京大卒をティッシュで説き伏せた話
これは、大卒でもない私が京大卒を説き伏せるまでのドキュメンタリーである。彼はいかにして、覚悟を背負い、運命を受け入れ、メディアの前に姿をさらすことを肯定したのか。それには、本人が知る由もない長い時間が必要だった。
これは──ティッシュと共に生きる京大卒のティッシュ字検定師範が生まれるまでの物語である。
第一章 プロローグ
ここに、一つの企画書がある。モスキート エリが作成した外部メディアに送った実際の企画書である。(承諾済み)


この企画書を作成する前から、このはなしは遡る。物語のはじまりは、4月29日に下記イベントが国分寺にて行われることからになる。

このイベントは、我々「なんのはなしですか」と、珈琲コラボをさせていただいているmasaruさんからのお誘いだった。私は、このイベントに出店をすることになった。しかし、ただお店を出すだけでは何も面白くない。主催のmasaruさんからも、何か「なんのはなしですか」として、催し物を考えて欲しいとお願いされていた。
優谷さんの朗読は、「なんのはなしですか」にとって、自信を持って出せる演目だ。人は、実際に朗読を感じたら表現を楽しいと思ってくれるだろう。自分もやってみたいと思う人も現れるかもしれない。だが、感動するものだけで「なんのはなしですか」と本当に言って良いものか迷っていた。
私は、満を持してティッシュ字検定の出番だと感じていた。大人も子供も楽しめるティッシュ字検定。何も役に立たない。何をしているのかすらわからない。そして、何でこんなことをしなければならないのだと感じられる遊び。吹けば飛ぶ芸術。
それは、路地裏公式遊びとして、路地裏文化遺産に認定されている由緒ある遊びであり、かつて京大卒の男が路地裏で名を馳せた一大ムーヴメントであった。
ここでティッシュ字検定をワークショップとして開催すれば、「なんのはなしですか」は、遊びとしての形も一つ提案出来る。そう思っていた。
私は、すぐに「ティッシュ字検定」を提案した。
ただ、そこで私を待ちわびていたのは、喝采ではなく、沈黙だった。
ティッシュ字検定の師範であるはずの京大卒の男でさえ、
「ティッシュ字検定って需要あります?」
と言ってしまう始末だった。裏切られた。私は、心底ガッカリしていた。ティッシュ字検定で天下を獲るはずの男が、ティッシュ字検定を信じていない。こんなことが起こるのかと思っていた。あれだけ滲ませたティッシュたちに謝って欲しいとさえ思っていた。
その中で唯一、ティッシュを信じた女性がいた。名をモスキート エリという。
私が彼女を頼ろうと決心してから、この物語は動き出すことになる。
第二章 共に歩む
看護師であるモスキート エリは、ティッシュの大切さを日常から知っている。彼女は、ティッシュが生み出すティッシュ字検定の意義を日頃から肌で感じていたという。
それが、どういう意味なのかはまったくわからない。
私が、ティッシュ字検定を沈黙された日。彼女から、連絡があった。
「ねぇ。アナタに伝えておかなきゃならないことがあるの。この前、京大卒の男が『コニシさんて、なんであんなにティッシュ字検定推すんですかね』って言ってたわ。でも、私はティッシュ字検定最高だと思うわ」
それは、唯一の理解者の発見だった。
「エリ。ティッシュ字検定が面白いって一緒に私と証明してみないかい?そして、京大卒のあの男から逃げ場をなくしてみたい。人は、逃げ場をなくした時に本物の覚悟をするのか見てみたい」
それは、悪魔の誘いであり、彼女がこの提案に乗るのかは、一つの賭けだった。
「いいわ。その誘い乗るわ。私は、『なんのはなしですか』にすべて捧げているの。少しでも面白くなるなら、そこに賭ける」
もっと他に捧げるものはあるだろうと思ってはいたが、それは伝えなかった。私は、協力してくれる強力な味方を手に入れた。
第三章 説得力を増すには
私たちは考えた。ティッシュ字検定をやらなければならないように仕向けるには、何が一番面白くなるのか。学歴では劣るが、面白さへの追求は負けないと自分たちを信じた。ただやるだけでは何も面白くはならない。過程も含め、どこまで全力で遂行したのかで、その熱量が変化すると思っていた。
そして、物事は当事者が動くことよりも、第三者が熱意を持ち、本気で人に説明することこそが、最も人に届く方法ということにたどり着いたのだった。
「エリ。申し訳ないが、イベント近辺のマスコミ関係にPRしてみて欲しい」
「何を謝る必要があるのかしら。私は、最初からそのつもりよ。すべてに連絡してみるわ」
この日から、モスキート エリは、マスコミ、メディア関係に連絡を取ろうと延べ11社とコンタクトを開始する。
ここで、一つ分かったのは、企画書まで話が進むということは、極めて稀だということだ。まず連絡が取れる場所までを探す。ほとんどの場合、メールまでもたどり着かない。最初は、フォームという手段になる。ただ、それだと返信がこないため、電話で直接アタックということになる。
モスキート エリは、看護師で培った人を癒す能力を最大限に発揮し、この狭き門をくぐり抜け、受付を説き伏せ、ADさんと直接話すことまでを何社かしている。
その中で、話を聞いてくれるところが出てきた。
J:COMさんである。
この日、モスキート エリから連絡が来た。
「一週間後に連絡しますと言われたの、アチラの連絡先は教えてくれてはいないわ。ただ、少しの希望は見えたわ。だって『なんのはなしですか』って伝えているのに、『なんのはやしですか』って何回も言ってくれたの。最後には『なんのはし』ですかになったのよ」
「林」から木造の「橋」に生まれ変わるなんて奇跡だ。
これを聞いた私は、これはアルと感じた。私たちは、一週間後の連絡がオーケーだと仮定して、京大卒の男を説き伏せる準備に取りかかった。
「エリ。インナーカラーを入れてくれ。たぶん必要だと思う」
「そうね。そういうところから崩していかないと、あの京大卒は動かないわ。ハニートラップを仕掛けるのは、アナタだけにしたいところだけど、今回は言う通りにするわ。ペールピンクを入れるわね」
「その色には、いったいなんの意味があるんだい?」
「あのZINEを読むかぎり、彼に必要な色なのよ」
私にはよく分からなかったが、多くを語らないモスキート エリは、ノッていると思った。こういう時は、ノッている人に任せるのがベストだ。
第四章 電話が鳴る
インナーカラーを入れ、準備万端なモスキート エリと合流したのは、4月11日になる。そして、インナーカラーに誘われた京大卒の男は、「エリさん一人じゃ危ないんで」と、自分が、一番危険な立場にいることを知らずに、自宅から逆走までしてきて合流した。
この前日、J:COMさんより再びの連絡が来た。「企画書」を送って欲しいと言われた。それが、冒頭の企画書になる。企画書を読み、最終判断の連絡をするとのことだった。
この日は、埼玉県へラジオ収録に行く日だった。
「マイトンさん。インナーカラーどうですか?」
モスキート エリは、早くもハニートラップに入っている。
「エリさんのインナーカラーは、ドンピシャです」
京大卒の男こと、えむのマイトン。この日の主役の登場である。
早くも、私たちのインナーカラー作戦は成功している。ドキドキが止まらないらしい。吊り橋効果で判断が鈍ることが確定した。これで、一つハードルは下がったと見ておくべきだろう。私は、様子を伺いながら、話し出すタイミングを見計らっていた。
この日、ラジオ収録に行く予定でスタジオに向かっていたのだが、私たちが着いたのは、なぜかディレクターの自宅だった。
私が、動揺しながらも自宅のインターホンを押そうとした時に、モスキート エリの電話が鳴った。
J:COMさんからだった。
焦ったモスキート エリは、私に指先でインターホンを示しながらも、言葉はハッキリした口調でこう言っていた。
髪をかきあげながら、インナーカラーは、えむのマイトンへとしっかり魅せている。
「はい。そうです。よろしくお願いします。見どころは…珈琲とティッシュ字検定です」
私のインターホンと同時に、開始のゴングが埼玉県で鳴り響いたのだった。
第五章 うろたえる男
奇しくも、自宅とスタジオを間違えたハプニングにより、私たちには1時間の時間ができた。この1時間で説き伏せるしかない。私とモスキート エリは、共に覚悟をしていたと思う。この1時間のえむのマイトンの動揺は、路地裏史上、一番の動揺だと言っても過言ではない。
「J:COMさん決まりました!!」
エリは、はしゃいでいる。ペールピンクが輝いて見えていた。
「え。今なんて言ってました?見どころティッシュ字検定って言ってましたよね?気持ち悪くなってきました」
「そうです。そうです。体調不良でも大丈夫です。私、看護師なんで。『なんのはなしですか』で行う、初めてのワークショップなんで、ティッシュ字検定最高じゃないですか?見どころ以外の何ものでもないです。マイトンさんインタビューされちゃいますね?顔出しどうします?」
そうなのだ。もう逃げ場などどこにもない。見どころティッシュ字検定を撮影しにJ:COMさんは、来てくれるのだ。
私たちは、えむのマイトンを追い込むことに成功した。現在、日本でただ一人のティッシュ字検定師範であるえむのマイトンは、動揺している。
「え。いや、絶対インタビューされますよね?え。ティッシュ字検定で?noteでも顔出ししてないのに?」
私は、詰めた。
「マイトン。ティッシュ字検定師範てテロップ出るかもね。最高だね。私より先にテレビデビューだ。羨ましい」
「そんなことあります?え。テレビにティッシュ字検定で出るんですか?こんなはずじゃなかったです。今まで私がnoteで積み重ねた実績ってなんだったんですか?」
「え。ティッシュを重ねてたじゃん。よく考えてよ。イベントに取材が来てくれる。そんなゴールデンウイークのほのぼのした日に、ティッシュに文字書いてる映像があったら、皆絶対に見るじゃん。これ『なんのはなしですか』って。最高に映えるじゃん。知らなかった?ティッシュ字検定って、映るだけで何しているのか一目瞭然なんだよ。説明いらないの。そんなオイシイコンテンツは、この世にないのよ。それに誰だって出来るのに、全員何でこんなことしてるんだろってなる魔法なの。それについて真面目に師範がティッシュを語るなんて最高に『なんのはなしですか』じゃん。マイトン白衣着た方が良いね」
「注文しました」
モスキート エリは、すかさず注文する。

こうして、私たちは、1時間をフルにえむのマイトンを説き伏せることに費やし、スタジオへと着いた。
第六章 事実とは作られる
スタジオで順調に収録が進む中、えむのマイトンは、途方にくれていた。これは、私を監視している写真ではなく、上の空。心ここにあらず。どうしたらいいのかと途方にくれているえむのマイトンである。

私は、ここで一つ大きな賭けに出た。ラジオのON AIRは、5月1日と15日だ。ということは、4月29日のイベントは、終わっていることになる。であるならば、未来を語っても良いはずだ。
ここで、ティッシュ字検定をぶち込んだ。
「そこにいるマイトンは、ティッシュ字検定なんてやってるんですよ。この間、白衣なんて着てインタビューとかされちゃって」と。
ON AIRされるのかは、わからない。だが事実とはこうして作られていく。
第七章 覚醒
収録も終わり、女優・谷英美さんのファンパーティーまで、少しだけ時間があった。この日出会ったばかりの親友であるディレクターの白井さんとお茶をする時間を持てた。
ここで、えむのマイトンは、覚醒する。唐突にティッシュ字検定のことを白井さんに熱く語りはじめる。この写真は、僕らの時代ではなく、ティッシュの時代の写真なのだ。

「ローションティッシュじゃダメなんです。ペンにも色々相性がありまして。一期一会なんです。ティッシュとの出会いも」
えむのマイトン師範は語る。
「たしかに、そう考えていくと面白いね」
親友のディレクター白井さんも、止まらない。
「私が日本で初の京大卒のティッシュ字検定師範なんですよ」
覚醒した。この瞬間たしかに日本初の京大卒のティッシュ字検定師範が誕生したのだ。
私は、笑いをこらえるのに必死だったのだが、モスキート エリは、しっかり写真に収めてくれていた。
すかさず、モスキート エリが攻める。
「マイトンさん顔出ししちゃうんですか?」
師範は、語る。
「遅かれ早かれ出るでしょ?覚悟決めましたよ。さっきは、取り乱してすみませんでした。私は、ティッシュと共に生きます」
決断してからの彼はすごかった。この後から、何を話していてもティッシュに繋げてくる。いかにティッシュを盛り上げるのかしか、話さなくなっていた。
この後、谷さんのパーティーでも師範は止まらない。別番組のラジオパーソナリティの方にもティッシュ字検定を語り、師範は番組出演を見事にゲットする。
私と、モスキート エリは、そんな師範を愛おしく思った。吹っ切れた師範は本当にすごい。あっという間にショップでグッズを出し、チラシを作り、もっと盛り上げないとと、記事を書き始める。師範は、2年以上続けていた連続投稿をやめ、ティッシュに専念するとまで言い出した。
なんと可愛いのだろうか。
この愛すべき高学歴の生き様を見れて嬉しくなった私は、師範に肩書をプレゼントした。
──ティッシュと共に生きる京大卒のティッシュ字検定師範と。

第八章 未来へ
4月29日。えむのマイトン師範の表舞台デビューを、皆さんも一緒に体感しませんか。決して望んだ未来でもないはずの人生を歩む男です。noteに稼ぎに来たはずの44歳は、なぜか「なんのはなしですか」に巻き込まれ、京大卒で博士にまでなった男は、「ティッシュ字検定師範」として生まれ変わる。
こんなはずではないことを受け入れた、愛すべき男である。
人は、与えられた舞台で踊るか見るかで立ち位置が変わる。この男は正面から舞台に立ってくれた。
今、ブースをキレイに飾りたいです。師範は、過去作品を印刷してファイルにしようとしています。アナタのティッシュ字芸術作品を当日でも、郵送でも良いので届けてください。
一緒に吹き飛ばしてください。
「なんのはなしですか」として、生まれた遊びはきちんと取材されるようになりました。これを一緒にアホだなと遊んでみて欲しい。
なお、私としては、取材されずに終わるのか、一瞬の映像で終わり、師範が「なんで顔出ししちゃったんだろ」という姿を見たいのである。

さぁ、遊びましょう。当日、皆さんと会えることを待っています。
なんのはなしですか
完
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