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加速する円安、政策と金融スタンスの変化の影響


 円安がまた進んできています。2025年11月12日のニューヨーク時間には、ドル円が一時1ドル=155円をつけました。ユーロ円は1ユーロ=180円を目指す展開となっており、ドルで見た以上に円が非常に安くなっていることがわかります。
 
高市政権が発足して以降、円安傾向はずっと続いていますが、この円安について説明してほしいというリクエストを多くいただいていましたので、この記事では私の見方を解説したいと思います。

ドル円より深刻なユーロ円とポンド円の円安

 11月12日、ドル円は1ドル=155円をつけました。去年は160円台をつけたこともあり、それに比べれば「まだそこまでではない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、これはドル自体が下がってきているという側面もあります。ユーロ円で見ると、同日には1ユーロ=179円48銭をつけており、これはユーロ導入以来最も円安・ユーロ高の水準です。さらにポンド円でも、11月12日に1ポンド=203円57銭をつけました。つまり、ドル以外の通貨と比べたときに、円が非常に安くなっているという現実がより鮮明に見えてきます。

高市政権発足とともに進んだ円安

この円安が高市政権の政策と無関係ではないことは、もはや言うまでもないでしょう。

 ここで少し政治の動きと為替相場の推移を振り返ってみます。7月20日に行われた参議院選挙で自民党が大きく議席を失い、それが石首相の辞任につながりました。その選挙の翌日、7月21日のドル円は147円38銭でした。その後、10月4日に行われた自民党総裁選の前日、10月3日時点でも147円47銭と、3か月近くほとんど動いていなかったことがわかります。

 しかし、自民党総裁選直後の10月6日には150円35銭まで上昇し、10月9日には153円台をつけました。その後、公明党との連立解消を受けて10月16日には150円台まで一時円高に戻りましたが、維新との連立が発表され、10月21日の首相指名選挙で高市氏が正式に総理に選出されると、再び円安が加速しました。
 さらに10月30日に開かれた日銀の金融政策決定会合で、日銀が利上げに慎重な姿勢を示したことも追い風となり、円安は一段と進みました。その結果、10月30日には1ドル=154円台、そして11月12日には1ドル=155円をつけるまでになりました。

日銀のスタンス変化と政府の影響

 今回の円安の背景には、高市政権のもとでの日銀の政策スタンスの変化もあります。10月29日から30日にかけて開催された金融政策決定会合の議事要旨を見ると、複数の委員が引き続き利上げに前向きな意見を述べていたことが明らかになっています。
 しかし、その中で注目されたのが、内閣府からの意見部分の文言の変化です。これまでは「日本銀行は政府と緊密に連携し、2%の物価目標の持続的・安定的な実現に向けて適切な金融政策の運営を期待する」とされていましたが、今回はこの文章の中に「日銀法・政府・日本銀行の共同声明の趣旨に沿って」という文言が追加されています。これは、政府側から日銀への関与がより明確になり、政策運営に対する姿勢が変化していることを示していると考えられます。

金融政策決定会合における主な意見
出所)日本銀行【2025/11/10】

リフレ派の登場と成長戦略会議

 さらにもう一つ注目すべき動きがあります。それは、高市総理をトップとして「日本成長戦略会議」という新たな組織が設置されたことです。この会議は、日本の新しい投資戦略を議論する場として発足しましたが、そのメンバーには興味深い顔ぶれが揃っています。元日銀審議委員でPWCコンサルティングのチーフエコノミストである片岡剛士氏、そしてクレディ・アグリコル証券のチーフエコノミストである会田卓司氏など、いわゆるリフレ派の代表的な人物たちが名を連ねています。

出所)ca-cib.co.jp

 この会議がどの程度政策に影響を与えるかはまだ定かではありませんが、政権に近い立場の経済学者たちが発言権を持ち始めている点は注目に値します。特に会田氏は、安倍政権の時代にもフランス系のソシエテ・ジェネラルでエコノミストを務め、当時から政権と近い関係を築いてきた人物です。こうした背景から、高市政権発足後は会田氏の発言が市場関係者やメディアで頻繁に取り上げられるようになっています。

利上げ見通しの後退と金融緩和の継続

 会田氏をはじめとした政権寄りのエコノミストたちは、「0.25%の利上げは可能だ」とする一方で、「政策金利を1%にするのは時期尚早だ」と述べています。財政政策によって景気がさらに上向いた段階でなければ本格的な引き締めは行うべきではない、という考え方です。こうした発言の影響もあり、市場では利上げペースが以前よりも緩やかになるという見方が強まっています。

 実際、短期金融市場のデータを見ても、10月1日時点では「1月までに0.75%へ利上げする確率」が約9割、「来年9月までに1%へ引き上げる確率」がほぼ100%とされていました。ところが、11月12日時点では0.75%への利上げが1月までに行われる確率は約8割に低下し、1%への引き上げも8割程度に下がっています。つまり、高市政権の発足以降、金融政策がより緩和的な方向に傾いているということです。この「利上げの先送り」こそが、円安をさらに進行させている大きな要因のひとつと言えるでしょう。

長期的な円安基調は続くのか

 今後については、アメリカ経済が大きく崩れない限り、円安基調はまだ続く可能性が高いと考えられます。金融緩和が継続される見込みが強いことに加え、日本の経常収支の構造にも問題があります。特に「デジタル赤字」が慢性的に拡大しており、AIやクラウドなどの利用が増えるにつれて、海外への支払いがさらに増えていく傾向にあります。こうした構造的要因も、長期的な円安を後押ししているのです。
 また、高市政権が緩和的な金融政策と積極的な財政支出を同時に進めていけば、為替相場が円安方向に向かうのは避けられないでしょう。問題は、その円安をどの水準まで政権が容認するのかという点です。これからの展開は、まさにその「円安容認ライン」を試すような局面になっていくかもしれません。

私の考え

 円安は単なる一時的な現象ではなく、政策・構造・市場心理のすべてが絡み合った複雑な結果として生じています。今後もこの流れがどこまで続くのか、引き続き注視していく必要があるでしょう。


ご参考

高市首相に限らず、過去の首相にも英語で自ら話をした方はいました。自分の言葉で話そうとするその姿勢こそが、国際社会の中での信頼にもつながるものであり、それを避けてきた人たちとは大きな違いがあると思います。

英語を巡る議論と日本人の英語観について

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