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終末論 総覧1:3大一神教

現在のイラン戦争の大きな一つの原因には、3つの一神教の「終末論」への信仰があります。
具体的には、ユダヤ教のシオニストの過激派、キリスト教シオニスト、イスラム教12イマーム派の終末論です。

ですが、本稿と次稿では、これらに限らず、「終末論」という語を広義で使用して、世界の各宗教・宗派(24派)の終末論について簡単に紹介し、比較します。
総覧的な文章ですが、最初に、終末論の時間構造を7つに分類する考察をします。

本稿では、終末論の原典というべき、ゾロアスター教と、3大一神教(アブラハムの宗教)であるユダヤ教、キリスト教、イスラム教の諸派の終末論を扱います。

そして、次稿では、イスラム教以外のイラン系の宗教、そして、インドのヒンドゥー教、仏教諸派、中国、日本の諸宗教、そして、近代神智学を扱います。

長い文章ですので、興味のあるところを選んでお読みください。

トランプが自分をイエスのように描いてTruth Socialに投稿


終末論の時間構造


各宗教・宗派の終末論を比較する上で、いくつかの注目すべき観点があります。
一つには、終末に起こるとされる出来事を文字とおりに受け取るか、象徴的に解釈するかです。
あるいは、宇宙論的・神的、政治的・民族的、信仰的・霊的など、どのような側面に重点をおいて語られるかです。
あるいは、終末の到来時期に対して、人間が能動的に関与できるかどうかです。

ですが、このパラグラフでは、最も基本的な観点として、終末論の時間的な構造を分類してみましょう。

大きく分けると、時間構造には、周期的(円環的)、直線的(平坦的)、段階的の3種類があります。
そして、それぞれで、堕落して時間が進む場合と、発展して時間が進む場合があります。


1年毎に世界が更新されるという世界観は、季節循環から自然に生まれるもので、おそらく、最も古くから普遍的に存在します。

この世界観の延長線上で、それを人類文化に当てはめて、より長期で周期的に世界(宇宙)が生滅・更新されるという形の終末論が生まれたのでしょう。
この世界観(宇宙論)では多くの場合、季節が冬になるのと同じで、世界は徐々に悪化していきますが、周期的に更新されて秩序が復活します。

このタイプは、インドのヒンドゥー教や仏教に典型的です。

ですが、周期的でも、その中に堕落(下降)と進化(上昇)を含むような場合もあります。
近代の神智学や人智学はこのタイプです。


他方、一回きりの出来事として、宇宙(世界)が完成するという宇宙論も存在します。
これを初めて語ったのは、おそらく、ゾロアスター教です。
この終末論は、善悪二元論、あるいは、一神教的傾向と一体でした。

ゾロアスター教の終末論は、後のイラン系の諸宗教だけでなく、東西の宗教に大きな影響を与えました。
3大一神教(アブラハムの宗教)は、その代表です。

ゾロアスター教の場合、最終的な終末以前に、複数の預言者が現れる、段階的な発展のプロセスがあります。
キリスト教、イスラム教にも同様の時間構造があります。

ですが、ユダヤ教諸派の場合は、段階的な発展は説かれません(平坦的)。
また、マニ教の場合は、堕落からの復帰しての発展は説かれますが、段階的ではありません。

また、イスラム教から発展したバハイ教のように、段階的に発展しつつも、終末が最終的なものとは説かれず、途上的なものと考えるべきタイプもあります。
逆に、スウェデンボルグの新教会のように、段階的に堕落しつつも、終末が最終的なものとは説かれず、途上的なものと考えるべきタイプもあります。


本稿で扱う宗教・宗派の終末論を分類すると、下記のようになります。

周期的時間
1-1 堕落・更新的:ヒンドゥー教、仏教諸派、道教、白蓮教
1-2 堕落・発展的:神智学
直線的時間
2-1 平坦・最終的:ユダヤ教諸派、ヤジディ教、富士講
2-2 発展・最終的:マニ教、明教、ルーリアとハシディズム
段階的時間
3-1 発展・最終的:ゾロアスター教、キリスト教諸派、イスラム教諸派
3-2 堕落・途上的:スウェデンボルグと新教会、大本
3-3 発展・途上的:バハイ教


ゾロアスター教


ゾロアスター教の終末論は、「アヴェスタ」の「ガーサー」(-15Cから-10C)に由来し、最終的に10C頃に体系化されました。
これはおそらく、善なる神の働きによって宇宙が完全なものになって悪が滅びるという、一方向的な時間構造を持った、最初の世界観でしょう。

これによれば、開祖のゾロアスターの死後、1000年ごとに、3人の「救世主(サオシャント)」が現れます。
3人目が現れるのは、宇宙創造の1万2000年後になります。

この各1000年の間では、堕落が起こり、新しい救世主によって秩序が回復されます。
そして、3つの1000年の間では、徐々に、秩序は上昇していきます。
つまり、この間には、堕落と上昇が組み合わさった周期性があります。

最後の救世主が現われると、57年に渡る「神聖な統治」を行います。
そして、悪神アンラ・マンユとの「最終戦争」が行われ、これを退治します。
善人は武器を持って悪の軍勢と戦います。

そして、すべての死者が肉体を持って「復活」し、「最後の審判」を受けます。
人間は救世主にハオマ酒を飲まされて不死になり、完成された地上で永遠に生きます。
悪人も溶けた金属の川によって最終的には浄化されます。

世界・文化の堕落、救世主の到来と統治、最終戦争と悪の撃退、死者の復活と最後の審判、完全な世界、といったテーマを含み、東西の終末論の原型となったのが、このゾロアスター教の終末論です。


ユダヤ教


・伝統派・正統派

ユダヤ教の終末論は、「イザヤ書」、「エゼキエル書」、「ダニエル書」、「ゼカリヤ書」などに記されています。
バビロン捕囚以降、特にペルシャによるその解放以降に、ゾロアスター教のの終末論を取り入れたのだと推測されます。

社会の堕落、救世主の到来、最終戦争による悪の打破、死者の復活と最後の審判、完成された秩序の世界、という基本的なストーリーは、ゾロアスター教の終末論と一致します。

聖書には、複数の預言者が登場しますが、彼らの預言や時代が段階的に発展するものという構造にはなっていません。

ユダヤ教の終末論における特徴は、救世主(メシア)が、王、つまり、政治的や人物であることです。
そして,メシアが、離散したユダヤ人を結集し、イスラエルを解放し、エルサレムに第三神殿と王国を建てるという、民族的、国家的側面が強いことです。
これには、選民思想が影響しているのでしょう。

ユダヤ人に戦争をしかける敵対勢力は、「ゴグ」に率いられた北方の「マゴグ」とされ、「エゼキエル書」では、四方の周辺諸国(東のペルシャ、南のクシュ、西のプト、北のゴメル、トガルマ)がその敵対連合として記されています。

また、ゾロアスター教のような悪神に相当する存在はいません。

ユダヤ人以外の諸国民も救われますが、七戒を守ることが条件となります。

また、ゾロアスター教では、終末が何年後に来るという時間がほとんど決められているのに対して、ユダヤ教では決められていません。
「タルムード」では、イスラエルが完全に悔い改めればメシアが来るとの説もあります。

ですが、基本的には、次に紹介するシオニズムと違って、人間が能動的に終末を早めることも、メシアに導かれずしてイスラエルを建国することも認めません。


・ルーリアとハシディズム

イサク・ルーリアは16Cにパレスチナで活動した人物で、ユダヤ神秘主義のカバラを代表する神秘思想家です。
彼は独特の宇宙論、終末論を持ち、後のハシディズムの思想的基盤となりました。

彼は、神が自己収縮(ツィムツーム)して、その光の器としての宇宙を創造した時、それが破壊されたと考えます。
終末とは、その修復(ティクーン)による完全性の回復、神と世界の統一のことです。

歪んだ物質世界が光を閉じ込めているのが悪です。
修復とは光の回収であると共に、物質世界、肉体を正しく変容させることで、光はそこに留まります。
ちなみに、「光の回収」というテーマは、後述するマニ教からの影響かもしれませんが、二元論的なマニ教と違って、物質や肉体が最終的に否定されることはありません。

修復は、戒律の実践、祈り、神秘的認識といった人間の行為によって進行するものであり、終末は無数の小さな修復の累積的プロセスです。

メシアは世界を修復するために現れるのではなく、修復がほぼ完成した段階で現れ、最終的な統合を仕上げます。

最終戦争は否定されませんが、救済と無関係です。
復活は、長い転生の結果、完全に浄化された段階で最終状態に入り、適合した身体が与えられることです。
審判は、修復されたものは神的統一に回帰し、修復されないものは解体・消滅するという自然なプロセスのことです。

このように、終末の出来事は、霊的・象徴的に解釈されます。


ハシディズム(敬虔主義)は、18C東欧(ウクライナ)で興った正統派の神秘主義的な宗教運動です。
カバラ、特にルーリア派の思想を背景にし、その思想を日常生活の実践的宗教に落とし込んだものです。
現在は、複数の派があり、信者は数十万から数百万人の規模で、拡大傾向にあります。

ハシディズムでは、禁欲ではなく、喜びを、神との合一を、日常行為を神性なものにすることを重視します
また、複数の義人(ツァディク)の活動が共同体を霊的上昇に導くと考えます。


・シオニズム

シオニズムは、離散したユダヤ人が、パレスチナに国家を建設する(拠点を置く)べきとする民族運動です。
フランス革命に発するナショナリズムと、ロシア、東欧、ドイツなどにおけるユダヤ人の迫害から、19C末に生まれました。
政治的側面だけではなく、文化(ユダヤ文化の復興)、精神(民族意識の向上)、宗教(ユダヤ教の改革)、社会主義(農業を行う)など、多数の側面があります。

宗教的シオニズムでは、イスラエル建国は「メシアの時代」のプロセスと解釈されます。
つまり、メシア到来に先行する「メシア的プロセス」です。
そして、最終戦争も、1回限りの神的な決戦ではなく、すでに進行している可能性があると考えます。

ただ、それらを象徴的に解釈すべきとの説もあります。

急進派においては、イスラエルの完全支配がメシア到来を早める行為とされます。
メシアの時代はすでに始まっていて、メシアは完成段階で現れるのです。
そして、現在の中東紛争を進行中の最終戦争と見なします。

また、大イスラエル主義といって、聖書を根拠に、パレスチナの地全体をイスラエルの地と考えます。
過激な派においては、ナイル川からユーフラテス川までをイスラエルの地と考えます。

過激な大イスラエル主義を主張するネタニヤフ


・ユダヤ教改革派

ユダヤ教改革派は、19Cドイツで生まれた改革派で、伝統に対して現代的でリベラルな解釈を行いました。
終末論に関しては、象徴的に解釈したり、民族主義的側面を弱めて解釈したりしました。

具体的には、終末を、神が世界を変える出来事ではなく、人間が倫理的に世界を改善していく過程と解釈しました。
そして、メシアを人格的存在の登場ではなく、「メシアの時代」として、正義と平等の実現、倫理的成熟として解釈しました。

ですが、ホロコーストとイスラエル建国を経て、民族主義やシオニズムを評価する方向に変化しました。
そして、歴史の中に部分的に現れるメシア性を認める中間的立場となりました。


キリスト教


・伝統派・正統派

キリスト教の終末論は、「コリント人への第一の手紙 15章」、「マルコ13章」、「ヨハネ黙示録」などに記されています。

基本的なストーリーは、ユダヤ教終末論と共通しています。

ですが、終末は、キリストの復活とともにすでに始まっていて、来臨も間近である、という感覚を持っているのが特徴です。

そして、キリスト教は、基本的に、モーゼの律法による旧約と、イエスによる愛の新約を段階的に捉えます。

また、ユダヤ教にあった民族的性質はなく、「イスラエル」を象徴的に解釈され、教会が引き継いだと考えます。
そして、救済は、キリストへの信仰が条件となります。

「ヨハネ黙示録」には終末の詳細が語られます。

1 キリスト再臨
2 最終戦争の第一段階(ハルマゲドンにおける)
 -1 ミカエルが竜(サタン)を投げ落とす
 -2 竜がキリスト者を迫害
 -3 第一の獣(帝国、反キリストの象徴)が登場
 -4 第二の獣(偽預言者)が登場
 -5 各種の大災害
 -6 バビロン(ローマの象徴)の滅亡
 -7 キリストが白馬に乗って到来
 -8 偽預言者の打倒、サタンの拘束
3 キリストが統治する千年王国
4 最終戦争の第二段階
 -1 サタンの解放
 -2 ゴグとマゴグとの戦い
 -3 サタンの敗北
5 最後の審判
6 新エルサレムが降りてくる

「千年王国」に関しては、カトリックでも、プロテスタント(ルター派)でも、現在のキリスト教による統治の象徴として解釈します。

カトリックは、終末はすでに始まっているが、教会を通して徐々に完成に向かうプロセスであると理解します。
そして、「千年王国」はキリストの復活以来、進行中のものであるが、完全に可視化されていないと解釈します

他方、ルター派のプロテスタントでは、この世は終末まで本質的に堕落したままであり、終末は神が突然にもたらす断絶的出来事で、人は信仰を持ってそれを待つべきとします。
そして、「千年王国」は、信仰においてのみ現実であり、歴史的には隠されていると解釈します。


・千年王国主義

「千年王国主義」は、ルター派から分離したトマス・ミュンツァーによって、16Cドイツに起こされた終末論的な社会変革運動です。
興味深いと思うので、取り上げます。

ミュンツァーにとって、「ヨハネ黙示録」に記された「千年王国」は、選ばれた民が歴史の中で能動的に実現するものです。
そして、彼は、被抑圧層を、神の担い手として捉えました。

彼の思想は、1524〜25年のドイツ農民戦争に結びつきました。
ですが、この運動は失敗して、「千年王国主義」は異端視され、ミュンツァーは処刑されました。

ですが、彼の思想は、後世の革命運動や終末論思想に影響を与えました。


・スウェデンボルグと新教会

エマヌエル・スウェデンボルグは、その膨大な霊界の霊視で知られる、18Cスウェーデンのキリスト教神秘主義者で、科学者でもありました。
彼は、エマソン、バルザック、ヘレン・ケラー、鈴木大拙など多くの人物に影響を与えました。
また、彼の思想に基づいて、「新教会」が生まれました。
彼の終末論は興味深いので、取り上げます。

スウェデンボルグは、霊界は善悪が均衡していますが、周期的に悪の力が優勢になる時があります。
この時、神によって霊界で「最後の審判」が行われ、均衡を取り戻します。
これが、やがて地上にも及び、新しい時代、人間、教会が生まれます。

つまり、スウェデンボルグは、人間、教会が、段階的に変化すると考えます。

1 黄金時代:原古代教会  :アダム以降
2 銀の時代:古代教会   :ノア以降
3 銅の時代:イスラエル教会:アブラハム以降
4 鉄の時代:キリスト教会 :イエス以降
5 新時代 :新しい教会  :1757年以降

この変化には、金属名から分かるように、堕落の要素がありますが、これから起こる終末と「新時代」は、その堕落の流れを更新するものです。

彼は、「ヨハネの黙示録」も、霊界の秩序変動として象徴的に解釈します。
そして、「新時代」には、人が高次の宗教的意識に達し、「新しい教会」が到来するのです。

最後の審判は、1757年にすでに起きた霊界の秩序編成です。
偽りの宗教者が作った擬似的な天国の解消されたことで、人が死の直後に天界に行くか地獄に行くかが正常化されたことです。
そして、復活は、死後に霊的身体を持つことです。

今後に起こるイエスの再臨は、聖書の言葉の内的意味、キリストの真の意味が開示されることです。
「新しい教会(新エルサレム)」は、まず霊界で成立してから、それが地上にも実現されます。
この終末解釈は、イスラム教シーア派、特にイスマーイール派の解釈とそっくりです。

最終戦争は、真理と虚偽の衝突、秩序再編のプロセスとして象徴的に解釈されます。
ゴグとマゴグは外面だけの宗教であり、獣・偽預言者は歪んだ教義体系、バビロンは権力化・制度化した宗教です。


彼の死後、彼の思想に基づく新しい教会として「新教会」が作られました。
現在、信者は数万人と規模は小さいですが、英米を中心にした国際的ネットワークがあります。
「新教会」は、イエス・キリストの再臨が、スウェデンボルグの啓示によってすでに起きたと考えます。


・キリスト教シオニズム(福音派)

「キリスト教シオニズム」とは、キリスト教における終末論に関する政治的解釈の一つの立場で、聖書の預言の成就として、ユダヤ人のイスラエル帰還、イスラエル国家の存在を神学的に支持します。

他方、「福音派」とは、プロテスタントの中の一つの神学・信仰のスタイルで、回心を重視し、聖書中心主義で、キリストの贖罪を重視し、社会的実践を重視します。
具体的には、バプテスト系教会、メソジスト系教会、独立系メガチャーチなどが該当します。

両者は、異なる観点からのカテゴリーですが、現実的にかなり重なります。
特に、「ディスペンセーション主義」を採用する福音派が、キリスト教シオニズムと結びついています。

福音派の多くが支持している「ディスペンセーション主義(時代区分説、19C)」は、イギリス人のジョン・ネルソン・ダービーによる聖書解釈体系です。

「ディスペンセーション主義」は、神の救済史を複数の時代に分け、イスラエルと教会は別の役割を持つと考えます。
これは、カトリックやルター派の「教会は新しいイスラエル」という理解と決定的に異なります。

そして、イスラエル建国は、聖書の預言の成就であり、神の計画であり、終末が新しい時代に入った出来事と解釈されます。
ユダヤ教シオニズムの終末論では、イスラエルは「主体」であるのに対して、キリスト教シオニズムでは、イスラエルは「舞台」です。

「ディスペンセーション主義」では、基本的に聖書を象徴的ではなく逐語的に解釈します。
また、終末の開始と完結は神の主権に属すると考えます。

終末のストーリーは下記の通りです。

1 携挙:信者が突然天に引き上げられる(教会の消失)
2 大患難時代(約7年):地上では混乱と戦争が激化し、反キリストが世界支配を試みる
3 イスラエルの回復:ユダヤ人がイスラエルでキリストを受け入れる
4 最終戦争:諸国がイスラエルに集結し決戦
5 キリストの再臨
6 千年王国:キリストによる地上の統治

多くのキリスト教シオニストは、現在の中東戦争を、最終戦争に向かう過程と見なします。

ただし、厳格にこのように解釈するのは「ファンダメンタリスト」です。
「ファンダメンタリズム」は、福音派の中の、あるいは、そこから離脱した厳格派です。
主流の福音派の場合は、象徴的理解も含めて解釈に幅があります。

ただ、福音派が、他の伝統的なプロテスタントと異なって、揺ずれないのは、文字とおりの意味でのキリストの再臨や最後の審判の存在です。
「ヨハネ黙示録」の他の部分においては、当時の歴史的文脈で象徴的に解釈したり、文学的に解釈することもあります。

そもそも、ユダヤ人がパレスチナに入植してイスラエルを建国(再建)することと、キリスト教徒が北米に入植してアメリカを建国することには、類似します。
そのためか、福音派をはじめアメリカのキリスト教徒の中には、アメリカを「新しいエルサレム」として、キリスト教にとって特別な意味を持つ国と考えたり、アメリカはイスラエルを支援する使命を持った国家であると考える人がいます。

胸に十字軍の入れ墨を入れたキリスト教シオニストの米戦争長官ピート・ヘグセス


イスラム教


・スンニ派

まず、基本として、イスラム教は、ムハンマドは、ユダヤ教の何人かの預言者、そして、イエス(イスラム教では神ではなく預言者の一人)の後を受けて現れた最後の預言者です。
ですから、段階的に発展する時間軸を持ちます。

最も伝統的な派であるスンニ派は、主にアラブ、トルコ系の多くの国の国教です。
スンニ派の終末論の具体的内容は、主に「ハディース」(言行録)に記されています。
そのストーリーは以下の通りで、キリスト教終末論と類似していますが、微妙に異なります。

1 社会の退廃、災害、アラビア半島の緑化
2 ローマ(ビザンツ帝国)との戦争
3 救世主(マフディー)が出現し、エルサレムを拠点に7(8-9)年の統治
4 偽メシア(ダッジャール)が到来して40日の支配
5 イエスが降臨し、マフディーと共に戦ってダッジャールを殺し、統治
6 ヤージュージュとマージュージュ(ゴグとマゴグ)の出現と滅亡
7 イエスの死(寿命)
8 風による信者の死(最終的破局からの前もっての救済)
9 天使イスラーフィールが吹くラッパの第一声で悪者全員が死亡
10 ムハンマドのとりなしによる死者の復活と最後審判

まず、イスラム教、スンニ派の終末論の大きな特徴は、救世主的存在が、マフディーとイエスに二重化されている点です。
マフディーはムハンマドの子孫で、イエスの前に状況を整える役割を果たします。

また、最後のムハンマドの「とりなし」も大きな特徴です。
天国へ行けるのはイスラム教徒で五行の実践者であることが基本です。
ですが、ムハンマドの再度の「とりなし」で、地獄に行く運命の者の救済、地獄の行ったものの救済も行われます。

多神教徒(イスラム教に触れる機会がなかった)、アッラーを否定する者は永遠に地獄行きとなります。


・シーア・十二イマーム派

十二イマーム派は、イランの国教で、他にも中東、周辺諸国に信者がいて、イラン的性質、秘教的性質が強い派です。
その終末論は、シーア派独自が伝承する「ハディース」や、神学・教義書にかかれています。

その基本ストーリーは、スンニ派の終末論を踏襲しています。
ですが、隠れている正統な指導者の再出現によって歴史が回収されるという思想が背景にあります。

その具体的な特徴は、マフディーが12代イマームである点です。
「イマーム」は、外的な啓示を受ける預言者ではなく、内的な啓示を受けて預言者の系譜を受け継ぐ者です。
終末に現れるこのイマームを、「時の主(カーイム・ザマーン)」とも言います

スンニ派との違いとして、イマーム=マフディーの統治では、イマームへの迫害に対する正義の回復という側面がある点です。
この背景には、他派に対する歴史意識のこだわりがあります。

そして、スンニ派とは反対に、イエスがイマームを補助する存在とされます。
つまり、イマームの地位は、スンニ派のマフディーより高いのです。

また、最後の審判に先立って、一部の死者が復活し、「ラジャア(再帰)」と呼ばれる歴史の清算が行われることも特徴です。
これは、正義と悪の代表者達に対して、かつて隠されていた正邪を示すものです。

また、イマームも「とりなし」を行います。
これは、イマームの共同体、統治に参加した者を対象とした「とりなし」です。


・シーア・イスマーイール派

シーア派のイスマーイール派は、かつては北アフリカからサウジ北西部、シリアまでを支配したファーティマ朝の国教でしたが、ファーティマ朝崩壊以降は、一種の離散状態になって、南アジア、中央アジア、中東諸国、アフリカなどに1200万から1500万の信者がいます。

イスマーイール派は秘教的性質が強い派で、その終末論は、スンニ派、12イマーム派とは大きく異なります。

イスマーイール派にとっての終末とは、世界の終わりというより、啓示の隠された意味が最終的に解読されきる局面です。

イスマーイール派は、イスラム教が持っていた預言者の段階的発展を、「周期」として、以下のように体系化しました。

1 アダム
2 ノア
3 アブラハム 
4 モーゼ
5 イエス
6 ムハンマド
7 カーイム

「カーイム」というのは、終末と表現されてきた未来に現れる存在で、啓示の最終解釈者、隠されていた真理(バーティン)の全面的顕現者です。
ムハンマドの後の今の時代は、その完成に向かう準備段階です。

イスマーイール派では、内的な真理が現れる終末には、外的、形式的なものは不要になると考えます。
具体的には、宗教法(シャリーア) 、儀礼、戒律、制度などです。
これは極めて過激な思想です。
ちなみに、後期密教の考え方と似ています。

イスマーイール派は終末をこのように考えるので、終末の出来事とされてきたことも、以下のように象徴的、内的に解釈します。

・復活:無知からの覚醒
・審判:真理の認識能力による分別
・天国:知の完成状態
・地獄:無知に留まる状態


下記に続きます。

*タイトル画像はハンス・メムリンクによる『最後の審判』 from wikipedia



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