コンゴ民主共和国の戦闘とコバルト供給への影響
コンゴ民主共和国で、隣国ルワンダが支援する武装勢力が主要都市を掌握し、3,000人もの死者を出しているという事態が、日本ではあまり報道されていません。この問題は、過去にルワンダで発生した大量虐殺とも関わっており、深刻な人道危機へと発展する可能性が指摘されています。
アフリカでは極めて重大な問題として受け止められており、ヨーロッパのメディアでも大きく報じられています。
コンゴ民主共和国(Democratic Republic of the Congo)
主要貿易品目
(1)輸出 銅、コバルト、原油等
また、コンゴ民主共和国は、コバルトをはじめとする金属資源の一大生産地です。コバルトは電気自動車やスマートフォンのバッテリーとして使用されるリチウムイオン電池の生産に欠かせない金属です。そこでこの記事では、このコンゴ民主共和国における紛争の経緯と、コバルトなどの資源生産にどのような影響を及ぼす可能性があるのかについて解説します。
2030年のコバルト需要は34万トン、産出シェアはコンゴ民主共和国が66%、IEA予測
武装勢力による主要都市の掌握
2025年1月、コンゴ民主共和国東部のゴマという町が、M23という武装勢力によって掌握されました。M23はコンゴ民主共和国国内で活動する武装組織ですが、ルワンダ政府が支援しているとされています。
コンゴ民主共和国は、アルジェリアに次いでアフリカで2番目に広い国土を持つ国ですが、実際に政府の統治が及んでいる地域は限られています。特に東部地域では、M23のような武装勢力の支配が広がっています。
ゴマはルワンダとの国境に近い町で、これまでもM23に占領されたことがありました。そして、1月23日にはM23が再びゴマを制圧したと報じられています。この戦闘によって、約3000人が死亡したとも報道されています。その後、M23は「5万人規模の新しい政府を樹立する」と宣言しました。
M23の背景
M23という武装勢力がなぜこのような戦闘を行っているのか。これは、民族的な対立が関係しています。この対立の背景を理解するには、1994年にルワンダで発生した大量虐殺の歴史を振り返る必要があります。
ルワンダ大量虐殺の影響
ルワンダ大量虐殺では、フツ族系の政府と過激派が、ツチ族を大量虐殺しました。正確な犠牲者数は不明ですが、80万人から100万人とも言われています。この民族対立は、19世紀以降、ドイツやベルギーによる植民地統治の時代に分断政策が取られたことに端を発しており、その後の貧困問題などと相まって1994年の虐殺へとつながりました。
国連の失敗
この事件は、国連が介入に消極的だったことで、国際社会から「国連の失敗」と指摘される例としてよく挙げられます。当時のルワンダは、人口が1,000万人にも満たない小国で、天然資源も乏しかったため、国連の常任理事国はこの問題に関与しても利益がないと判断し、大量虐殺の事実をなかなか認めませんでした。結果として、事態はさらに深刻化しました。
カガメ政権
この出来事の後、ルワンダはカガメ大統領の下で復興を進めてきました。カガメ氏はツチ族出身であり、ツチ族とフツ族の融和政策を進めたことで、ルワンダは徐々に平和を取り戻しました。
しかし、一方でカガメ政権は独裁的な側面も持ち合わせており、反対派の弾圧などを行ってきたとも指摘されています。2024年の大統領選挙では、カガメ氏が4選を果たしましたが、その得票率は99%とされており、民主主義の観点からは疑問の声も上がっています。
ルワンダ大量虐殺後のコンゴ民主共和国
ルワンダ大量虐殺の後、多くのルワンダ人が難民として隣国のコンゴ民主共和国に流入しました。その中には、ルワンダ政府にとって都合の悪い武装勢力も含まれていたとされています。そのため、ルワンダ政府は反政府勢力の拠点がコンゴ民主共和国東部にあることを問題視し、2000年代から2010年代にかけて何度も軍事介入を行いました。
そして2022年頃から、ルワンダ政府はM23を支援する形でコンゴ民主共和国東部での影響力を強めてきました。M23はカガメ大統領と同じツチ族系の組織とされており、1994年の虐殺を二度と繰り返さないという恐怖心が、現在の紛争の背景にあると見られています。
コバルト生産への影響
M23によるゴマ掌握が、コバルトなどの資源生産にどのような影響を与えるのかについても注目されています。
コバルトの研究機関「コバルト・インスティテュート」によると、世界のコバルト生産の76%がコンゴ民主共和国で行われています。そのうち約40~50%が電気自動車のバッテリー(リチウムイオン電池)に使用されています。また、携帯電話やノートパソコンのバッテリー、航空宇宙産業などでもコバルトが使用されています。
ただし、現時点ではM23によるゴマ制圧がコバルト生産に与える影響は限定的だと見られています。というのも、コバルトの鉱山が集中しているのはコンゴ民主共和国南部のカタンガ州であり、ここはルワンダやブルンジと直接国境を接していません。そのため、紛争の影響はまだ鉱山地域には及んでいない状況です。市場もこの問題を静観しており、今のところ大きな影響は出ていません。

しかし、1990年代に発生した「コンゴ紛争」のような事態に発展すれば、コバルト生産にも大きな影響が及ぶ可能性があります。1990年代から2000年代前半にかけてコンゴ民主共和国では2度の内戦があり、500万人以上が犠牲となりました。この時期、コバルトを含む鉱物資源の生産も大きく落ち込みました。今後、紛争が激化すれば、南部の鉱山地域にも影響が及ぶ可能性があり、長期的な資源供給の不安定要因となるかもしれません。
まとめ
今回のM23によるゴマ掌握は、すぐにコバルト供給に大きな影響を及ぼすものではありません。しかし、電気自動車やスマートフォンなど、私たちの生活に不可欠な製品が、アフリカの不安定な地域の資源に依存しているという現実を改めて浮き彫りにしています。また、この問題に進展があれば、アップデートしていきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
ご参考①

現在の国旗は、1971年まで使用された国旗が2006年に復活したもの。
平和を象徴する水色を背景に、赤は国家のために殉じた者の血、黄色は国富、星は国家の輝かしい未来を象徴。
ご参考②
「意外と知らないアフリカの6つのデータ」を公開しています。アフリカの経済社会に関するデータの基礎的な解説です。意外と知らないものもあるかもしれません。確認の意味でも、是非ご覧いただけたらと思います。
1.国の数
2.人口
3.GDP
4.アフリカの原油埋蔵量世界シェア
5.アフリカの鉱物資源生産量世界シェア
6.難民の数
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