3.私の日記【ヒメオドリコソウ】
普段、保育園の送りは、妻が担当してくれている。
けれど今日は私の仕事がお休みだ。
お休みの日には、私が保育園の送りをするようにしてる。
雪はすっかり溶け切って、強い春風が吹くようになった。
もうあちこちでフキノトウが成長している。
福寿草の花も散っていった。
緑が色付き始める庭で、私の娘達は、小さなお花を収穫する。
『パパ!これはなんていうお花なの?』

私も知らない。
だから調べる。

ヒメオドリコソウ、という植物らしかった。
可愛らしい名前だ。
姫踊り子草。
春、雑草のように生えてきて、誰の目にも止まらず、小さな小さな花を咲かせる。
この町にはたくさんの家庭がある。
どの家にも姫がいて、大切に愛でられてきたのだろうな。
世の中に出ていけば入り混じり、自分の特別も見失う。
そう考えると、この雑草のような花も、やけに愛らしく思えてくるものだ。
むしられた花達は小さな花束となり、庭の石畳に置かれ、やがて萎びていく。
私と娘達は、また咲いた花を手に取り、新しい花束を作る。
風が吹いて、雨が降って、萎れた花束はどこかに消えていき、その都度娘は、
『あれ?ここに置いてたお花がない!』
と、少し悲しむんだ。
自然に触れて、感性が育つ。
それを見守る。
私達は違う人間で、あなた達は世界にとって特別ではないけど、私の全てだ。
根を張り、葉を伸ばし、未来へと繋ぐ。
その営みの全てが、植物の本質なのだと思う。
君たちの全てを守れるかは分からないけど、未来は守らなければ。
私の踊り子たち。
来年もここで咲いてくれ。
