カクテルと余白:08【数学の詩人】🥕🥕外伝🥕🥕
❄️❄️❄️❄️
【ここまでのあらすじ + 一華さん参戦す】
❄️❄️❄️❄️
前回の記事はこちら⬇️
カクテルと余白7
【数学の詩人】雪のベルリン-4
🎼🎹ソーニャ コワレフスカヤのテーマ曲①として選びました。
宜しければ聴きながらお楽しみください。
(音量にご注意下さい)🔽
リー オスカー 『約束の地』
【ここまでのあらすじ】
1870年、冬。ロシア貴族の身分を捨て、神の前で「偽装結婚」という罪を犯してまで、20歳の天才少女ソーニャ・コワレフスカヤはベルリンへ辿り着いた。
しかし、扉はどこも閉ざされていた。当時のロシア、そしてドイツ。女性には数学を学ぶ権利すら与えられていなかった。
だが、彼女の突出した才能は「解析学の父」カール・ワイエルシュトラスを動かす。老巨匠は迷わず、彼女をベルリン大学の博士課程へ推薦した。
しかし、大学の秘密会議は「女性」という理由だけで彼女を拒絶する。ワイエルシュトラスは激昂した。彼はその場で権威の象徴である「正教授のガウン」を脱ぎ捨て、辞意を叩きつける。
「知性を性別で選別する場に、私の居場所はない」
世界が自らを拒む、その分厚い壁に向かって、ソーニャの叫びが響く。
「私は……
私は数学を愛してはいけないのですか?!」
孤独な戦いを選んだ師弟。二人だけの、知の聖戦が始まった。(あと2回続きます)

🍸🍸🍸🍹
赤坂のバー「OLD TIME」に話しは戻る。カウンターには、ダイデン大佐と香取プロデューサー。
今夜の店内は特に静かだった。二人の他には女性のひとり客のみ。
大佐が語るソーニャとワイエルシュトラスの熱い物語の余韻が、氷が溶ける微かな音と共に店内に漂っていた。
すると、カウンターの向こう側で静かにシェイカーを拭いていた横瀬マスターが、伏せていた目を上げ、彼らのすぐ隣で独り飲んでいた女性に柔らかな視線を向けた。
マスターと女性は、目で合図をし合い、女性が頷いた。
横瀬マスターは二人の前に立ち、静かに話しかけた。
「……大佐、香取さん。こちらの方も、お二人のお話しにすっかり聞き惚れていらしたようですよ」
マスターは流れるような所作で彼女を紹介した。
「こちらは、この店の常連の一華(いちか)さん。一華さんは近所のラウンジで接客をされていますが、仕事の合間のわずかな休息時に、私のカクテルを愛してくださる大切なお客さまです」
紹介された女性……一華は、夜の帳を切り取ったような、背中の大きく開いた深いブルーのドレスを纏っていた。40歳ぐらいか?年齢がもたらす円熟した美しさを湛えている。

「……ごめんなさい。あまりに素敵なお話だったので、つい。先日からここで盗み聞きをしておりました。
今夜も横瀬さんのカクテルが、いつもより深く染み渡ってしまって」
一華は、少し照れたように、しかし凛とした微笑みを浮かべて二人に向き直った。
大佐は椅子を引き、彼女を会話の輪へ誘う。
「そう言えば、何度かこのお店でお見かけしておりましたな。
いや、むしろ私たちの声がうるさかったのでは?申し訳ない。
しかし、横瀬マスターのご紹介とあらば大歓迎です」
一華は、ブルーのカクテルを一口含み、切なげな瞳で問いかけた。
「実は……横で勝手に聴かせていただいて、気になっていた事が、2つあるのです」
「何でしょう?」
ダイデン大佐は、一華の方に椅子を少し回転させた。
香取プロデューサーが笑った。
「一華さん、あまり気しないでください。この酔っ払いがテキトーに創った話しです」
「なんじゃと?香取!まあ…でも、確かにそんなもんです」
「ふふ……。でも、それは立派な『仮説』とも考えられますよね?」
一華は笑った。
「仮説……そこまでも言えるかどうか……」
ダイデン大佐は耳を掻いた。
「私、思うのです……ソーニャという女性。彼女は、これほどまでに過酷な運命を辿って……自分が『女性』に生まれたことを、後悔していたのかしら。
同じ女として、どうしてもそれが気になってしまって。それと……」
その問いは、夜の赤坂の静寂に、波紋のように広がっていった。

「ああ……それはね……」
ダイデン大佐が答えようとすると、一華は首を振って突如叫んだ。
「そして……もう一つ!もう堪らない!」
「もう、ずっと我慢できなかったんですけれど」
一華は椅子を乗り出すようにして、至近距離で大佐を指差した。
「………そもそも、なんでウサギさんが言葉を喋って、平気な顔でお酒を飲んでいるんですか!?」
「なっ……!?」
大佐が絶句する。
「ずっと気になって……いえ、もう叫び出したかったんです。私ウサギ大好き!可愛い、可愛すぎるわ!
そのお耳!もふもふ🎵ちょっと触らせていただいても……いいかしら?」
「だめーーー!!そもそも私はウサギじゃないぞおおお!」
一華の瞳は、もはやソーニャの悲劇を悼む数学者のそれではなく、純粋な「もふもふ」を追い求めるハンターの輝きを帯びていた。
問いと情熱(?)、そしてダイデン大佐の絶叫は、夜の赤坂の静寂を、別の意味で激しく揺るがしていった。

「ウサギ」と言われると激怒する。
❄️つづき
【カクテルと余白9】はこちら⬇️
本編に戻ります。
【あとがき:執筆時のイメージ曲】著者が本編の背景としてイメージしていたテーマ曲です。お時間があれば読後の余韻と共にお聴きください。⬇️
【家庭教師管制塔『無限堂』】
🌐 公式ホームページ
https://mugendo1977.com/
無限堂は、電話・メールによる勧誘は一切行っておりません。
📸 公式インスタグラム
https://www.instagram.com/mugendoofficial?igsh=MTh5ajg3ZGhyMHZ4NA%3D%3D&utm_source=qr
無限堂は、電話・メール等による勧誘は一切行っておりません。
🥕ダイデンのイラスト・ひがしりょう
