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30年国債利回りは4.2%の過去最高へ、市場が請求する安いガソリンの代償

皆さん、こんにちは。村田雅志です。

本日(5月18日)、日本の30年国債利回りは一時4.2%台に乗り、過去最高水準を更新しました。10年国債利回りも一時2.80%まで上昇し、約29年半ぶりの高水準となりました。

https://jp.reuters.com/markets/japan/STHQX42WURK47EX5ULJNBV6OGU-2026-05-18/

今回の金利上昇には、中東情勢、原油価格、世界的な債券売り、日銀の利上げ観測、超長期国債の需給悪化など、いくつもの要因があります。

そんな中、今回の金利上昇では、補正予算の編成が材料視されたようです。

政府は物価高対策として補正予算の編成を検討し、その財源として赤字国債を含める可能性が報じられています。ガソリン価格を1リットルあたり170円程度に抑える補助や、夏場の電気・ガス代補助の復活も念頭に置かれているようです。

赤字国債の発行による補正予算の編成に対して批判的な声が出ています。しかし、高市政権は、日本国民が今、求めていることを単に忠実に実行しようとしているだけのように思えます。

多数の支持を受けた結果が補正予算の編成(かもしれない)

今回のコラムでは、国債利回りの上昇は、日本国民が選んだ結果であることや、日本経済がすでに「インフレ・円安・金利高」の時代に入ってしまったという私の見方を簡単にご紹介したいと思います。

今回もやや耳の痛い話に思われるかもしれませんが、ぜひ最後までお付き合いください。お願いいたします。


高市政権は国民の期待に応えているだけ

足元では物価高・インフレは話題となっています。
当然、多くの方々は、ガソリン代がさらに上がってほしくありません。

昨日くらいから、日本全国で気温が高くなっており、(まだ5月ですが)熱中症が心配され始めています。今後さらに暑くなり、冷房が必須となれば、電気代も上げてほしくありません。

賃金は上がっていると言われていますが、物価高で実感は乏しいままです。

だから、政府には何とかしてほしい!

この感覚は、多くの人にとって自然なものだと思います。

FNNの5月調査によると、高市内閣の支持率は68%と高水準を維持する一方、物価高対策に不満がある人は58.7%に達しています。

国民の多くは、高市政権を支持しています。
しかし同時に、物価高対策には不満を持っています。

この二つは矛盾していません。

むしろ、この組み合わせこそが、いまの日本政治を動かしているように見えます。

政権は支持されている。
しかし、物価高対策はもっと必要だと思われている。

であれば、政治が向かう方向は自ずと決まります。

財政規律ではありません。

補助金です。給付金です。減税です。補正予算です。
そして、その財源を国債で賄うことです。


インフレは消えず、支払い場所が変わるだけ

ガソリン代や電気代の上昇を補助金で抑えることは、インフレを消すことではありません。

支払いの場所を変えるだけです。

給油所で払わなかったお金。
電気料金の請求書で払わなかったお金。
ガス代として払わなかったお金。

それらは、消えてなくなりません。どこかに移るだけです。

一部は国債発行や長期金利の上昇に移るでしょう。
別の一部は、将来の税負担に移るでしょう。
さらに別の一部は、円安に移るかもしれません。
それでも結局、インフレに移るかもしれません。

多くの人は、ガソリン価格が上がることには強い不満を持ちます。

では、国債利回りが上がることに不満を持つ方は、どれくらいいらっしゃるでしょうか。おそらく、それほど多くないはずです。

理由は簡単です。

ガソリン価格はガソリンスタンドですぐにわかります。電気代は毎月届きます。

しかし、30年国債利回りは、普通に生活していると見えません。
そして、見えないから、政治的な痛みになりにくいのです。

政治家にとって、店頭価格を抑えることは分かりやすい成果です。

一方で、国債市場で金利が上がることは、多くの有権者にはまだ遠い出来事に見えます。

しかし、市場は、多くの方々と違い、見過ごすことはありません。


国債利回りの上昇は日本の政策関数の問題

私は今回の国債利回りの上昇を、高市政権の批判に結び付ける意図はありません。

ただ、国債利回りの上昇を高市政権の批判に結び付ける姿勢は、日本が抱える問題を小さく見誤らせることだと思っています。

仮に別の政権であっても、物価高に苦しむ国民が多く、選挙があり、SNSがあり、報道があり、野党から給付金や減税を求める声が出れば、政治は同じ方向に動くでしょう。

つまり、今回の国債利回りの上昇は、政権固有の問題というより、日本社会の政策関数の問題だということです。

物価高・インフレが起きる。

国民が不満を持つ。

政治家が家計支援を約束する。

補助金、給付金、減税、補正予算が出てくる。

財源は国債に寄せられる。

国債市場がそれを織り込む。

金利・財政プレミアムが上がる。

円安圧力が強まる。

円安が輸入物価を押し上げる。

国民が物価高対策を求める。

この循環です。

私は、こうした循環が、今後も日本で何度も繰り返されるだろうと思っています。

だからこそ私は、日本が「インフレ・円安・金利高」の時代に入った、と思っているのです。


日本国民は安いガソリンと高金利を選んだ

日本国民は、店頭で高いガソリン代を払うことを嫌がりました。

その代わり、国債市場で高い金利を払う国を選び始めています。

もちろん、すべての国民が明確にそう考えているわけではありません。
「赤字国債を増やしてほしい」と直接思っている人は少ないでしょう。

しかし、民主主義国家では、国民が望む政策と、政治が選ぶ政策は、どこかでつながっています。

物価高は嫌だ。
でも増税も嫌だ。
ガソリン価格の上昇も嫌だ。
電気代の上昇も嫌だ。
社会保障削減も嫌だ。
景気悪化も嫌だ。
賃上げはしてほしい。
補助金もほしい。
減税もしてほしい。

こうした要望の一つひとつは、生活者の目線で考えれば自然のことです。

私も含め、多くの方は、家計が苦しい人に対して、
「我慢しろ!」と簡単に言うことはできないものです。

ただ、残念なことですが、マクロ経済政策には制約があります。
誰かの負担を軽くする政策は、別の誰か、別の時点、別の市場に
負担を移します。

その負担が、いま国債市場に出始めています。

30年国債利回りが4.2%を付けたということは、そういう意味を持っているということです。


ある日突然の財政破綻が真の恐怖ではない

このような話をすると、SNSなどでは、

「日本は財政破綻するのか?」
「円は暴落するのか?」

という話に移りがちです。

私は、明日にも日本が財政破綻する!という話をしているわけではありません。

ただ、本当に恐ろしいのは、突然の破綻ではないと思います。

もっと静かで、もっと日常的で、もっと気付きにくい変化です。

ガソリン補助が続く。
電気・ガス代補助が続く。
物価高対策が続く。
補正予算が続く。
国債発行が続く。
長期金利がじわじわ上がる。
円安が止まりにくくなる。
輸入物価が下がりにくくなる。
企業の資金調達コストが上がる。
住宅ローンの負担が増える。
財政の利払い費が増える。
増税や社会保険料負担の議論が強まる。
年金や預金の実質価値が少しずつ削られる。

こうした変化は、ある日突然やってきません。
少しずつ来ます。

そして、少しずつ来るからこそ、多くの人は対応が遅れます。

「まだ大丈夫だろう」
「政府が何とかしてくれるだろう」
「日本はずっと低金利だったのだから、今回もいずれ落ち着くだろう」
「円安もそのうち戻るだろう」
「物価高・インフレは一時的だろう」

後でダイエットすれば大丈夫だろ~

そう考えている間に、家計の前提が変わっていきます。

私は、こうした状況が、これからの日本で最も怖いことだと思っています。


政府の優しさを額面通りに受け取るな

これからの日本で経済的に苦境に陥らないために、最も重要なことは何でしょうか。

私は、政府の優しさを額面通りに受け取らないことだと思います。

補助金はありがたい。
給付金もありがたい。
減税もありがたい。

しかし、それらは無料ではありません。

政府が何かを安くしてくれたとき、私たちはこう考えるべきです。

誰が払っているのか。
いつ払うのか。
どの市場で払うのか。
税金で払うのか。
国債で払うのか。
インフレで払うのか。
円安で払うのか。
金利で払うのか。
社会保障の実質価値低下で払うのか。

この問いを持たずに、目の前の補助金だけを見ると、政治の優しさに安心してしまいます。

しかし、市場は安心しません。

国債市場は、政府の説明ではなく、財政の将来を見ます。
為替市場は、政府の願望ではなく、通貨の信認を見ます。
物価は、政治家の発言ではなく、供給制約、円安、賃金、財政、期待インフレを見ます。

これからの日本では、政治ニュースを政治ニュースとして読んではいけないのかもしれません。

財政ニュースとして読む必要があります。
金利ニュースとして読む必要があります。
為替ニュースとして読む必要があります。

そして、自分自身の生活と資産形成に関わるニュースとして読む必要があります。


株価ではなく日本経済全体を見よう

個人投資家の方は、どうしても株価を見てしまいます。

日経平均が上がった。
米国株が上がった。
AI株が上がった。
半導体株が上がった。
NISAで何を買うべきか。
オルカンか、S&P500か、日本株か。

もちろん、それも重要です。

しかし、インフレ・円安・高金利の時代に入る日本では、株価だけを見ていては足りません。

見るべきものは、日本経済全体です。

政府はどれだけ借金を増やすのか。
日銀はどこまで国債市場を支えられるのか。
家計はどれだけ円預金に偏っているのか。
企業はどれだけ価格転嫁できるのか。
住宅ローンを抱える人は、どれだけ金利上昇に耐えられるのか。
年金生活者は、どれだけインフレに耐えられるのか。
現役世代は、賃金上昇が物価上昇に追いつくのか。

これらを一つの地図として見る必要があります。

私は、これからの日本では、単純に「投資をしましょう」という話では足りないと思っています。

必要なのは、もっと広い意味での経済防衛です。

円だけに依存しない。
現金だけに依存しない。
政府の補助金だけに依存しない。
低金利が続くという前提に依存しない。
インフレがすぐ終わるという前提に依存しない。
政治が痛みを消してくれるという前提に依存しない。

これが大事だと思います。


これからも日本で生活する人へ

これからの日本で苦しくなりやすいのは、円建ての固定収入に依存し、円建ての現金を多く持ち、価格転嫁力のない仕事や事業に依存し、金利上昇に弱い負債を抱え、政府の物価高対策に安心している人だと思います。

一方で、苦しくなりにくいのは、インフレと円安を前提に、自分の家計と資産を見直している人です。

収入を増やす努力をする。
価格転嫁できる仕事や事業に近づく。
外貨建て資産を含めて資産を分散する。
金利上昇に弱い借り入れを見直す。
生活費の上昇を前提に家計を組む。
政府の補助金を一時的な緩衝材として扱い、恒久的な前提にしない。
そして、政治、財政、金利、為替、物価をつなげて考える。

こうした考え方が、これからますます重要になると思います。

重要なのは、「何を買うか」だけではありません。
「どういう国に住んでいるのか」を理解することです。

これからの日本は、インフレ、円安、金利高が同時に存在する国になっていくでしょう。

そのとき、最も危ないのは、昔の日本を前提にしたまま生き続けることです。


国民が選んだ道を市場は止めない

国債市場は、民主主義を止めることはできません。

国民が補助金を求める。
政治家が補助金を出す。
政府が国債を発行する。

それ自体を市場が止めることはできません。

市場にできることは、その政策に価格を付けることだけです。

その価格が、金利です。円安です。インフレです。
株価や不動産など資産価格の変化です。

そしていま、30年国債利回り4.2%台という形で、
日本国民が選びつつある道に市場が価格を付け始めています。

高市政権が良いか悪いか。
補助金が良いか悪いか。
減税が良いか悪いか。

そうした政治的な議論も大事です。

しかし、投資家として、生活者として、本当に重要なのは、その政策が市場でどう価格付けされるかです。

政治は痛みを和らげることができます。
しかし、痛みを消すことはできません。
痛みは、どこかに移ります。

そして今の日本では、その痛みが、国債市場、為替市場、物価、そして将来の家計に移り始めているように見えます。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

今回のコラムで何度か書きましたが、
私は今後、日本経済が「インフレ・円安・金利高」という、これまで多くの日本人が経験してこなかった環境に入っていくと見ています。

この環境では、株価だけを見ても不十分です。
政治、財政、金利、為替、物価を一つの地図として見る必要があります。

ガソリン価格を政府が抑えてくれるから安心。
電気代を補助してくれるから安心。
物価高対策をしてくれるから安心。

そう考えるのではなく、その代金がどこに移っているのかを見る必要があります。

店頭で払わなかった代金を、国債市場が金利として請求し始めている。
私は、今回の30年国債利回りの上昇を、そのように受け止めています。

じつは、これまで控えていたのですが、今月末くらいから、
日本経済が「インフレ・円安・金利高」の環境に入っていくことを前提に
無料のニュースレターを配信していこうと考えています。

このニュースレターは、個別銘柄の推奨ではなく、金利、為替、物価、財政、政治、株式市場をどう読み解くかを、投資判断に使える地図として整理していきます。

配信の用意が整いましたら、改めてnoteやXでご案内したいと思っています。もしご興味ございましたら、ぜひニュースレター受取りの手続きをしてください。

また、このnoteアカウントでも、私が日頃思っていることを、コラム形式でご紹介したいと思っております。

引き続きお付き合いいただければ幸いです。

村田雅志(むらた・まさし)


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