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中国借金漬け外交とアフリカ諸国の不安定化


 最近あまり話題にならなくなった中国の「借金漬け外交」問題ですが、米中対立やトランプ政権の政策の影響で一時注目を集めたこともありました。また、中国経済の低迷によって、中国側の余裕がなくなってきているという背景もあり、このテーマがあまり語られなくなっている印象です。しかし、世界経済を考える上で、アメリカだけを見ていればいいというものではありません。
 この記事では、中国によるアフリカ諸国への融資、いわゆる「借金漬け外交」がその後どうなっているのか、アフリカの国々を中心とした現状と今後の見通しについて解説します。

融資のピークは2016年

 2023年時点ですでに、中国からアフリカ諸国への新規融資は激減していました。実際、「借金漬け外交」という言葉が盛んに使われていたのは2010年代で、データ上も最も多く新規融資が行われたのは2016年です。

出所)Reuters【2023/9/19】

 そして2020年の段階では、ほとんど新規の融資が行われていない状況になっていました。それ以降はどうなったかというと、今や新規融資を行うよりも、すでに貸し出した資金の回収の方が中心になってきています。

中国の融資減少とパリクラブの代替的役割

 世界銀行のデータによると、新興国に対する中国からの融資は急激に減少し、すでにマイナス圏に突入しています。つまり、新しくお金を貸すどころか、過去に貸した分を回収しているということです。

 この一方で、中国が融資を減らしたことで、その穴を埋める役割を果たしているのが「パリクラブ」です。パリクラブとは、新興国にお金を貸している債権国が集まり、フランスを中心に債務問題の解決を話し合う場で、特にアフリカにおいては一定の影響力を持っています。
 
データを見ると、財政状況の悪化している国々では、中国が融資の回収に動き、パリクラブがその穴埋めをしている構図がより鮮明になってきているのが分かります。

債務返済の山場

 2010年代に大量の中国融資を受けた新興国は、今その返済期を迎えつつあります。グラフでは、青い線が新たな融資額、赤い線が金利支払いや元本返済に充てられる資金を示しており、今後支払額が大幅に増えていくことが見て取れます。

 特に2024年から2028年にかけて、過去の融資の多くが償還期限を迎えるため、発展途上国はこれらの返済に大きなプレッシャーを受けることになります。2025年時点では、発展途上国の対外債務の約3割が中国からの融資とされており、中国が回収に本腰を入れることで、借り換えがますます困難になることが予想されています。

中国国内経済の不振

 この背景にはいくつかの要因がありますが、最も大きなものの一つが中国国内経済の不振です。2020年以降の不動産バブルの崩壊以降、低成長が続く中国経済。加えて、少子高齢化による中長期的な見通しの悪さもあり、国内世論では「海外にお金を貸している場合じゃない。国内に投資すべきだ」という声が強まってきています。
 さらに、アフリカでは政情不安が広がっている地域もあり、中国と関係の深かった政権が崩壊する例も出てきています。一部では「もう中国の融資はいらない」という世論も形成されつつあり、そうした不安定要因が中国の融資戦略を変える一因になっていると考えられます。

優先順位のシフト

 とはいえ、中国がアフリカやアジアでの影響力を完全に手放そうとしているわけではありません。むしろ、アフリカの中でも重要度の低い国への融資は控えつつ、一帯一路構想で戦略的に重要視される国々には引き続き支援を継続しているようです。

アフリカ諸国の不安定化リスク

 今後も中国は新たな融資を行う余裕が乏しく、既存融資の回収が優先される展開が続く見込みです。この影響で、アフリカなどの新興国は別の融資先を探す必要が生じますが、それが叶わなければ債務不履行(デフォルト)に陥る国も出てくるでしょう。

 実際、コロナ後の経済危機に直面したアフリカでは、ザンビア、ガーナ、エチオピアがすでにデフォルト。ナイジェリアなどの主要国でも経済危機が進行中です。

 ナイジェリアはアフリカでは経済規模の大きな国ですが、BRICSではなく西側と行動を共にすることを選んだ国です。BRICSの厳しい面について取り上げることが多いですが、西側を選んだナイジェリアもまた苦しんでいます。

ナイジェリア経済の現状と食糧危機

 アフリカ以外でもスリランカが中国との関係の深さから注目され、政権崩壊や通貨暴落に至りました。今後もこうした事例が増える可能性があります。
 さらに西側諸国から制裁を受けている国々では、新たな融資先を見つけるのが難しく、借りるためには高金利を受け入れる必要があるため、利払い負担が増加。通貨安やインフレを招き、政治不安が高まり、経済がさらに悪化するという悪循環に陥るリスクもあります。

対中債務依存国ランキングとフランスの影響力

 対中債務の割合が高い国を見ていくと、2022年時点で以下のようになっています。

  • ジブチ:43%

  • アンゴラ:41%

  • モルディブ:38%

  • ラオス:30%

  • コンゴ民主共和国:29%

 このうちコンゴ民主共和国はすでに不安定化しており、資源国であるために中国が簡単には手放さないだろうと見られています。

世界のコバルト生産の76%がコンゴ民主共和国で行われています。そのうち約40~50%が電気自動車のバッテリー(リチウムイオン電池)に使用されています。また、携帯電話やノートパソコンのバッテリー、航空宇宙産業などでもコバルトが使用されています。

コンゴ民主共和国の戦闘とコバルト供給への影響

 また、アフリカの一部の国では「セーファーフラン」という共通通貨を使っており、これについてはフランスの影響が大きいと批判されることがありますが、暴落リスクを抑えられるというメリットもあります。一方で自国の経済政策で立ち直ることが難しいという側面もあり、一長一短ではあります。

中国の借金漬け外交の出口

 中国の借金漬け外交から約10年が経過する中で、アフリカを中心とした発展途上国が、今まさに返済の壁に直面しているという説明でした。これから2028年ごろまでにかけて、多くの債務が償還期限を迎え、特に中国に依存していた国々にとっては不安定化が進むことが懸念されます。
 借り換えができない国では、財政破綻、通貨暴落、インフレ、そして政情不安といった危機が連鎖するリスクも高まっています。こうした動きは、今後の世界経済における大きな変動要因となっていくでしょう。


ご参考

独裁政権の下で国民一人当たりのGDPが2,300ドル(世界161位)という貧困状態にある一方で、大統領の娘が10億ドル以上の資産を築いたという現実です。

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