【書籍紹介】なぜ弱さを見せあえる組織が強いのか。すべての人が自己変革に取り組む発達志向型組織をつくる
こんにちは。合同会社マルセロ 代表の駒瀬です。経営者、事業責任者に対する事業及びマーケティングの伴走コンサルティング、壁打ち、月額制顧問等のサービスを提供しています。
こちらの書籍は、ティール組織、ソース原理の流れから辿りつきました。共著者のロバート・キーガン博士はハーバード大学教育学大学院の名誉教授で、発達心理学と教育学の世界的権威です。
この書籍を読んで最初に感じたのが、日本の伝統的大企業(JTC)の人には馴染みのある内容なのではということ。
私自身が32年間所属した大企業でも、人材育成は常にトッププライオリティの1つ。マネジャーには常に人材育成が業績評価と同等以上に求められていました。
社内ローテーションも、特にキャリア初期においては、部署のニーズよりも対象個人の育成視点が優先されてきた印象を持っています。
一方、キャリア中盤以降は、終身雇用及び年功序列の弊害で、失敗を恐れ、チャレンジを避ける傾向が強まっていくことも体感しました。
パフォーマンス重視の米国において、人材育成を重視しつつ、同時に経済的成功も収めている発達志向型組織が大きな注目を浴びたことには納得です。
現代のビジネス環境は、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる予測不可能な状況に支配されています。
こうした環境下で、企業は技術的な課題だけでなく、適応を要する課題、つまり、従来のやり方では解決できない、新たなマインドセットや行動変容を求める課題に直面しています。
この課題に対応するためには、組織全体が成長を重視する文化を築く必要があります。
本書では、すべてのメンバーが自己変革に取り組み、互いの弱さをオープンに共有することで、個人と組織の成長を同時に実現する発達指向型組織(Deliberately Developmental Organization:DDO)の構築を提唱しています。
本書は、前著「なぜ人と組織は変われないのか」で提示された免疫マップや成人発達理論をさらに発展させ、組織文化そのものを変革する具体的なアプローチを提供します。
本書の核心的なメッセージを紐解き、なぜ弱さを受け入れる組織が強いのか、そしてその文化をどうやって築くのかを、ビジネスパーソンやリーダーに向けて解説します。
1. 発達指向型組織(DDO)とは何か?
本書の中心概念である発達指向型組織(DDO)は、単なる職場ではなく、個人の心理的、感情的な成長を積極的に促す場と位置づけます。DDOでは、すべてのメンバーが自己の限界や弱点を直視し、それを成長の機会として捉える文化が根付いています。
従来の職場が成果や効率を最優先する一方で、個人の内面的な成長を軽視しがち。VUCA時代においては、個人の適応力や創造性こそが組織の競争力を左右するのです。
DDOの特徴は、以下の3つの柱に集約されます。
①成人発達理論の活用
成人の知性には環境順応型、自己主導型、自己変容型の3つの段階があり、DDOは、メンバーが自己主導型から自己変容型へと進化することを支援します。
環境順応型知性:集団や強いリーダーの意思決定に自身の考えが影響される受け身タイプ。常に思考停止リスクに晒されている。
自己主導型知性:常にゴールや目的を意識し、目的達成に必要な優先度の高い課題を選択し、集中的に取り組むことができる。一方、そもそものフィルター(認知機能)が歪んでいると、間違ったアウトプットに繋がるリスクを秘めている。
自己変容型知性:自分の価値観や信念を客観視し、必要に応じてアップデートできる柔軟な知性を持つ状態。ゴールや目標を明確に意識している一方、時間が経過して世界が変化すれば、いま有効なやり方が明日は通用しなくなる可能性があることを理解している。計画をただ前進させるのではなく、それを修正したり最適化させる余地を持って遂行することができる。
②弱さの共有を文化とする
DDOでは、失敗や弱さを隠すのではなく、むしろそれをオープンに共有することが奨励されます。これにより、メンバーは互いにフィードバックを交換し、成長のための具体的な行動を取ることができます。
③仕事と成長の統合
DDOでは、日常業務そのものが成長の機会とみなされます。単なるタスク遂行ではなく、仕事を通じて自己の限界に挑戦し、新たな能力を開発することが求められます。
本書では、DDOを導入した実在の企業をケーススタディとして紹介し、これらの組織がどのようにして高い成果と個人の充実感を両立させているかを示しています。
2. なぜ、弱さを見せ合うことが強さにつながるのか?
現代の多くの職場では、弱さや失敗を隠すことがプロフェッショナルな態度と見なされがちです。しかし、本書ではこの文化が個人と組織の成長を阻害すると主張します。
弱さを隠すことは、自己防衛機制を強化し、変化や学びを遠ざける結果を招きます。逆に、弱さをオープンにすることで、以下のような効果が生まれます。
①心理的安全性の構築
Googleの研究でも知られる心理的安全性は、チームメンバーがリスクを取ったり、自分の意見を率直に述べたりできる環境を指します。DDOでは、弱さを共有することが心理的安全性を高める基盤となります。
例えば、ブリッジウォーターでは、社員が互いの行動や判断に対してラジカル・トランスペアレンシー(徹底的な透明性)を実践し、失敗や課題をオープンに議論します。この透明性により、メンバーは失敗は恥ではなく、学びの機会と捉えるようになります。
②相互フィードバックによる成長
弱さを共有する文化では、メンバー同士が率直なフィードバックを交換することが日常化します。
例えば、ネクストジャンプではトーキングパートナーという制度を通じて、社員が定期的に対話を行い、互いの強みや改善点を共有します。このプロセスは、個人の盲点(自分が気づいていない弱点)を明らかにし、具体的な行動変容を促します。
③エウダイモニアの実現
幸福には快楽的な幸福とエウダイモニアの2種類があります。快楽的な幸福は、快適さや楽しさに基づく一時的なものですが、エウダイモニアは、自己の可能性を開花させるプロセスを通じて得られる深い充実感です。
DDOでは、弱さに直面し、それを乗り越えることで、メンバーはエウダイモニアを体験します。この充実感は、仕事へのエンゲージメントや長期的なモチベーションを高めます。
新しい命を産み落とすときに陣痛を経験するように、人が成長し、自分の限界を知って克服するプロセスにも痛みがついて回る場合がある。ポジティブな感情を持てる状態を幸福とみなすのではなく、成長のプロセスを幸福と考えるとすれば当然、幸福を経験するためには、喪失や痛みや苦しみを遠ざけるのではなく、それを味わわなくてはならない。
④適応力の強化
VUCA時代には、従来のスキルや知識だけでは対応できない課題が増えています。DDOでは、弱さを直視し、それを成長の起点とすることで、個人も組織も柔軟に適応する力を養います。
例えば、デキュリオンでは、社員が自分の感情や価値観を深く掘り下げるリフレクションの時間を設け、変化に対応する内面的な強さを育てています。
3. DDOの実践。どうやって弱さを受け入れる文化を築くか?
DDOの理論は魅力的ですが、実際の職場で実践するにはいくつかのハードルがあります。
特に、日本の職場では調和を重視する文化や、失敗を避ける傾向が根強いため、弱さをオープンにすることに抵抗感を持つ人も多いでしょう。
本書では、小さな一歩から始めることでDDOの文化を築けると強調します。以下に、具体的な実践方法を紹介します。
①リーダーの率先垂範
DDOの成功は、リーダーが率先して自分の弱さを共有することから始まります。
例えば、ブリッジウォーターのCEOレイ・ダリオは、自分の判断ミスを公に認め、社員にフィードバックを求める姿勢を示しています。リーダーが完璧である必要はないと示すことで、メンバーも安心して弱さをオープンにできます。
②フィードバックの仕組み化
DDOでは、フィードバックが文化の中心にあります。
日本の職場では、ストレートなフィードバックが攻撃と受け取られるリスクがありますが、相手の成長を支援するという意図を明確に伝えることで、建設的な対話が可能になります。
例えば、1on1ミーティングであなたのここが素晴らしい、ここを伸ばすとさらに良くなるといったポジティブかつ具体的なフィードバックを習慣化することが有効です。
③成長を日常業務に統合
DDOでは、仕事そのものが成長の場となります。例えば、ネクストジャンプでは、社員が新しいプロジェクトに挑戦する際、失敗を前提とした実験のマインドセットが奨励されます。
日本の企業でも、例えば新しい提案を3回試してみる、失敗したらチームで振り返るといった小さな実験を導入することで、成長志向の文化を育てられます。
④心理的安全性の醸成
弱さを共有するには、まずメンバーが、ここでは安全に自分を表現できると感じる環境が必要です。リーダーは、異なる意見を歓迎し、失敗を罰しない姿勢を示すことが重要です。
また、チームビルディングのワークショップや、定期的な振り返り会を通じて、メンバー同士の信頼を深めることも効果的です。
4. 日本の職場におけるDDOの可能性と課題
日本企業において、DDOの概念は大きな可能性を秘めています。終身雇用やチームワークを重視する文化は、DDOが求める長期的な成長支援や相互信頼に親和性が高いからです。
一方、以下のような課題も存在します。
①調和の文化とのバランス
日本の職場では、対立を避け、調和を保つことが重視されがちです。DDOのラジカルな透明性は、時に空気を乱すと受け取られるリスクがあります。このため、フィードバックを批判ではなく支援と位置づけ、丁寧なコミュニケーションを心がける必要があります。
②失敗への抵抗感
日本では、失敗を恥と捉える傾向が根強く、弱さをオープンにすることに抵抗感を持つ人が多いです。この文化を変えるには、リーダーが失敗を学びの機会と再定義し、実際にその姿勢を実践することが不可欠です。
③短期成果へのプレッシャー
多くの日本企業は、短期的な業績目標に追われ、長期的な成長投資を後回しにしがちです。DDOの導入には、社員の成長を優先する時間とリソースが必要です。経営層が成長こそが競争力との信念を持ち、戦略的に取り組むことが求められます。
■山口周さんの書籍「人生の経営戦略。自分の人生自分で考えて生きるための戦略コンセプト20」の中でも発達志向型組織について解説されています。
■動画版は、こちら。
いつもお読み頂きありがとうございます。サポート励みになります。皆さまとの交流をどんどん広げていければと思います。
■お仕事の依頼は、こちらから
いいなと思ったら応援しよう!
いつもお読み頂きありがとうございます。サポート励みになります。皆さまとの交流をどんどん広げていければと思います。