【生月島捕鯨】勇魚取絵詞(7)生月御崎浦 小納屋圖
生月御崎浦 小納屋圖


小納屋の入口は瓦屋にして、奥には苫葺の假屋を立續きたり。別當二人、帳役一人、若衆十人、魚切四人、食焚一人、太鼓番二人(若衆の中より勤役して不寝番する也)、支配人二人、日雇を加て、都計百十計人、暇もなく立舞つとむるなり。

此納屋に、取納るは、山の皮、鰭、扇骨、大骨の肉、阿腹、小髭、臓(此以下皆、臓中の具なり)、喉輪いかわた、ふき、うす、百尋、丁子、赤腸、大腸、豆腸、臓の身、かみわた、ひめ腸、からきも、等也。



凡、鯨は、骨、皮、肉、腸、いづれも食料ならぬはなきを、此からきものみは食ことなし。これを魚切者、私待にするよしなれど、なに/\用らんしらず。
※ 「私待」は、臨時収入、へそくりのこと。参考:『大日本国語辞典 第5巻 修訂(ほまち)』(国立国会図書館デジタルコレクション)


さて、納屋の入口に帳役座、其奥に小切場ありて、二十計人居ならび、小切すること、大納屋の作法におなじ。右方に魚棚有て、れいの切掻殺するなり。その油あるものは、油に煮、骨はなほ肉附なるをば斧もて削とり、跡の骨のみを骨納屋に送り遣すなり。


その奥に竃七をまうけ、大釜を居て油を煮、鉄の大壺六口に、例の竃額、土塀内の樋より流傳て溜置こと、大納屋の作法にかはらず。納屋入口に探番居て、間太郎を咎、竊に隠しもたる肉を捜出て、さいなむこと常也。
※ 「捜」の読み「あなくり」は、探り。
※ 「間太郎」は、近里から浜辺に来て鯨肉を盗む者のこと。
参考:【生月島捕鯨】勇魚取絵詞(6)生月御崎浦 納屋場脊美鯨切觧圖(note)

また別に、筋納屋とてあり。若衆七人、筋こさぎ十二人、支配の者一人居て、大納屋よりおこせたる丸切の内、三ツ合の上下、貝の両脇、背の皮などの筋をこさぎ作りて、商舩に班附る也。「こさぐ」とは、関東の方言に「掻殺る」といふに同じ。

※ 参考:『日本科学古典全書 第11巻 第3部(生月御崎浦 小納屋圖)』(国立国会図書館デジタルコレクション)
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