13.何でもない日記【自転車は前に進んでいる時は倒れない】
ストライダーそっくりの子ども用自転車にまたがって、4才の娘は農道を進んでいった。
ペダルはない。
足で地面を蹴って推進力を得る、原始的な仕組みだ。
4才ちゃんがまだ2才の時に、誕生日プレゼントとして買ったものだ。
早く買いすぎた。
あの頃の私たちは、2才の子どもがどのくらいのスピードで成長していくのか、まだ知らなかったんだ。
地面を蹴って、両足を離そうとする。
そして、足置きに置こうとする。
けれどそのたびにバランスを崩し、ヨロヨロと路肩に倒れそうになるんだ。
娘は言う。
『何で自転車は倒れるの?』
4才の娘にジャイロ効果の説明をしても、必要となる前提の情報が足りなすぎると思った。
なので私は、
『自転車は、前に進んでいる時は倒れないんだよ。
止まろうとしたり、進む力が弱いと倒れちゃうんだよ。
だから足を離して乗りたいなら、もっともっとスピードを出してから、足を乗せようね。』
って伝えたんだ。
娘は何も答えなかった。
けれど、懸命に地面を蹴っては、両足をカタカナのハの字に広げて、前に進んでみせた。
『上手になったでしょ!』
スピードは出てない。
でも、何度も地面に足を置いて、何度でも蹴り続けた。
そして、自転車は倒れなかったんだ。
その事が面白くて、私はずっと、
(自転車は前に進んでいる時は倒れない。)
(自転車は、前に進んでいる時は、倒れない。)
(なるほどね…ふふっ。)
そうやって心の中で笑って、小走りで娘の背中を追いかけた。
