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参加することに意義がある(きのころさんのコンテスト)

noterのきのころさんの記事を毎日、読んでいます。そしてこの度、このようなコンテストが開かれることを知りました。

コンテストの内容は、お疲れカツカレーさんの企画で、1位と4位を獲得されたきのころさんの「書き出し文」の続きを書くというもの。

読んだ瞬間に「わー。私には無〜理〜」となりました。ミステリーを読んでも、いつも犯人もトリックも全然当てられず、「やられた〜」と言ってばかりの私には、ハードルが高すぎます。いろんな人の作品を読んで楽しむにとどめておこうーっと。

一旦は、そう思ったのですが、道を歩いていても、お風呂に入っていても、仕事をしていても、ついつい続きを考えている私がいました(仕事せえ)

別にミステリー風味にしなくても、SFチックにしなくても、私なりに続きを考えたら、ええのかも、っとちょっと欲が出てきました。

いやあ、こういうのって、参加することに意義がありますものねー。自分なりにちょっくらやってみますかー。

私が続きを書こうとしているのは、きのころさんが1位を獲得されたこの「書き出し文」です。

今朝、郵便受けに入っていた一通の手紙。
差出人の名前はない。
胸騒ぎに、震える手で封を開ける。
中に入っていたのは、
途中まで書かれた私の遺書。
覚えはない。
だが、間違いなく私の筆跡だ。
日付は明日になっていた。

きのころさん

【続き】
「何をしているんだ!」
苛立った夫の声に「はっ」と顔を上げる。

スーツケースを下げた夫が呆れ顔でこちらを見ている。
「全く。夫が今日から大事な出張だっていうのに、のんびり手紙なんか読んでいる場合か!」
「ごめんなさい。実は明日の私から遺書が来てたの。びっくりして」

「はあああ?」
夫はことさらに顔を歪めて、私を見下すように目を細めた。歪めた口で、
「君はいつまで文学少女でいる気だ! 全く呆れたお嬢さんだな!」
そう言って、大きな音を立ててドアを閉め、夫は行ってしまった。

私の父は大会社の社長だ。夫は父の部下で、エリート社員。私は「お嬢さん学校」として有名な○✖️女学院大学を卒業してすぐに、父の勧めで夫と結婚した。

母は、庶民の出だったため、父方の祖父母にいびられてよく隠れて泣いていた。そんな母は私をどこへ出しても恥ずかしくない「令嬢」に育てようと必死になっていた。もとより父も一人娘である私を「お嬢様」に仕立てたがっていたのはいうまでもない。

幼稚園へ通っている頃、母にこんなことを言ったことがある。

「わたくし、大きくなったら、怪獣のエレキングになりたい!」

母は、「まあ、麗子さんは面白いことを言うのね」と笑いかけたが、すぐに真顔になって、「でも、深窓の令嬢は、そんな希望は持たないものよ。今後は、『大きくなったら綺麗なお嫁さんになりたい』とおっしゃいなさい」

その後の私は、両親の期待に応えるために、お勉強もお茶やお花などの習い事も、お手伝いも、一所懸命に励んだ。なんでも言うことを聞いて、両親の期待に叶う「お嬢様」になれるように努めた。

たった一度だけ、両親に逆らったことがある。大学に進学する時に、「国文学」を専攻したことだ。両親は「家政科」に入ることを望んだが、文学好きの私は、どうしても「国文学」にこだわった。

「まあ、いいさ」
結局、父が折れた。
「○✖️女学院を卒業していることに価値があるんだ。学部や学科は、世間の人はそれほど気にしないだろう」

夫は最初はいい人に思えた。入婿の形で、私の両親とも同居してくれたし、最初は優しかった。

しかし、まもなく、母が亡くなり、父に愛人がいることがわかり、開き直った父が愛人の元へ入り浸るようになった頃、次第にその本性を現すようになった。

大人しくて、お人好しの私を次第に馬鹿にするようになり、仕事のストレスを私にぶつけるようになった。
さらに夫にも愛人がいるらしいことが分かってきた。

夫は私を愛していない。私が父の娘だから結婚しただけだ。世間知らずで臆病な私が、この家を出ていくことも夫を追い出すこともできないと、たかを括っているのだ。

だだっ広い家に一人でいる寂しさを紛らわすため、私は好きな文学にのめり込んだ。本を読むだけでは飽き足らず、原稿用紙に小説を書き始めた。

夫は、私が文学に熱中することを快く思わなかった。ある時、いつも以上に機嫌が悪かった夫は、私が大切に書き溜めた原稿用紙をビリビリに破いて捨ててしまった。

なぜ、私のささやかな楽しみさえ、奪おうとするの? 私が何をしたって言うの? 

今日だって、本当に出張なのかどうだか。本当は愛人と旅行に行っているのかも知れない。

今朝の冷たい言葉と冷たい態度を思い出しつつ、ベッドに身を投げ出して、思い切り泣いてみた。「これが私の人生なの?」

ふと、見ると、私の傍らに「エレキング」が立っていた。人間サイズだ。

「ワイみたいになりたいと言うてくれておおきに!」
「ワイみたいな姿になるのは難しいし、電気ビリビリ出すのも難しいけど、ビリビリするくらいのエネルギー、ほんまのあんたにはあるはずやで」
「怒りたい時は、怒ってもええんやで」
「暴れてもええんやで」
「自分に正直になってもええんやで」

はっ、と身を起こす。いつの間にか眠っていたらしい。もちろん、エレキングは消えていた。「夢かあ」

私は、「エレキングになりたい」と願っていた子供の頃を思い出していた。あの頃は、もっと自分の感情に素直だったなあ。

私は、自分の感情に長い間、蓋をしていたことに気づいた。私が今までしてきたことは、「自分のしたいこと」ではなく、「両親が望むこと」ではなかったか。

でも、母はもう亡くなった。父の資産のおかげで物質的に豊かに暮らせたことは感謝しているが、母や私に内緒で愛人を作っていたのも事実だ。そこまで、父の期待に沿うことばかりを考えなくてもいいのではないか。

今なら、生まれ変われる。

翌日、私は、必要最小限のものをかき集めて、カバンに詰め込んだ。この家を出て行こう。そして、「新しい自分」を生きよう。

出ていく直前、夫に手紙を書いた。書きあぐねていると、横にまたエレキングが立った。

「早よ書かな、あんたの旦那の新幹線、品川に着いたで」
「えっと、まだ、書きかけなんだけどな」

エレキングは、手紙を指さして言った。

「その手紙、ホンマに旦那に読んで欲しいんか?」

えっ?

「もっと読んで欲しい人、おるんとちゃうか?」

「いるわ! 昨日までの私!」

昨日までの私は、死ぬ。そして生まれ変わるのだ。確実に生まれ変わるために、今までの私と決別する遺書として、私は、昨日の私にこの手紙を届けたい!

「早よせな、旦那、帰ってくるで」
エレキングは私の書きかけの遺書を手に取った。

「麗子はん、あんた、今日から生まれ変わるんやろ。『え麗子んぐ』の怪獣名をワイからプレゼントするわ」

「エレイコング…。いい名前だわ」

私がつぶやくと、エレキングは、
「ほな、この手紙、昨日のあんたに確実に届けときまっさ」
と言いながら、ニッコリと笑った。

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