい」「もっと読みたい」となり、読む手が止まらなくなるのも人間です。
(…ただ「何に興味を惹かれるか?」が人によって違うため、そこがかなりの難点と言えば難点なのですが…😅)
「あるある」かも知れませんが…個人的には「自分がなりたい立場」「行ってみたい世界」「身近にいて欲しいキャラクター」などの憧れ要素や、「続きや真相が気になる」謎めいた要素などがあると、物語に一気に引き込まれます。
■没入感を邪魔する“ノイズ”
没入感に必要なものは、他にもあります。
それが“没入感を邪魔する要素が無い”こと。
上にも書いた通り、没入感に必要なのは“集中”。気が散ってしまえば没入はできません。
読者の読書環境は作者にはどうにもできませんが…小説自体の中にも、没入感を邪魔するノイズはあります。
それは「(悪い意味での)違和感」「ダルさ」「理解不能さ」等です。
小説を読んでいて「つじつまが合わない」箇所を発見したことって、ありませんか?
伏線回収の優れた作品なら、その「つじつまの合わなさ」が実は伏線だった…ということもあるのですが…
完全なるミスで物語の整合性が取れない作品も、たまにありますよね?
あるいは作中の人物の言動が現代の常識や倫理観に合わない――そういうタイプの違和感もあります。
そういう部分に気を取られると、そこばかりが引っかかって集中できなくなってしまったりしますよね?
他には、ダラダラ引き延ばされたり、同じようなことの繰り返しだと、読むのがダルくなって飽きてしまったり…
内容や語句、漢字が難解過ぎて理解できず、読むのが嫌になってしまったり…
没入感を阻害する要素というのは、意外と多く存在しているのです。
逆に言えば、それらのノイズを極力減らすことができれば、没入感は上がります。
皆さん割と「もっと設定を盛ろう」「もっとインパクトを盛ろう」と“足し算”ばかりを考えがちですが…
ノイズを減らすという“引き算”も、作品づくりには必要なのではないでしょうか?
■没入しやすさは読者のスキルにもよる
上にも書いた通り、没入できるかどうかは環境にも左右されます。
さらには読者の性質によっても“没入しやすさ”は変わります。
たとえば“集中力”って、人によって違いますよね?
周りが見えなくなるくらい一つの物事に集中できる人もいれば、すぐに気が散ってしまう人もいます。
それに“読書経験”――本を読むのに慣れているかどうかも、没入感を左右します。
自分は幼い頃から本を読み慣れているせいか、小説を読むとその場面が頭に画像や映像となって浮かぶのですが…
そういう人間ばかりではない、中には文字を目で追うこと自体が苦痛だという人がいることも知っています。
自分は行間(文字に書かれていない部分)を“想像”するのが好きですが、それをしない人がいるということも知っています。
没入どころか“読書”自体を思うように楽しめない“読書ビギナー”をどうすれば良いのか…
ひとつ自分が考えているのは、そういう“初心者”向けに“読書を楽しむきっかけとなる一作”が書けないだろうか?…ということです。
(あるいは“読者ビギナーが読書スキルを積むのに良い本”を見つけて紹介することができないか…とも。)
過去記事でも書いていますが…
誰でも最初は“初心者”。
そこから“きっかけ”を得て“読書を楽しめる人”が育たないことには、読書人口が増えませんので。
