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賃上げ5%でも豊かになれない日本—生活費に消える人、資産に変える人の「手残り格差」

皆さん、こんにちは。村田雅志です。

春闘の賃上げ率(4月14日時点)が、今年も5%を超えました。

https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2026/yokyu_kaito/kaito/press_no4.pdf

こうした数字を見ると、日本の賃金環境は変わり始めたように感じます。

しかし、皆さんの生活実感はどうでしょうか。

「給料は上がったはずなのに、なぜか生活が楽にならない」
「スーパーに行くと、お金がすぐ消える!」
「NISAに回したいけど、そもそも残らない」

こんな感覚を持っている方も多いような気がします。

私は、この違和感を考える上で必要なことは
「賃金が上がったかどうか」
という視点だけではないと思っています。

もちろん賃上げは大事なことです。

しかし、インフレ時代に大事なことは、
給料が上がったあとに、生活費を払って、
最終的にいくら残るのか?
ということです。

言い換えると、大事なことは「手取り」ではなく
「手残り」だということです。

手取りは、税金や社会保険料を引いたあとのお金です。
手残りは、そこからさらに食費、家賃、光熱費、ガソリン代、教育費、通信費などを払ったあとに残るお金です。

手残りがある人・ない人

この差が、インフレ時代の日本で、新しい階級化を生み始めているように思います。

今回は、賃上げが続く裏側で進む「手残り格差」について考えてみたいと思います。

今回もぜひ最後までお付き合いください。お願いいたします。

増えた給料の行き先が変わった

5%台の賃上げは、デフレに慣れた日本経済から見れば、かなり大きな変化です。

しかも、今回の春闘では、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額が時給80.29円(加重平均・引上げ率6.61%)と一般組合員を上回っています。賃上げの裾野が一定程度広がっていると言えそうです。

でも、賃上げによって「豊かになった」という声が聞こえてこないのはなぜでしょうか???

それは増えた給料が、生活の改善ではなく、生活の維持に使われているからです。

ここで明治安田生命による「家計」に関するアンケート調査を見てみたいと思います。

https://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/2026/pdf/20260416_01.pdf

世帯年収が増えたと回答した人は28.4%と、5年連続の上昇となりました。そして、その理由として最も多かったのは「賃上げにより給料があがったため」で62.9%です。賃上げ=年収増、という図式がここでも確認できます。

しかし、問題はその先です。

世帯年収が増えた分の使い途をみると、トップは「生活費の補填」(71.3%)で、「貯蓄」(64.8%)、「投資」(35.5%)が続きます。

つまり、多くの家計にとって、賃上げ分は「豊かになるためのお金」ではなく、「値上げに追いつくためのお金」になっていることになります。

デフレ時代の賃上げは、生活水準の改善につながりやすいものでした。
しかし、インフレ時代の賃上げは、まず食費や光熱費、家賃、ガソリン代、教育費の上昇を埋めるために使われます。

問題は「手取り」ではなく「手残り」

手取りが増えることは、もちろん大事です。
しかし、インフレ時代には、手取りが増えただけでは、生活は豊かになりません。なぜなら、手取りから出ていく支出も同時に増えているからです。

食費が上がる。
電気代が上がる。
ガソリン代が上がる。
家賃も上がる。
教育費も上がる。
外食が高くなる。
保険料や通信費は削れない。

こうした支出を払ったあとに何が残るのかが大事です。
手取りが増えても、手残りが増えなければ、生活の選択肢は増えません。

旅行にも行きにくい。
自己投資もしにくい。
子どもの教育費を厚くすることも難しい。
NISAに回すお金も残りにくい。
何より、将来への不安が減りません。

インフレ時代の豊かさは、年収の大小だけで測れません。
本当に見るべきなのは、
生活費を払ったあとに、未来へ回せるお金が残っているか
という点です。

つまり「手残り格差」です。

生活費補填層と資産形成層

日本の家計は、二つの層に分かれ始めているように思います。

一つ目の層は、増えた給料を生活費の補填に使う層です。

食費、家賃、光熱費、ガソリン代、教育費、社会保険料、住宅ローン
といった支出に追われ、賃上げ分がほとんど残らない人たちです。

この層にとって、賃上げは「生活が良くなる話」ではありません。
生活を何とか維持するための防波堤です。

もう一つの層は、増えた給料や余剰資金を資産形成に回せる層です。

株式、投資信託、外貨建て資産、自己投資、不動産
といったものにお金を回す余力がある人たちです。

この層にとって、賃上げは、生活費の穴埋めではなく、
将来の資産を増やすための原資になります。

ここで重要なのは、両者の差が、最初はそれほど大きく見えないことです。
たとえば、月に2万円の賃上げがあったとします。

ある人にとって、その2万円は食費と光熱費の上昇で消えます。
別の人にとって、その2万円は株式や投資信託に回ります。

最初の差は、たかだか月2万円かもしれません。
しかし、この差が5年、10年続くとどうなるでしょうか。

生活費に消える人は、資産が増えません。
資産に変えられる人は、配当、利息、含み益、複利の可能性を手にします。

同じ賃上げでも行き先が違うわけで、
ここに、新しい階級化の入口があります。

GWを諦める人は手残り格差の象徴

この手残り格差は、かなり身近なところにも表れています。
たとえば、ゴールデンウィーク(GW)です。

インテージの調査によると、2026年のゴールデンウィーク(GW)にかける全体予算は平均27,660円(前年比5.4%減)と、コロナ禍を経て外出・旅行需要が回復した2023年以降で最も低い水準となりました。

また、GWの予定について「特に予定はない」と回答した人は41.2%と前年から増えました。

https://www.intage.co.jp/news/7612/

もちろん、GWに出かけないこと自体が問題なのではありません。
自宅で過ごすことも、近場で過ごすことも、立派な選択です。

問題は、
行かないのか、行けないのか
の違いです。

旅行に行かない人がいる。
旅行に行けない人もいる。
そして、インフレでも予算を増やして旅行に行ける人もいる。

この差は、単なるレジャーの好みではありません。
生活費を払ったあとに、楽しみに使えるお金が残っているかどうかです。

今や連休は、家計の余力を映す鏡になりつつあります。
手残りがある家計は、インフレでも予定を組める。
手残りがない家計は、予定を立てる前に、まず支出を抑えることを考えざるを得ません。

これは小さな話に見えるかもしれません。
しかし、余暇は生活のゆとりを映します。
その余暇にまで、インフレの影が入り込んでいるということです。

NISAに回せる人・回せない人

一方で、資産形成の側では、まったく別の景色が広がっています。

先にご紹介した明治安田の調査では、「投資をしている」と回答した人は33.0%で、そのうち78.5%がNISAを利用しています。さらに、NISAを利用している人のうち、昨年より利用額を増やした人は61.3%、平均利用額は約368万円とされています。

資産運用業協会の資料によると、2025年12月末時点のNISA口座数は2,826万口座で、公募投信の純資産総額は2026年3月末で305兆4,713億円。そのうちインデックス型ファンドの純資産総額は184兆8,827億円に達しています。

「貯蓄から投資へ」は進んでいます。
インフレ時代に、現金だけを持ち続けることにはリスクがあります。
円の購買力が削られていく中で、資産形成の選択肢を持つことは
これまで以上に重要になっています。

しかし、ここでも見落としてはいけないことがあります。
NISAは、制度としては開かれています。
しかし、使い切れるかどうかは別問題です。

生活費を払ったあとにお金が残らなければ、NISA口座があっても十分には使えません。
投資の重要性を理解していても、毎月の食費や家賃、教育費、ガソリン代で賃上げ分が消えてしまえば、資産形成に回すお金は残りません。

ここで差がつくのは、金融リテラシーだけではありません。
そもそも投資に回せるお金があるかどうかです。

NISAに回せる人は、インフレ時代の資産価格上昇に参加できます。
NISAに回せない人は、生活コストの上昇だけを受け止めることになります。

同じインフレでも、ある人には負担として現れ、ある人には資産形成の機会として現れます。
ここに、手残り格差の怖さがあります。

低所得と高所得の話ではない

ここで誤解したくないのは、これを単純な「低所得者と高所得者の格差」の話と考えてほしくない、ということです。

もちろん所得の差は重要です。
所得が低いほど、生活必需品への支出割合が高くなりやすく、インフレの痛みを受けやすいのは事実です。

しかし、手残り格差は、年収だけで説明できません。

年収が高くても、家賃や住宅ローン、教育費、介護費、車の維持費が重ければ、手残りは少なくなります。

都市部で子育てをしている世帯などは、額面年収が高く見えても、生活の余力が思ったほどないことも多いでしょう。

一方で、年収が突出して高くなくても、住居費が低い、共働きである、親と同居している、すでに金融資産を持っている、固定費が軽い、といった条件があれば、手残りを作りやすくなります。

つまり、新しい階級化は、年収だけで見えません。
見るべきは、生活費を払ったあとに何が残るかです。

そして、もう一つ大事なのは、すでに資産を持っている人ほど、手残りを作りやすいということです。

資産があれば、配当や利息、含み益が生まれる可能性があります。
持ち家があれば、家賃上昇の影響を受けにくくなります。
外貨資産があれば、円安の一部を吸収できます。

一方で、資産を持たない人は、物価上昇をほぼ生活費として受け止めることになります。
インフレは、ここで差を広げます。

インフレは「努力の差」を資産の差に変えていく

資産形成は努力の問題として語られることがあります。

節約する。
勉強する。
NISAを使う。
長期投資をする。
家計管理をする。

どれも大事です。

しかし、インフレ時代にそれだけを言うのは、少し危ういことと思っています。なぜなら、努力の前に、手残りが必要だからです。

生活費でいっぱいいっぱいの人に対して、
「なぜ投資しないのか」
と言うのは簡単です。

しかし、毎月の生活費を払ったあとに残るお金がほとんどなければ、投資どころではありません。

ここで起きているのは、意識の差だけではありません。
構造の差です。

手残りがある人は、努力を資産に変えられます。
手残りがない人は、努力したとしても努力が生活の維持に吸収されます。

この差が、時間とともに資産格差に変わっていきます。
そして、資産格差は次の手残り格差を生みます。

資産を持つ人は、さらに余力を作りやすい。
資産を持たない人は、さらに生活費に追われやすい。

この循環が回り始めると、階級化は一時的なものではなく固定化されます。

インフレは見えにくい再分配

インフレは、モノの値段が上がる現象ではありません。
インフレは、誰の購買力を削り、誰の資産を押し上げるのかという、見えにくい再分配でもあります。

現金しか持たない人は、購買力を削られます。
生活必需品への支出割合が高い人は、物価高の痛みを強く受けます。

一方で、株式や不動産、外貨建て資産を持つ人は、局面によっては資産価格上昇の恩恵を受けることがあります。

もちろん、投資にはリスクがあります。
NISAを使えば必ず儲かる、などという話ではありません。
むしろ、相場が反転すれば損失も出ます。
しかし、それでも重要なのは、手残りがある人には「選択肢」があるということです。

現金で持つのか。
投資に回すのか。
教育に使うのか。
自己投資に使うのか。
旅行や経験に使うのか。
家計の防衛資金として残すのか。

手残りがある人は、未来の選択肢を持てます。
手残りがない人は、今日の生活を守ることで精一杯になります。

手残りがある人だけが未来を買える

今の日本経済で問われるべきことは、
給料が上がったかどうか
だけではなく、
生活費を払ったあとに、何が残るのか
です。

いま日本で起きているのは、単なる低所得者と高所得者の格差拡大だけではありません。

インフレ時代には、
手残りを作れる人と、作れない人
の差が重要になります。

この手残りの差が、生活費補填層と資産形成層を分けていきます。
ここに、日本で進みつつある新しい階級化の姿があるように思います。


今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
皆さんは、今回の賃上げをどう感じていらっしゃるでしょうか。

手取りは増えたでしょうか。
そして、手残りは増えたでしょうか。
生活費を払ったあとに、未来へ回せるお金は残っているでしょうか。
ぜひコメントで教えてください。

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また次回のコラムでお会いしましょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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