ヒメオドリコソウよ初夏に踊れ
やませで、最近ずっと寒かった。
一時は25度くらいまで上がってた気温も、冷たい風や朝の霧で、10度前後まで下がり、春先のような空気を感じた。
だからなんだろうね。
また咲いてきたよ。
わかんないね。
終わったと思っても、また会える事もある。
寂しいなって思っても、歩いていれば見つかる事もあるんだ。
人が変わっても、時間が進んでも、そんな出会いはたくさんあって、世界はそんなに寂しい場所じゃないんだ。
それでも寂しさを覚えるのは、たぶん私が、ずっとこれからも失い続けていく事に怯えているからだと思う。
このヒメオドリコソウは、あの時のヒメオドリコソウじゃない。
同じような顔をしていて、でもみんな違う個体だ。
人は一つの雑草に特別な思いを抱かない。
花が欲しいと思えば、その苗を買うだろう。
そして自分の庭に連れてきて、愛でるんだ。
野花はいつのまにかそこにあり、ふと触れた人にささやかな喜びを与え、気がつくと消えていく。
求めない分、出会えると嬉しくて、だけど消えてしまっても受け入れる事ができる。
自分の愛でた花が枯れた時、悲しい思いをするだろう。
野花に別れを告げても心は傷まない。
だから、花壇の花を愛する事には勇気がいるんだ。
望んで手に入れる事。
望まずに出会う事。
それぞれに違う価値があって、私は望まずに出会う事を好んだ。
でもそれは臆病だから。
そして別れた後、似たような面影を追いかけ、違う個体の、同じ花を好きになるんだ。
すぐに暑くなって、また消えていくんだろう。
それでも、またここに咲いてくれて、私はその花にお礼を言いたくなった。
娘に花を与えてくれてありがとう。
それは君ではないのだろうけど、それでも、君は君だから。

