カクテルと余白:15【一華の受験相談④】終戦・前編Season2
🍹前回のあらすじ⬇️
塾から娘・雅のカンニング疑惑を告げられた一華は、動揺を抱えたまま帰宅する。
夕食を用意して待っていた雅を問い詰めるが、その不遜な態度に激昂し、思わず頬を叩いてしまう。
実の娘を信じきれず、暴力に逃げた自責の念を抱え、一華は翌日、「家庭平和維持軍」を名乗るダイデン大佐たちに救いを求めた。
🍸前回のお話しはこちら⬇️
🎼🎹今回のシリーズのテーマ曲です。
宜しければ、聴きながらお読みください。✏️Close to You
(作曲: バート・バカラック)
(作詞: ハル・デイヴィッド)
歌 : 二宮 愛
(音量にご注意下さい)🔽
Composed : Burt Bacharach
Lyrics : Hal David
Sung : Ai Ninomiya
ダイデンの砲撃②】🥕🥕🥕
🥕🥕それでは、学習塾という場所を、劇場の「舞台裏」から覗いてみよう。
🥕「大部分の塾は、生徒の不正をいちいち親に報告しない。
それは無責任だからではなく、それが教育現場における「標準的なリスク管理」だからだ。
波風を立てず、現場で処理する。それはプロの当たり前の振る舞いだ。
不都合な事実の隠蔽ではない。誤解を広げないためだ。
安易な報告は家庭に不和を持ち込み、時には親子関係を修復不能なまでに破壊し、結果として無用な退塾を生む。
そんな不毛な結末を、プロは経験則として熟知している。
塾が、その沈黙を守る三つの理由A、B 、Cを整理しよう。
☕️〈理由A〉
ほぼ90%の親が陥る「不毛なシロクロ論争」回避のため。
子供がカンニングした事について、塾が親への報告を避けるのは、親が抱く「我が子への信頼」を尊重しているからだ。
報告を受けた親は必ず子に尋ねる。
この時、子どもは、ほぼ100%「やっていない」と否定する。
もし本当にやっていなければ当然否定する。そして、たとえやっていたとしても、追い詰められた子は自己防衛のために否定する。
どちらであっても、親に返ってくる言葉は一つしかないのだ。
親は、子のその言葉を信じる。
結果として「塾が間違っているのではないか」という不信感だけが残る。
この親子関係の聖域を壊さないことこそ、塾が守るべき最低限の防波堤なのだ。

☕️〈理由B〉
残りの10%の親が理解したところで、親は解決の術を持たない。
仮に事実を冷静に受け止める親がいたとしても、家庭にできるのは「叱る」ことだけだ。
だが、戦場(塾)の傷を後方(家庭)で治すことはできない。解決できるのは、現場で共に戦う講師だけなのだ。
🍒「ちょっと待ってください!!」
ここで一華がダイデンを遮った。

裁判官『そのハンマーは僕の…返して……』
🥕「え?いきなりココ…法廷?
ま、いいや。弁護人、発言を許します」
🍒「何か…塾側の考え方って一方的に過ぎるようにも思えます」
一華が首を傾げた。
🍒「おかしいと思います。ほぼ90%の親は理解力が低いから『誤解』をするの?そう聞こえます。
それはあまりに一方的な、塾側の理屈ではありませんか?
親の愛を『不毛な論争の種』だと決めつけないでください。
私は、あの子を信じています…あ、いや、信じたいです。
もし、教育のプロがその『沈黙』を正当化するなら、親として、その壁を突き破る覚悟が私にはあります。
私は、あの子のすべてを引き受けるために、今ここに立っているんです!」
🥕「ほぼ90%というのは、ご両親たちの理解力が低いなどという馬鹿にした決めつけではもちろんない。
今の時代では、ご両親自身が子供の頃に中学受験を経験しているケースも多く、大成功した人も沢山いる。
馬鹿にできるはずがない。
「90%…」これは、ただの経験則なのだ。
だが、一華さんのその考えは間違っていない。一方で真実を射抜いている訳でもない。
だから『不毛なシロクロ論争』だと言っている」
🥃「一番多い考え方はこんな風です…
『もし、ウチの子が本当にカンニングをしたのであれば、親である私にだけは認めるはずだ。
しかし、その本人は『やっていない』という。だからウチの子はシロだ』
この主張から、親は降りないはずなのです」
🥕「つまり、この『一華の法廷』に立つこと自体が、すでに不毛な論争の始まりなのだ」
🍒「あ…なるほど。まあ、そうか…」
一華は頷いた。
🥕「同時にこのような親の行動を『視野狭窄』『狂信的』な親と非難するのもまた、甚だお門違いとも言える。そして3つ目の理由…」
☕️〈理由C〉
羊が草を食べるのは「罪」か、それとも「習性」か?
同様に、子供がカンニングするのは「習性」だ。罪の意識などない。羊が草を食べる行為と同じものだと我々は捉えている。
草があれば、羊はそれを食べる
正解があれば、子供はそれを写す。

罪の意識など全く無い
🥕「もし、その草に毒が混じっていたとしたら、責められるべきは羊ではない。
そんな場所に羊を放ち、まともな餌を与えず、数字という鞭で追い立てた飼い主——つまり、塾のシステムそのものに責任がある。
自らの設計ミスを棚に上げ、家庭に「お宅の子が……」と丸投げするのは、プロとしてあまりに無責任すぎる。
🥃「本人に教師から直接注意する時に、
今回はママには言わない。
でも、もうやらないでね、という叱り方もある」
🥕「要は本人が改まればよい」
🍒「まあ…そうですけど」
🥕「さらに付け加えるならば、実は『やったか?』『やらないか』の二者択一でなく、もうひとつ…ある。つまり3択なのだ」
🥃『ああ…そうね。それそれ…」
🍒『何がカンジ悪い。何ですか?』
🥕「『やったかどうかわからない』というケースだ。
🍒「え?何ですか、それ?」
🥕「カンニングしている(=クロ)それなのに、本人がそれを全く認識していない。自覚症状がゼロという場合がとてもよくある」

🥕「言わば無意識にやっているので自覚は全くない。
だから、「カンニングしたのか?」
と問いただされると、本人はびっくりして
「やっていない」
と答える。本人は心底自分はシロだと思っているのだ。
これは低学年に顕著ではあるが、受験生となった高学年でも普通に起きる」
🥃「中学生でも普通に居ます」
🥕「つまり、カンニングの容疑に対して、親が子供本人に問いただせば、あらゆる場合も答えは、ほぼひとつしかない。
やった
やらない
わからない
これらの、あらゆるケースで、現行犯以外は
「やっていない」
という答えになるのだ」
🍒「うむむむ……そうなのですね…」
🥃「それもまた、現場にいる者にしかわからないことなのです」
🥕「だから、その現場、つまり塾責任を持って本人を改めさせる」
🍒「まあ、そうしてくれるのなら、それはそれでいいけど……」
一華はため息をついた。
🍒「いつも、いつでも子供の事を想像してしまうわ。今、あの子は何しているんだろう?……と。
隣で授業を受けてみたいぐらい」

【ダイデンの砲撃③】🥕🥕🥕
🥕「ところで、一華さん。あんたはさっきこう言ったな。
『教育のプロがその『沈黙』を正当化するなら、親として、その壁を突き破る覚悟が私にはある。あの子のすべてを引き受けるために、今ここに立っている』
……と」
🍒「はい。確かに、そう言いました」
🥕「だからこそ、タヌーイ先生はあんたに電話をかけてきたんだ」
🍒「あ……」
🥃「一華さんが、それだけの覚悟を持った人だと信じたからこそ、先生は沈黙を破ったのではないか……ということです」
🥕「あるいは……本当の覚悟があるのかどうか、試したかったのかもしれん」
🍒「だから、私は『試されている』と言ったのですね?」
🥕「左様。だからこそ、タヌーイ先生は凄いと言ったのじゃよ」
🍒「……それなら、ダイデン大佐。
私は雅にどう接すればいいの?
タヌーイ先生には何て答えればいい?」
🥕「ふむ。そこからが本題だな」
香取プロデューサーも、静かに頷いた。
🥃「そうそう……それよりも、本当に怖いのは塾でのカンニングじゃないですよね」
🥕「あー確かに」
🍒「学校でのカンニング?」
🥕「それもあるけれど、もうひとつ」
🥃「そう……言わば『家庭内カンニング』ですね」
🍒「な……何ですか、それ?」
🥕「次回はそれについても話そう」
次回に続く
🍸🍸🍸🍸
次回作はこちら🔽
カクテルと余白:第16話Season2
【一華の受験相談・終戦・後編】
最後にドンデン返しが待っております。
【おまけの話】騎士と歩兵🍵🍵🍵
🥕「レイモンド・スマリヤン(Raymond Smullyan, 1919-2017)というアメリカの数学者が考案した、有名な論理パズルの問題じゃ」
かつて中学や高校の入試問題としても採用された、思考の深淵を覗く一題。
皆さんも、ぜひ挑戦してみてください。

【問題】ある島には、嘘つきだけが住む「嘘つき村」と、正直者だけが住む「正直村」がある。この島にある村は、わずかにこの二つだけだ。
😎嘘つき村」の住民は、何を聞かれても必ず「嘘」だけを言う。
😄「正直村」の住民は、何を聞かれても必ず「真実」だけを答える。
この二つの村へと続く分岐点に、どちらかの村の住民が一人立っている。
ところで、あなたは「正直村」へ行きたい。
しかし、許された質問はたったの一回だけだ。
さて、目の前の男に何と問いかければ、確実に「正直村」への道を知ることができるだろうか?
🥕原典では
「騎士=騎士道精神に則り、本当の事しか言わない。
歩兵=身分の卑しい男。嘘しか言わない。
…というものだったが、現代風に、わかりやすく直してみた。
🍒「うわあ🎵面白そうね。私こういうの大好き」
🥃「有名な問題ではありますが、ちょっと勿体ぶって正解は次回という事で」
🥕「正解した方にはもれなく
「✈️成田発〜成田着・ノンストップ
世界一周全額自己負担ツアー✈️が当たります🎯㊗️」
🥃「成田を出たら、もう成田!」
🥕「当選した方は勝手にどうぞー」
🍒「こらこらー😭」

ラインハルト・ダイデン大佐
【家庭教師管制塔『無限堂』】
🌐 公式ホームページ
https://mugendo1977.com/
無限堂は、電話・メール等による勧誘は一切行っておりません。
📸 公式インスタグラム
https://www.instagram.com/mugendoofficial?igsh=MTh5ajg3ZGhyMHZ4NA%3D%3D&utm_source=qr
無限堂は、電話・メールによる勧誘は一切行っておりません。
🥕ダイデンのイラスト・ひがしりょう
【あとがき:執筆時のイメージ曲】
著者が本編の背景としてイメージしていたテーマ曲です。お時間があれば読後の余韻と共にお聴きください。⬇️
