【健康脳】 脳科学が解明する50代後半の「ワーキングメモリ」再生術 3/3 【アウトプットしか勝たん】
はじめに
中編では、私たちの脳の作業机であるワーキングメモリがいかにマルチタスクによって荒らされているかをお話ししました。
散らかった机を片付け、50代後半からの知的パフォーマンスを最大化するためには、情報の取り込み方そのものを根本から見直す必要があります。
完結編となる後編では、脳の検索システムを蘇らせるための具体的なトレーニングと、最も効果的な習慣について考えていきます。
インプット過多を止め、アウトプットに依存せよ
現代の知的層が陥りやすい最大の罠は「インプット至上主義」です。
熱心にニュースを読み、本を買い込み、オンライン講座で学ぶ。
しかし、脳科学の視点から見ると、情報を脳に入れるだけでは、ワーキングメモリの机の上に未整理の書類を積み上げているのと変わりません。
脳が情報を真に「自分のもの」として整理し、検索可能な状態にするのは、その情報を使って何かを「出力(アウトプット)」した瞬間です。
エディンバラ大学の研究などでも示唆されていますが、学んだ直後に何もせずに休んだり、あるいはその内容を誰かに話したり書き出したりする「出力の時間」を持つことで、記憶の定着率は飛躍的に高まります。
50代後半からの知的アンチエイジングにおいて推奨したい比率は「インプット3:アウトプット7」とのこと。
これまでは情報を得ることに時間の多くを割いてきたかもしれませんが、これからは「得た情報を使って何を表現するか」に軸足を移してください。
私の場合は、このようなnoteでの執筆や、ギター弾き語りも録音して編集して動画化してnoteで公開していること、そして早朝と夜寝る前の記録活動を考えれば、インプット・アウトプット比率は3:7にはまだ届かないとしても4:6くらいにはなった感触は得ています。
(ただしマンガ読みをインプットに入れてしまうと、99:1くらいになりそうですが。激汗)
脳を整理する最強のツール「夜の3行日記」
とはいえ、毎日長文のブログを書いたり、誰かに講釈を垂れたりするのはなかなかハードルが高いものです。
そこで、最も手軽で、かつ脳科学的に裏付けられた強力なメソッドをご紹介します。
それが「夜の3行日記」です。
寝る前の数分間、以下の3つの項目を一行ずつ、手書きでノートに記してください。
今日、最も失敗したこと(あるいは嫌だったこと)
今日、最も感動したこと(あるいは嬉しかったこと)
明日の目標(あるいは一番楽しみにしていること)
あるいは、今日あったいいことを3つ書く、でもいいでしょう。
私はこれを毎晩書いていて、今日現在でおよそ120日以上継続しています。
3の明日の目標は、明日のある程度詳細な予定をやはり寝る前にObsidianにまとめています。
なぜ、これが脳に効くのでしょうか。
まず「失敗」を書き出すことで、脳内でぐるぐると回っていた不安や反省(未処理のタスク)を机の外へ放り出すことができます。
これを「外化」と呼び、ワーキングメモリの空き容量を増やす効果があります。
ただし人によっては(私がそうなのですが)、寝るときにその失敗がかえってフラッシュバックして不眠になることがあるので要注意。
本来はそうならないために外化するのですが、うまくいかない場合もあるということです。
次に「感動」を記すことで、脳の報酬系が刺激され、ポジティブな感情とともに記憶が整理されます。
最後に「明日の目標」を定めることで、前頭葉が翌日のシミュレーションを行い、睡眠中の脳内整理がよりスムーズに進むようになります。
「手書き」が前頭葉を直接刺激する
ここで重要なポイントとして、スマートフォンのメモアプリではなく、あえて「手書き」で行うことが推奨されています。
指先を細かく動かして文字を書く行為は、前頭葉をはじめとする脳の広い範囲を活性化させます。
キーボード入力に比べて情報の処理スピードが物理的に制限されるため、脳はその間に情報を深く咀嚼し、整理する時間を得ることができます。
50代後半の脳にとって、この「あえてスピードを落とす時間」こそが、検索システムの不具合を修正するためのメンテナンスタイムになるのです。
とはいったものの、私は今なぜか手で文字を書くのが苦痛(文字通り手が痛くなる)なので、パソコンでやっています。
キーボード入力がまったく苦痛ではないからです。
まとめ:脳は使うとまだまだ成長する
「もう年だから、新しいことは覚えられないし、頭の回転も戻らない」
もしあなたがそう思っているとしたら、それは大きな間違いです。
脳には「可塑性(かそせい)」という性質があり、何歳になっても使った部位は強化され、ネットワークが再構築されることが分かっています。
名前が出てこないことを嘆いて何もしなければ、検索システムは錆びついていく一方です。
しかし、今日からシングルタスクを意識し、アウトプット中心の生活に切り替えれば、脳の作業机は必ず広くなっていきます。
50代後半は、蓄積された膨大な知識という「宝の山」を、最新の戦略で使いこなす最高の時期なのです。
次回は、この脳の作業机を夜の間にピカピカに洗浄してくれる「睡眠」の科学について考えていく予定です。
「ただ寝る」ことが、いかに高度な脳のエンジニアリングであるか。その驚きのメカニズムを紐解いていきましょう。

