見出し画像

カクテルと余白:44【青本の中の砂漠⑧】Season4

『星の王子さま:サン=テグジュペリ』
D'après "Le Petit Prince" d'Antoine de Saint-Exupéry  より

前回のお話しはこちら🔽

🎼🎹ここからのイメージに合ったBGMを選んで参りました。宜しければお聴きください。🔽

✏️ 大きな古時計
( 作曲 ) ヘンリー・クレイ・ワーク
( 演奏 ) トーマス・ハーデン・トリオ

🍸🍸🍸

「監督!質問があります」
サキが手を挙げて椅子から立ち上がった。

「おう、浅形。何だ?」
葉澤がサキに向き直った。

「あの……『たましい』って何ですか?
私には宗教はありません。
オカルトも受け付けません。

そんな非科学的なものを、監督は私たちに押し付けるんですか?」

サキは葉澤に質問をぶつけた。

「ふふふ……流石だっちゃな。
我が『ひろたか』の理数科に名を置く者だけのことはある……浅形サキ。

俺は昔、君のご尊父様に、治療を施していただいたことがあってな。
……素晴らすぃお方だ」

サキは憮然として答えた。
「そんな事、私と関係ありません。
私の質問に答えてください」

そのあまりにも毅然とした突っぱね方に、茉莉子をはじめ周囲の者たちは狼狽を隠せずにいた。

🍸🍸🍸

葉澤は、POCCAの缶入りのブラックコーヒーのリップを指で持ち上げて開けた。

「まあ、確かにな、急にこの言葉使って驚がせちまって、悪がったな」

葉澤は続けた。
「そもそも『魂』っつう言葉は、仏教が伝わってくっ前、西洋の考えが入ってくっよりも遥か昔から、この国にあった和語だ。

外から来た宗教が持ち込んだ言葉とは、本来まるで違うもんだ。

強いて言えば、教義も組織もねかった時代の古神道における、命そのものを指す言葉だべ。

だが、勘違いすんなよ。
俺自身、無宗教だ。しかし、唯物論者では無ぇ。

俺が言いたいのは、そういった宗教的な定義や学問の話じゃねえ。

神道だろうが、仏教だろうが、西洋の宗教だろうが今は関係ねえ。

俺が『魂』って呼んでんのは——おめえらの内側にある、ごまかしのきかねえ本当の自分のことなんだ。

俺たちは、この『魂』って呼んでおくものを、野球を通して自覚してえんだ。

その己の魂を、野球っつう実践の中で、極限まで磨き抜く。

俺は宗教を押し付けたつもりはねぇ。だが、俺の野球をおめえたちに押し付けるぞ。

俺がこの言葉を使ってんのは、まさにそういう意味においてだ」

当時としては珍しい非喫煙者の葉澤は、
ポッカの缶コーヒーを常に愛飲していた。

「監督!」
ファーストの『普照』が挙手をした。

「おう!なんだ?山本」
2年生の山本普照の実家は寺である。

彼もまた、サキと同じ理数科に在籍していた。

頭は見事な坊主頭であったが、それは高校球児だからというわけではなく、既に僧侶として家業を手伝っていることによる。

「仏教では、すべてが『無我』です。
そもそも『魂』という固定されたものはありません」

「お!そ……そうか」
葉澤は狼狽した。

「でも大丈夫です。たぶん、監督が仰りたいのは、仏教で言う『識』ということかと思います」

「難儀なこと言う奴だなや。で、お前はどうなんだっちゃ!?」

「俺の返事は……『んだ!』です!」
普照はにっこりと笑って答えた。

広瀬川高校野球部(一塁手)
山本 普照
理数科2年・医学部進学志望

「そもそも、勝利や甲子園にこだわること自体が、下手すりゃ煩悩の塊みたいなものです」
「そうか……そりゃ……」

「いいんです。僕は正しくこだわります」

「お!」
「いいぞ生臭坊主」
チームメートが冷やかした。

「普照は、俺たちのクリスマスパーティーに、毎年来るし……な」
普照と同じ中学から『ひろたか』に進学した、エースの津間が言った。

「ははは。仏教の本質は、限りない自由なのですから」
普照は笑った。

「そうがか……そう言われてみれば、俺の大学のライバル……駒澤大学や東北福祉大学なんかの名門校で、野球強豪でもある学校も、仏教系だなや」
葉澤が返した。

「曹洞宗ですね。ウチと宗派は違いますが。でも、駒澤は素晴らしい学校です。

さらに『福祉大』は、僕は仙台のイチ野球ファンとして、地元の誇りだと思っています。

みんな勝利にこだわってます。実際に強いですしね」

葉澤は力強く頷いた。
「そうだっちゃ。してな、それはきっと『煩悩』なんかじゃねえんだ。彼らは間違って無ぇ。

野球っつう『修行』を、勝利っつう形で極めてんだっちゃ」
葉澤は確信を込めて言った。

🍸🍸🍸

「ところで浅形。お前はどうなんだっちゃ?」
サキは無言のまま答えを考えている。

「あの試合……ゲームセットの瞬間、お前たちも、ネット裏で泣いてたべ?
あれが魂の叫びなんだ」

茉莉子は、あの瞬間を思い出して、既に涙ぐんでいる。

サキは言った。
「泣いてねえです」
「ほう……そうだったがか?ベンチからはそう見えたが?」

「あの時、私には……まだ新参者の私なんがには、先輩たちと一緒に泣ぐ資格は、ねかったですから」

「ん……」
葉澤は缶コーヒーを机の上に置いた。

「それは違うぞ、浅形。
お前は、確かにまだ短期間だが、充分にやってくれている。

おめたぢ二人は、我が野球部の立派な部員だ。

一緒に笑って、一緒に泣ぐ資格なんか、とっくの昔におめにもある」

「浅形、お前はよくやった」
葉澤が認めた。

「監督………」
サキは葉澤を見上げた。
「泣いていいんですか?私でも」

「当たり前だっちゃ。既におめはこの部に欠がせねえ貴重な戦力だ」
葉澤は毅然としてサキに告げた。

「そうだ!」
「ガタコ。仲間だべ?」
「3年の先輩たちも同じ気持ちのはずだ」
部員たちも異口同音に叫んだ。

この瞬間、サキの中で、今回の敗戦以来、ずっと抑えつけていた悲しみが、堰を切ったように爆発した。

「泣いていいんですね?
じゃあ……今から……泣ぎます!!」
既にそれは涙声だった。
「おお!当たり前だっちゃ!」

「うううっうううう…」
突然、サキは声を挙げて泣いた。

サキの中で悲しさが爆発した。

「うううあああうう……。
悔すい……悔すい……悔すいよお……
あれは……最後の、ホームでのプレーはセーフだったっちゃ。

アウトなんがじゃねぇ。
絶対に!私たぢは負げてねえ!!」

茉莉子は、泣きじゃくるサキの頭を優しく抱きしめた。

部員たちも皆頷き、貰い泣きをしている。
「俺たぢも悔すいんだ」
「みんなおんなじ気持ちだっちゃ」

葉澤は苦笑した。

「それが……お前の魂の叫びだっちゃ。その悔しさを明日に活かすべ」
と、葉澤が言った。

普照がサキに語りかけた。
「ガタコ……もう、あの判定にはこだわるな。それが煩悩というモノだ」

「はい……」
サキは泣きながら答えた。

「尤もな……」
普照は笑った。

「尤も、俺も、あれはセーフだと思っているし、忘れられね。
それは俺の修行が足りねぇからだ」

部員たちはみな笑った。くしゃくしゃの顔の泣き笑いだった。

「俺もお前に仏教は押し付けねぇ。
その代わり一緒に野球で修行すっぺ」
普照が言った。

葉澤が改めてサキを見て尋ねた。
「ついて来っか?浅形?」
「………」

サキは顔を上げた。

 「んだ!」

涙まじりではあったが力強い答えであった。サキの魂の答えだった。

「おうし!」
「よっしゃー!」
「いいぞガタコ!」
「頼むぞマネージャー」
部員たちから温かい拍手が湧き起こった。

葉澤が豪快に笑った。
「だが、浅形……おめは面白い奴だな」 

そして、顔を上げて、部員たちに向かって叫んだ。

「ようし、それなら表さ出れ!
練習開始だっちゃ!
おめたぢの魂の野球、見せてみれ!!」

葉澤が叫んだ。部員たちの雄叫びが、部室を揺らさんばかりに轟いた。

「んだ!!」

⚾️⚾️⚾️

普照は、その日の打撃練習で、2本の柵越え弾を叩き出した。

白球が、7月の微風に乗り、広瀬川高校の金網のフェンスを越えて外の林の中に消えて行った。

新チームの四番打者としての無言の咆哮であった。

🍸🍸🍸

🎼🎹ここからのテーマによく似合うと思われる曲を、筆者なりにみつけて参りました。宜しければお聴きになりながらお読みください。

✏️ Across The Universe
( 作詞・作曲 ) ザ・ビートルズ
( 歌 ) 二宮 愛

その4年後。西新宿。
25時のコインランドリー。

🍸🍸🍸

相手は宇宙人……。

サキにとっては、この事態は、あっさりと受け入れられるものだった。

もしこれが隠しカメラ等を悪用した卑劣な犯罪行為だとしたら不快極まりない話だが、どれほど思考を巡らせても仕掛けやトリックの整合性が取れない。

また、何より仕掛けた側に目立った利益も見当たらない。
サキ相手では、犯罪のコストが見合わないのだ。

オカルトの類どころか、宗教までもを頑なに拒絶する彼女にとって、消去法で残った「宇宙人」という説がむしろ一番辻褄の合う合理的な結論であり、興味深くて仕方がなかった。

わくわくしながらサキは聴いた。
「ねえねえ、まず、あんた……何しに来たの、地球に?」

この質問が飛んでくることは、シエルにとっても当然の想定内だった。

しかし、『イリーガル』の存在など口が裂けても言えるはずがない。

それはGAPUCの絶対的な掟であった。また、侵略の脅威を現段階のジアス星人に明かしたところで彼らに防衛能力など望むべくもなく、ただ無用に恐怖を煽る結果にしかならないからだ。

「不時着さ。ロケットが壊れた。なぜ壊れたかと言うと……」

彼は咄嗟の思いつきから嘘を言った。

「僕は……僕の星の王族なんだ。
王位継承権は2位なのだが。
だけど、今、僕の星では、革命勢力との内戦が勃発していてね。

今回、この星のパトロールをしている時に、その連中に待ち伏せをされて攻撃されちゃったんだ」

シエルが王族であり、王の甥であることは本当だった。しかし、革命の話しは作り話しだった。

「何それ?なんでそんなに科学文明が進んでいるのに、絶対王制なんて野蛮な政治システムなのよ。

それなら革命軍の方が正しいのだから、さっさと降伏して民主主義に移行しなさいよ」

シエルはむっとしてサキに答えた。

「勝手な決めつけをするな!
我がアイザック皇国は、民意を汲む議会との立憲君主制だし、国家運営の最適化のために高度なAIが王を補佐する高度政治システムを採用しているんだ。
野蛮な独裁政治なんかじゃないぞ!」

「ふうーん……立憲君主制ならば、この国……日本と同じね。

まあ、よその星の事だから関係ないから干渉しないわ。
でも、この星に迷惑かけないでよね」

シエルは心の中でため息をついた。
この星を守るために、つい数日前には3分の1の確率で命を落としかけていたのだ。

もちろんそれは、この星の住人たちのせいではないが。

「そうしてくれ。ただ、味方の救助隊よりも先に、まだこの辺をウロチョロしているはずの革命軍に見つかったらヤバいんだよ」

それはシエルにとって本当の脅威だった。
もし反乱軍(イリーガル)にこんな場所で見つかったら、あちこち故障しているこの船では到底抗戦できない。
ジャムも元のままではない。

しかも、彼らならば、ところ構わず、白昼堂々戦闘を仕掛けてくるだろう。

「ふーん……まあ、ちょっと可哀想ね。一応あんたは、私たちの文明を見守るパトロールをしてくれていたんでしょ?」

とりあえず理解はしてくれたか……シエルはこの言葉だけでサキを許してあげることにした。

「ところで、このラジオを『エネルギー波』とやらで勝手に改造したみたいだけど、一体どういう原理なのよ?」

クーガー
ナショナル(現パナソニック)製
広域なAM電波を捉えることができる
70年代の傑作ラジオ

「君たちの科学レベルは、まだ電子工学の黎明期だからね。僕たちの技術体系は、その遥か先にある『準素粒子工学』レベルなんだ。

そもそも電波も電磁エネルギーの一種だから電力伝送自体は可能なんだけど、普通の電波じゃ空間で拡散して物体を物理的に書き換えるほどの仕事量は出せない。

そこで、電波の位相に高次元の量子共鳴波を重ね合わせ、ラジオ内部の微細な素子を局所的に励起・再配置させて内部回路そのものを構成し直したのさ。

その干渉波動の総称を、僕たちは『エネルギー波』と呼んでいるんだ」

「わ!難しそうなこと言っといて、急に頭の悪そうなネーミングね。あはは🎵
技術が凄すぎて頭がいいんだか悪いんだか全然わからないわ」

シエルはさらにムッとした。
「放っておいてくれ。だいたい君は口の悪い宇宙人だな」

「は?宇宙人はそっちでしょ?」
「いや、僕から見れば君こそが宇宙人だ」

一瞬、気まずい沈黙が流れた後、どちらからともなく2人は吹き出して笑ってしまった。

「宇宙人め!」
同時に叫んでいた。

深夜のコインランドリーで爆笑

「それで、何のために私のクーガを改造したの?」

「僕の船の広域受信機は壊れてしまってね。代わりに君のそのクーガを使って、味方からの救助通信を受信してほしいんだ」

シエルは切実に頼み込んだ。
「えーー?それって私も革命軍とかいう奴らに狙われるんじゃないの?めんどくさいな」

「君たち地球人を直接戦闘に巻き込むことはないよ。
そんなことをすれば、他星系の内戦不干渉条約を結んでいるGAPUCが介入して、革命軍を一瞬で消滅させるはずだからね」

サキを安心させる言葉を口にしながらも、シエルの胸の奥には重い懸念が渦巻いていた。

反乱軍(イリーガル)も、流石にそこまでのリスクは犯さないでほしい——
それが本音だった。

少なくとも「これまで」の彼らは、未開星である地球の住人に対して直接攻撃を仕掛けたことはない。

しかし「これから」どう出るかは誰にも分からない。
現にシエルは攻撃されたのだ。

だからサキに向けた安心させる答えは、半分は気休めの嘘でもあった。

もし万が一サキまで巻き込まれる事態になれば、それは地球人全員が標的にされたことを意味するのだから。

「それにしても、この時代のこの星の一般人が、よくこんな優秀な広域ラジオを持っていたよね」

「単なる趣味よ」
ふふっとサキは誇らしげに笑った。

「こちらからの微弱な電波を受信してくれた、あの時の反応……『ピン』とか『エコー』とか呼んでいるんだけど、あの時は嬉しかったよ」

「ふーん……それもネーミングセンス悪いわね」
サキが笑った。

確かに、現代の普通の女子浪人生が自室にこんな無骨な70年代の名機を置いているなど、奇跡としか言いようがなかった。

「まあ、理解したわ。
お陰でクーガの性能は格段に上がったし。遠い街のFMも聴けるようになったわ。
それじゃあ、その信号の受信は協力する。ただし、24時間は無理よ」
「ありがとう」

「毎晩こんな所に来れないから、私の部屋でも受信できるように、座標を変えてね」
「わかったよ。
でも、そこは壁面がガラスだから電波が通り易い。僕の居る方向を向いてくれているから……」

「何とかしなさい。準素粒子技術とやらで」
「うん。何とかできるよ」

「それから…このラジオに両手で触れて、直接イメージをやりとりした技術は何?」

サキの素朴な疑問に、シエルは淡々と答えた。
「正確には脳が虹彩の裏側に作り出した仮想画像を、超高感度センサーでスキャンしてデータ化しているんだよ」

「へーーー?
でも、どうしてあの時、私のイメージした絵が薬だってわかったのよ?」

「え?!あれは薬じゃなかったの?
送られて来たのは画像だけだったけれど、僕にはそう見えたから」

「えっ?!」
サキは驚いた。

あのカラフルなマルの集まりの、本当の意味を当てたのは、これまでのサキの人生でたった1人だけだったからだ。

「ふーん……」
「僕にはあんなに沢山の薬は要らないよ。まずは壊れた合成機を直す。
そうすれば、大抵のものが作れてしまう。僕の食事も。
でも、当面、すぐに作らなきゃいけないものがあるんだ」

「じゃあ、FM電波をジャックした方法は?」

旭川市民FM
レディオ・Rera放送局本社

「ジャックじゃないよ。大気圏の電離層で反射した遠距離の電波を効率よく拾えるように、そのラジオの受信回路を準素粒子レベルで改造したのさ」

「へー、てっきり人工衛星でもハッキングしたのかと思ったわ」

感心したようなサキの言葉に、シエルは内心で苦笑した。

実は、人工衛星のハッキングなど、彼らにとってはとっくの昔に通過した、子供騙しの技術でしかなかったのだ。

「それで……」
サキが聴いた。

「あんた、今どこに居るのよ?」
シエルが答えた。
「そこから2キロも離れていないよ。その近くに公園があって、その下の神社の巨木のウロに、僕の『キャメル』を縮小化して隠したんだ」

ああ……あの場所か、とサキは思った。都心の、それも新宿のど真ん中にありながら、普段からほとんど人通りのない場所。

「食糧とかは大丈夫なの?
そもそも私たちと同じ身体のつくりかどうかも分からないけれど」

「君たちとほぼ同じさ」
「光合成したりエラ呼吸したりするわけじゃないんだ?」

「大丈夫。もちろんビームも出さない」
「じゃあ明日、何か食べ物でも届けようか?」

「僕たちは天然の食材を食べないんだ。すべて合成機で作るからね」
「それって、さっき故障しているって言っていなかった?」

「だから何とかして直さないと」
「ねえ、直接会うのはダメなの?」
好奇心の塊となったサキが尋ねると、シエルは少し間を置いて答えた。

「本当はこうして通信することだって規則違反なんだ」
「遭難したんだから緊急事態でしょ?仕方ないじゃない」

「……僕自身に、君と直接会う心の準備ができていないんだ。でも、もしよければ明日……水だけ届けてほしい」
「水なら近くの公園やトイレにもあるじゃない」

「恐ろしいことを言わないでくれ。あんなの不純物だらけで飲めたものじゃないよ」
「えっ、何それ?」

80年代は、まだ水のボトルは
自販機で扱っていなかった

「僕たちの合成機が作る水は、『ファイブナインズ』が最低基準なんだ」
「ファイブナインズって……99の後に9が3つ並んで、99.999%が純粋な水ってこと?」

「そうだよ。それ以下の純度の水なんて怖くて飲めないよ。
君たちの水道水なんて……僕たちからすれば、その辺の泥川の水をろ過もせずに飲むようなものさ」

「まあ!酷い!!あんたね、東京都水道局の人たち全員に土下座して謝りなさい!

日本の水道水はね、世界トップクラスの安全性と品質を誇っているのよ!

それは水道局の人たちが毎日絶え間なく努力して管理しているからなんだから!」

「うーん……君たちの技術や努力には敬意を表するけれど、生理的にどうしてもダメなものはダメなんだよ」

「で?その水はまだ残ってるの?無いの?」
「もうほとんど底を突きかけているんだ……」

「合成機が直る見込みは?」
「まだ皆目見当もつかない」

「だったら四の五の言わずに地球の水を飲みなさい。遭難者なんだから贅沢言わないの!」

「うううっ……」
「……はあ、分かったわよ。明日予備校が終わったら、ドラッグストアで純水でも買って届けてあげるわよ」

「それってファイブナインズ?」
「そんな特殊なもの、街の薬局でパッと買えるわけないでしょ!」

「うぅ……まあ死ぬよりはマシか。それじゃあお願いするよ」

〈シエルの嘆き〉
「うううっなんて酷い事をするんだ。
グラスに入れて氷を浮かべたら……
折角の純度99.999%の
意味が無いじゃないか!サキ!」
「レモン浮かべなかっただけマシでしょ?」
🍋🍋🍋

「食糧はどうするの?」
「流石に天然の食材は無理だよ。
生まれてから一度も口にしたことがないんだから。
しばらくは残りの非常食で耐えるよ」

「へえー?何か可哀想。
本当に手のかかる宇宙人ね」
「ごめんね、サキ」

「まあ、『袖触れ合うも他生の縁』って言うしね」
「総デフレ青?モーターショーの円?」
「ふう……。何でもいいわよ、おバカな翻訳機ね」

「とにかく……サキ、僕は本当に孤独なんだ。
頼むからこれからも話し相手になってほしい」

「寂しがり屋の『星の王子様』ね」
サキは呆れながらも、ふっと優しく微笑んだ。

🍸🍸🍸

次回【カクテルと余白:45】
はこちら🔽

(服装デザイン協力……Ms.いちか )
(ダイデン大佐の作画……ひがし りょう)

家庭平和維持軍
ラインハルト・ダイデン大佐

🍸🍸🍸

🥃「すみませーん。前々回の、シエルの宇宙空間でのバトルシーンですが、中高生の皆さんに誤解を与える表現がありましたので、解説します」

🥕「ピンのところだな?」
🥃「そう。地球上では、対潜水艦などで使われる『ソナー』を指します」

🥕「海中では電波は殆ど進まない。だからレーダーは無意味だ。

そこで、ピン!という音波を飛ばして、その反射の時間などから相手の距離などを探査する、アクティブソナーという観測装置を地球では使う。

ただし、この方法は、相手に自分の位置も知らせてしまう」

🥕「でも、宇宙空間の殆どでは、今度は音波が伝わらない。……ただし、伝わる場所もあるんだが」

🥃「そう。また、シエルたちのレベルでは、『ステルス』と言って、電波や光までも透過させて姿を隠す技術がある。
そこで生まれたのが、シエルたちの言う『ピン』です」

🥕「つまり、シエルたちは、ミリ波(電波)を飛ばして、振動から相手の音波を拾って来る」

🥃「どんなに隠れても、自分たちの呼吸音やエンジン音などは消せない」

🥕「ただ、測定している間に相手も変化する。そこで天才パイロットのシエルは、結局それらに頼らずに、目視と直感で相手を撃ったのだ」

🍒「ふわああー🎵なんだか、屁理屈ばかりでつまらないわね。どーでもいいわよそんな事」

🥕「そ……そーでしたか」
🥃「失礼しましたー」

【家庭教師管制塔『無限堂』】
🌐 公式ホームページ
https://mugendo1977.com/
無限堂は、電話・メール等による勧誘は一切行っておりません。

📸 公式インスタグラム
https://www.instagram.com/mugendoofficial?igsh=MTh5ajg3ZGhyMHZ4NA%3D%3D&utm_source=qr
無限堂は、電話・メールによる勧誘は一切行っておりません。

いいなと思ったら応援しよう!