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【MSA深層秘録FILE】科学が追いついたのは、神話だった――“キメラ”臓器の衝撃

「MSA深層秘録FILES」は、
世界各地に残された未解決事件、歴史の謎、説明不能現象を追うミステリー考察シリーズである。


古代エジプトや古代シュメールの遺跡に刻まれた古代文字や、古代の神々の姿を見ると何千年も前の古代人たちの心に触れるようで興奮冷めらぬ思いを抱く。

とりわけ、半獣半人の神の姿は目を見張るものがある。
ジャッカルの頭部を持つ冥界の神で、死者の遺体をミイラ化し葬祭を司る守護者アヌビス、鷹の頭を持つ天空神で、エジプト王権の守護神ホルス、シュメール文明に先立つウバイド期(今から7千年前)では、トカゲのような人間のような像が発見されている。
これらは古代に来訪した異星人の姿で、古代人は「天から舞い降りた人々」を神と信じたのではないかとオカルトマニアの間では実しやかに語られる。
一方、専門家の間では神々を文字通り半獣の存在と信じていたのではなく、動物の特徴によって神の性質を象徴的に表現していたためと否定する。
どちらにせよ、当時半獣半人は権力の象徴ではあったようだ。
興味深い事実がある。

今から4000年前のバビロニアのハンムラビ法典では、「人と獣の交わり」は厳しい処罰の対象であった事が判明している。
ヒッタイト法典では「もし人が豚または犬と性交したなら、その者は死刑に処す。王宮の門へ引き出して殺すか、王の判断で助命されることもあるが、その人間は以後王に近づいてはならない」と定められている。
他にも「もし人が馬やラバと性交しても、それは罪とはしない。
ただし、その者は王に仕えることも聖職(祭司)に就くことも許されない」と定められていて、社会的に汚れた存在とみなされ、以後王や神に仕える聖職から排除される制裁が科されていた。
このように、シュメール文明を含む古代中東世界では異種性交は禁止すべき背徳行為とされていたのだ。
わざわざこのような法律が制定されていたというのは裏を返せば、獣姦行為が頻繁に行われていたということではないだろうか。
おそらくは、壁画や神話に登場する半獣半人を産む事ができれば、支配できると強欲に目が眩んだのではないかと思えてならない。

まだまだ文明の黎明期の話と笑みを浮かべるのは早計だ。
もし神が存在したとしたら、その神は生物に個々の特徴を与えた。
そして別種として存在する生物同士が交わることを禁止した。
同種のみでの繁栄を望んだ。
しかし、現代医学はその神の領域を冒そうとしている。

米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本拠を置くバイオテクノロジー企業eGenesis(イージェネシス)は2024年3月16日、米マサチューセッツ総合病院(MGH)にて、62歳のリチャード・スレイマン氏に、ブタの腎臓移植をおこなったのだ。
eGenesisは、画期的なゲノム編集技術CRISPR-Cas9で、人に有害となるブタ特有の抗体「アルファガル」を腎臓から除去する遺伝子操作を施したのだ。
他にもブタの遺伝子62箇所を削除し、4つの人間の遺伝子を組み込んだという。
これにより半獣半人とまではまだまだだが、キメラ移植技術を用いた臓器移植という形で実現したといっても過言ではないだろう。
eGenesisのような企業は「キメラ」という言葉を避ける。キメラとは、ギリシャ神話に登場する半人半獣の化け物で、医学界では、異なる種の細胞が同一個体に共存している生命体のことを意味する。

今、ブタの腎臓や心臓をドナーを待つ患者に移植する事例が成功しつつある。
となれば、それだけにとどまらず、様々な人間用の臓器がブタの体内で育つことを意味するのだ。そのため、倫理観からの批判を避けるため、キメラとは言わず、「異種移植」という。
eGenesisは、ユカタン種の小型ブタを臓器移植用に遺伝子組み換えを施し、飼育している。
基本的にはブタ個体の臓器、つまり「異種」であるとしている。
ところでまだまだ未知の技術であるが、異種移植第一例は、二人の子供を持つ末期患者リック・スレイマン氏でした。
彼は長年、2型糖尿病と高血圧を患っており、これらが進行して腎機能が限界に達していた。
2018年にドナーからヒト腎臓の移植を受けたが、5年後(2023年頃)にはその移植腎が機能不全になり、再び透析と入院を余儀なくされた。
そのため、最後の手段としてこの異種移植が施されたというわけだ。
結果、手術は大成功だったが、2ヶ月後に心不全で亡くなっている。
eGenesisはこの結果を受けて次のように見解を発表。

「彼は心臓病を患っていたため、不整脈が起きた。至死性のもので突然死につながった。腎臓組織のは正常で、当初の拒絶反応の痕跡はあったが、急性の腎不全に陥った形跡はなかった」

eGenesisよりコメント

確かに移植手術を受けると拒絶反応との戦いは続く。それでも通常の移植なら12年から20年は生存できる。
たった2ヶ月というのは首を傾げるのは当然だろう。
2024年4月、2例目のリサ・ピサーノはやはり3ヶ月後に心臓病で亡くなっている。eGenesisはさらに話す。

「私たちが、改善の余地がある全く新しい技術で救おうとする患者はすでに末期の状態にある患者です。その技術の将来性を判断する上では適切な事例にはならない。私たちはいわば、もっとも厳しい条件で試験を実施することになるからだ」

eGenesisよりコメント

確かにその通りではある。
この技術が信頼を得るにはまだまだ時間が必要である。すでに亡くなった患者も生前から承知の上で医学発展に貢献したとも言える。そのおかげでアメリカだけで12万人以上とも言われるドナーを必要とする患者が救われる可能性があるのは確かだ。eGenesisには自分に移植してほしいという声が多数寄せられているという。

今eGenesisではブタに4つの人間のゲノムを編集して組み込んでいる。より安全な臓器という方向性になれば、その患者自身の遺伝子を組み込んだより人間に近い臓器をブタの体内で育てる方向になるのではないか。
それは脳に及ぶ可能性もある。そうなると「ねぇ、先生!僕はこれからどうなるの?」と臓器移植手術前に安楽死させようとしたブタが話し始めたら、「ただの臓器」と割り切ることが人として可能なのだろうか。

「ねぇ、狭いよぉ、暗いよぉ。お腹すいたよ」と地下牢で泣き叫ぶ小型ブタがいたとしら、そのキメラを安楽死させるのは殺人にはならないのだろうか。


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