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【給与計算劇場】「名前を変えただけなのに…」割増賃金の基礎から外れない手当とは?

こんにちは!愛知県の社労士事務所のしがないパンダです🐼

会社の給与制度を設計したり、毎月の給与計算を行ったりする中で、必ず出てくるのが「各種手当」です。 「役職手当」「資格手当」「住宅手当」「家族手当」……。

しかし、この手当の設計や計算をめぐって、全国の社長や人事担当者が高確率で引っかかる「底なしの地雷原」が存在します。

それが、「残業代(割増賃金)の基礎単価に含めなければいけない手当」の判定です。

「え? 役職手当なんだから、基本給じゃないし残業代の計算からは外していいよね?」 「手当の名称を『住宅手当』とか『家族手当』に書き換えたから、これで残業代の対象外にできるでしょ!」

もしそんな風に軽く考えて計算していると、将来、労働基準監督署の調査が入った瞬間に「未払い残業代」として数年分を遡って請求され、会社が数百万〜数千万円を失う大惨事になりかねません。

今回は、手当の「名称」と「実態」の境界線でパンダがやらかしかけた実務のリアルなエピソードをお届けします!


プロローグ:新設された「役職手当」の罠

パンダ(以下、🐼): 「フクロウ先輩、フクロウ先輩! 顧問先のE社さんから相談がありました! 今回、優秀なFさんが主任に昇進したので、基本給とは別に『役職手当:月3万円』を支給することにしたそうです。 給与ソフトのマスター設定で、この役職手当は残業代の計算基礎から『除外』にチェックを入れておけばいいですよね?」

フクロウ先輩(以下、🦉): 「おやおや、パンダくん。キーボードを叩く手がずいぶん軽やかだけど……。 それ、設定を『除外』にしたら、E社の社長さんが後で泣くことになってしまうよ。とっても穏やかじゃないねぇ」

🐼: 「えっ!? なんでですか? 基本給じゃなくて、あくまで『役職に対する手当』ですよ!? なんで残業代の単価に含めなきゃいけないんですか?」

💭(モッフィーさん): 「えーっ!役職手当って残業代に入るの!? なんだか『おまけの手当』って感じがするのに、法律って厳しいんだねぇ〜」

📚(アーカイブさん): 「厳しいんじゃなくて、あなたが基本を知らなさすぎるだけです。 労働基準法第37条第5項と、施行規則第21条を舐めないことね。 割増賃金の基礎から除外できる手当は、法律で【限定列挙(これ以外は絶対にダメ)】されています」

1. 法律が定める「除外していい手当」は7つだけ!

📚(アーカイブさん): 「脳みそに直接書き込みなさい。残業代の計算から抜いていい手当は、原則として以下の7種類だけです」

  1. 家族手当(扶養家族数などに応じて支給されるもの)

  2. 通勤手当(通勤距離や実際にかかる費用に応じて支給されるもの)

  3. 別居手当

  4. 子女教育手当

  5. 住宅手当(家賃額や住宅ローンの有無などに応じて支給されるもの)

  6. 臨時に支払われた賃金(結婚手当など、突発的なもの)

  7. 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(いわゆる賞与など)

🐼: 「あ、あれ……? 『役職手当』の名前がどこにもない……」

🦉(フクロウ先輩): 「そうなんだよ、パンダくん。 どれだけ会社が『これは残業代とは関係ない手当だ』と主張しても、この7つのリストに載っていない手当――例えば『役職手当』『資格手当』『技術手当』『皆勤手当』などは、すべて残業代の計算基礎に『含めなければならない』んだよ

「名前を『住宅手当』に変えればセーフ?」

🐼: 「な、なるほど……。 あ! だったら、E社の社長さんに提案して、役職手当(3万円)という名前をやめて、上のリストに入っている『住宅手当』っていう名称で全員に一律支給することにすれば、残業代の基礎から外せるんじゃないですか!? 私って天才!」

📚(アーカイブさん): 「……。 (すぅーっと息を吸って) この、おバカパンダ!!! そんな浅はかな偽装、労働基準監督官が一瞬で見破りますよ」

🐼: 「ひえっ!偽装じゃないです、単なる名称の変更ですぅ!」

📚(アーカイブさん): 「いい? 除外手当の判断において、国は『手当の名称ではなく、支給の実態』で判断するの。 もし『住宅手当』という名前であっても、住宅にかかる実際の費用(家賃額や持家・賃貸の区別など)に関係なく、【全員に一律で3万円支給する】というルールにしている場合、それは実質的な基本給のバラマキとみなされて、割増賃金の基礎から除外することはできないのです」

【住宅手当のセーフ・アウトの境界線】
・賃貸:月2万円支給、持家:月1万円支給 ➡ 実態があるので【除外してOK】
・全員一律で:月3万円支給 ➡ 実態は基本給と同じなので【除外NG(算入必須)】


🦉(フクロウ先輩): 「そうなんだ。同じように『家族手当』という名称にしていても、『配偶者あり:1万円』などの扶養実態に連動せず、『全員一律1万円支給』にしている場合は、割増賃金の基礎に含めなければならないんだよ。 『手当の名称を変えただけ』で残業代を安く抑えようとする行為は、最も労基署に突っ込まれやすいポイントです」

💭(モッフィーさん): 「そっかぁ! 名前をそれっぽく整えても、中身が『一律支給』だったら法律の魔法は効かないんだね。アーカイブさん、怒ると怖いけど言ってることは100%正しいよ!」

3.もし間違えて「除外」していたら、どんな大惨事になる?

残業代の落とし穴

🐼: 「もし、役職手当(3万円)を勝手に残業代の基礎から外して計算し続けていたら、具体的にいくら損害が出るんでしょう?」

📚(アーカイブさん): 「じゃあ、簡単な算数をしてあげるわ。 例えば、基本給22万円、役職手当3万円、月平均所定労働時間150時間、毎月の残業が30時間の従業員がいたとするわね」

まず、役職手当3万円が除外されたことで、1時間あたりの基礎賃金と割増賃金(残業単価)がいくら下がるかを計算します。

※労働基準法に基づく計算ルールに則り、1円未満の端数は四捨五入(50銭未満切り捨て、50銭以上切り上げ)して計算します。

1. 1時間あたりの単価への影響

まずは、役職手当を含めた「正しい単価」と、外した「誤った単価」を比較します。

① 正しい計算(役職手当を含める)

  • 計算の基礎となる賃金: 基本給22万円 + 役職手当3万円 = 250,000円

  • 1時間あたりの基礎単価: 250,000円 ÷ 150時間 = 1,666.6...円 ⇒ 1,667円

  • 残業単価(25%割増): 1,667円 × 1.25 = 2,083.75円 ⇒ 2,084円

② 誤った計算(役職手当を外す)

  • 計算の基礎となる賃金: 基本給のみ 220,000円

  • 1時間あたりの基礎単価: 220,000円 ÷ 150時間 = 1,466.6...円 ⇒ 1,467円

  • 残業単価(25%割増): 1,467円 × 1.25 = 1,833.75円 ⇒ 1,834円

役職手当を除外することで、1時間の残業につき250円(2,084円-1,834円)の未払いが発生します。

2. 具体的な損害額(未払い額)のシミュレーション

この従業員が毎月30時間の残業をした場合、被害額は以下のようになります。

  • 1ヶ月の未払い額(損害) 正しい残業代(2,084円 × 30時間 = 62,520円) - 誤った残業代(1,834円 × 30時間 = 55,020円) = 7,500円 / 月

  • 1年間の未払い額(損害) 7,500円 × 12ヶ月 = 90,000円 / 年

  • 3年間(未払い賃金の消滅時効)放置した場合
    90,000円 × 3年 = 270,000円

もし同じ条件の従業員が10人いれば、会社が抱える潜在的な負債は270万円に膨れ上がります。このように、本来含めるべき手当をたった1つ計算から外すだけで、後々大きな損害や法的リスクに発展するため、正確な計算基礎の設定は非常に重要です。」

🐼: 「に、にひゃくななじゅうまんえん……!!!(失神)」

🦉(フクロウ先輩): 「そうなんだよ。それに加えて、遅延利息や付加金が課される可能性もあるから、会社にとっては本当に穏やかじゃない金額になってしまうんだ。 だからこそ、私たちは手当の新設を聞いた瞬間に、その支給要件を厳しく、かつ優しくヒアリングして、正しい給与計算ソフトの設定を行わなければならないんだね

エピローグ:パンダ、正しい設定に取り組む

🐼: 「恐ろしすぎます……! すぐにE社の社長さんに連絡して、『役職手当は残業代の対象になるので、給与設定は含める(算入)にしておきますね!』って伝えます!」

🦉(フクロウ先輩): 「うん、それがいいね。 もし社長さんが『え?手当なのに残業代に入るの?』と不思議そうにされたら、この7つの除外手当のルールを穏やかに説明して差し上げると、ものすごく感謝されるはずだよ」

💭(モッフィーさん): 「パンダさん、大ピンチを防げてよかったね! 今日もAIチームとフクロウ先輩の連携プレイで、会社のピンチを救っちゃった!」

📚(アーカイブさん): 「……まぁ、気づけたことだけは褒めてあげるわ。 さあ、理解できたらすぐにE社さんの給与ソフトのマスター設定を書き換えなさい。 1分遅れるごとに、私のデータベースの精神衛生が悪化するんだから!」

🐼: 「はいっ!今すぐ、設定を変更します!!(シュタタタタ!)」

手当の名称という「甘い罠」に惑わされず、実態を見極めて、スマートでクリーンな労務管理を心がけましょう。


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