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"「おぉ、アムロか。」" ファーストガンダム半スピンオフ作戦 『テムよ…』 SCENE 11

ようやくバスに追いついたアムロ。降りてくるテム氏に「父さん!」と呼びかけながら近づきますが、上のように静かに呼びかけに応えてくれたあと、アムロは父から、想定外の言葉を聞きます。

「ガンダムの戦果はどうだ?順調なのかな?」

アムロは驚きで、「は、はい?とうさん…」としか声が出ません。

ここで思い出すのは第1話、サイド7でアムロが父さんを見つけるシーンです。

同じように「父さん!」と叫びながら駆け寄るアムロに気付いた父が、最初にアムロに行ったセリフは、

「ん、アムロ?避難しないのか?」

でした。

このときのテムはアムロに、今の自分を手伝えとかは言ってません。ましてすぐそばにあるガンダムを指さして、「どうだすごいだろ!私が作ったものだ!」とかも言ってません。自分の今やっていることとは関係なく、すぐにホワイトベースへ行くようにアムロに指示するんですが、そのときも、「早くホワイトベースへ逃げ込むんだ。」という言い方をしていて、アムロが手元にV作戦の資料を持っていることに気付いていたかどうかは別としても、アムロ本人には『逃げ込む』というワードを使ってます。

アムロには戦争と関係ない暮らしをしててほしかったし、ガンダムをホワイトベースに収容するために外へ出たあの瞬間でさえ、そうであるべきだと思っていた。

その父が、今は、アムロにいきなりガンダムのことを聞いてきた。

そもそもアムロがガンダムに乗ってるとか、まだホワイトベースに乗ってるとかって、知ってるとは限りません。ただアムロが軍の服を着ているから、聞いてみただけかもしれない。

それにしたって、自分よりガンダムの方を先に聞いてくるとは。父親としてのテムはそんな人じゃなかったのに…。

そんなことを考えているうちに、父に「うん、来るがいい。」と言われ、考えもまとまらないまま「はい。」とだけ言ってついていくアムロ。

「ほら何をしている、入って入って。」って言われても、ここ??みたいな場所です。技術士官(しかも大尉)だった人ですよ。なんでこんな薄暗いところなんだよ、と、自分の耳と目を疑うアムロです。やっとのことで「こ、ここは…?」と父に問いかける。

「ジャンク屋というところは、情報を集めるのに便利なのでな、ここに住み込みをさせてもらっている。こいつをガンダムの記録回路に取り付けろ。ジオンのモビルスーツの回路を参考に開発した。」

突然ここまでを一気にしゃべります。いくらニュータイプ(かもしれない)のアムロでも、なんだか訳が分かりません。

「こ、こんな古いものを…。父さん、酸素欠乏症にかかって…」

ようやく出てきた仮説が、酸素欠乏症、でした。

別にアムロは医者じゃないし、その方面に詳しいわけでもないでしょうし、部屋の中で処方箋とか診断書を見つけたわけでもありません。もちろん、渡された回路が使えないものって判断は正しいと思います。なので、こんなわけの分かんないこと言ってくるってことは、今は病気だってことにした。

「すごいぞ、ガンダムの戦闘力は数倍に跳ね上がる。持っていけ。そしてすぐ取り付けて試すんだ。」あまりの衝撃に何も言い出せないアムロに、父さん、まだこんなこと言ってきます。

だいたいもし今、ガンダムにこれを取り付けられる(またはそれを誰かに頼める)立場にアムロがいると思うなら、自分で取り付けに行きたいって言ってもいいはずです。なんでそっちを僕に頼まないんだろう。父さん、今の僕なら、父さんをホワイトベースに連れていくこともできるのに!

「はい。でも、父さんは?」

「研究中のものがいっぱいある。また連絡は取る。ささ、行くんだ。」

「…うん。」いやーもうこうなるとアムロ、父が自分を追い出したがってるようにも感じてしまいます。たった今、入れと言ったばかりなのに。アムロ、なんとかしたくて、話をそらします。

「…父さん、僕、故郷(くに)で母さんに会ったよ。」そう、アムロはこういう話をしたかった、と思います。こういう、他愛のない、戦争と関係ない話を。

「…」…そこ、無言なのかよ!母さんの方がまだ、父さんのこと心配するセリフ、ありましたよ。「じゃあ父さん、分からないわね…」とか言って。ちょっと涙まで見せそうな感じだったし。…そういえば母さんは、僕との再会の時、近づいて、僕を抱きしめてくれたな。優しかった母さん、そのままだった。あれ?俺、なんで母さんと別れたんだっけ?

「父さん、か、母さんのこと、気にならないの?」

「ん?うん、戦争はもうじき終わる、そしたら地球へ、一度行こう。」ん?じゃねーよ!なんだよ歯切れ悪いなー。だいたいこんな薄暗いところで、たった一人で研究ってなんだよ。だいたいこの中立サイドで、こんなことしてて大丈夫なのか?そもそもこんな古いもの研究してたって意味ないし。っていうか、そんなことすら分からないのか…??

「と、父さん…、と、…」

「急げ!お前だって軍人になったんだろうが!」

アムロには、この最後の一言が、一番きつかったと思います。

あれだけ僕を戦争から遠ざけてくれていた父。自分は戦争に協力する仕事をしていても、僕には平和な時間を過ごさせてくれてた父。

その父が、軍人になったんだから俺に甘えるな、と言ってきた。

15歳くらいの少年でもゲリラ戦に出ているという噂を、いやだねーと言っていたテム。息子アムロに対しても、家ではそういう接し方をしていたでしょう。親父に一度もぶたれたことのなかったアムロ。そんな父からこのセリフ。信じられません。

ちょっと待ってよ、父さんだって軍人なんじゃないの?今の俺と一緒じゃないのかよ。いきなり回路の話なんかして、それが済んだらそれで終わりで、俺の話は聞いてくれないのか?そもそもこんなところで普通に暮らしてるなら、なんで連絡の一つもくれてないんだ!?親子としても、軍の人同士としても、会話してくれないなんて。…おやじ、今の話、どこまで本気でしゃべてるんだ?!?!

「うわああああああ!!!」

回路を投げ捨てるアムロ。

常にではないにしても、どんどん薄らいでいたかもしれないにせよ、ガンダムは父が作ったものだという思いは、アムロの中にきっとずっとあったと思います。

ガンダムで敵を打ち負かしたとき、心の中では少なからず、父の作ったこのモビルスーツを誇りにも感じていたことでしょう。

今まで誰一人として、テム・レイの消息を語る人間はいなかった。ルナツーでも。ベルファストでも。ジャブローでも。

ようやく会えた父は、しかし、変わり果てていました。何があったかは分からない。でも、明らかに今までの、あの頃の彼とは、全く違う人になってしまった。今いた場所だって、どう見ても軍の施設でもなさそうだし、父は軍の服を着ていたわけでも、軍の服を持ってそうでもありませんでした。

酸素欠乏症…。これはアムロが生み出した、この日の一つの答え。

心のどこかにあったかもしれない、「ガンダムに本当にもしものことがあったら、父さんが助けに来てくれるのかもしれない。」なんていう妄想は、この日を境に封印せねばならなくなってしまいました。

ホワイトベースに戻ればどこをほっつき歩いてたんだとブライトさんに叱られ、でももう、本格的に父は技術士官でもなんでもないって思わなければいけない。自分がしっかりしなくちゃいけないんだ。今のままでも十分、しっかりすぎるほどしっかりしてるアムロですが、その思いにもう一つ襟を正して、ベルガミノさんの浮きドックに向かうホワイトベースの護衛として、ガンダムに乗ります。

コンスコンが不意打ち的にどれだけ大量のリックドムを送り込もうが、もう全く関係ありませんでした。このガンダムを作った父を、自分は越えていかなければいけない。あの聡明な父の姿を、自分で越えていかなければ。研ぎ澄まされた感覚は額から閃光を放ち、仲間たちの力も巻き込んで、12基のリックドムが3分もたたずに全滅。

ところが、カムラン絡みでこの攻防が終わったことと、ミライとカムランのすれ違いの会話で次週へ向かってしまったことで、アムロと父のことはなんだかうやむやな感じでこの回は終わっていきます。(やっぱりテムさん、かわいそうです…)

翌日(次の回)、サイド6を後にする前に、アムロはもう一度父に会いに行きます。昨日のことが全部嘘だったらどんなに良かったか。父さんがもう一度ホワイトベースに乗りたいと言ったら、連れてくるべきだろうか。だいたいあの倉庫だって、気まぐれでひょいっと入っただけで、もしかしたらあそこに住んでるってのも冗談だったかもしれないよね。きっと、そうであってほしい!…

そんなことをきっと思いながら、バギーを走らせ(このときのアムロの表情と声はけっこう明るい)、ほどなくけっこう強めの急な雨に降られ、しかたなく通りがかりのコテージでしばらく雨宿りをしようと考え、…

コテージの前の湖の上、雨の中を飛び、死んでゆく白鳥に導かれて、あの、ララァに出会います。

すごいタイミングです。このコテージから父の所までは、どのくらいの距離だったんでしょうか。近いところにいた、どころの話ではありません。

ブライトさんとミライさんによれば、アムロが戻るまで、あと2時間です。

SCENE 12

『テムよ…』ファーストガンダム半スピンオフ作戦

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