遠くなる北野天満宮
台風が去るとともに向かったのは、京都国立博物館である。特別展「北野天神」の刀剣乱舞コラボが目的だ。
新幹線の中からすでに刀剣乱舞コラボがあり、コラボ専用となったワイヤレスイヤホンを装着しコラボボイスを楽しむ。もはや新幹線のお供と化してきたコラボボイスだ。
1人旅というと寂しい、一緒に行く人がいない人という目で見られることがある。しかし実際はこうだ。スマホ片手に景色を眺めながら、コラボボイスを聴く。1度聞いただけでは足りず、もう1度。なんなら帰りも京都に背を向けながら聴く。
新幹線でコラボボイスを楽しんでホテルに荷物を預けたら、京都国立博物館へ向かう。時間が早かったからか、人も少なめだ。
まずはコラボパネルをパチリ。館内の前田珈琲でコラボメニューがあったが、こちらは10時からということで先に展示の方へと向かう。音声ガイドは2種類あり、迷わず刀剣乱舞コラボを選択し、いざ展示へ。
北野天満宮といえば、菅原道真である。道真といえば太宰府天満宮、応天の門(菅原道真と在原業平がバディを組む漫画)と連想ゲームのように思い出す。
展示の中にあった毛抜形太刀を見れば、去年の夏に大宰府を訪れたことが鮮やかによみがえる。
きっと次に毛抜形太刀を見るときには「きゅーはく(九州国立博物館)の同コラボで見て、北野天神でも見た」という記憶が加わるのだろう。
そしてこの特別展の目玉だと思われる「北野天神縁起絵巻(承久本)」がやっぱりすごかった。「北野天神縁起絵巻」は菅原道真の生涯と伝説を描いた絵巻である。会期中に巻替があったので、全部を見ることはできなかったけれど、全部見てみたかった。
だけどさすがに展示が変わるたびに遠征するわけにはいかない。美術館のように京都会場・東京会場と全国を回ることはできないのだろうか。いや、遠征の口実がなくなるから駄目だ。次に展示される機会を待つしかない。
この北野天神縁起絵巻を元に後に作られた「光起本」では左右が反転しているという説明があった。ふと舞台刀剣乱舞(刀ステ)の再演での初演との左右反転を思い出す。刀ステの反転とは関係がないだろうなと思いつつ、展示の合間に刀剣乱舞を感じてしまう。
ゲームから文化財の方に足を踏み入れ、文化財を見て歴史を感じては刀剣乱舞に戻る。奥深いゲームである。
「北野天神縁起絵巻」の奥深さに圧倒され、見るべきものを見たような気分にさせられるが、まだ終わりではない。まだ髭切と膝丸を見ていない。髭切と膝丸にたどり着くまでに展示は続くのだが、「弁慶・昌俊図絵馬」の大きさも圧巻だ。この絵馬も北野天満宮所蔵だ。
北野天満宮には何度かお参りさせていただいているが、こんなにいろいろ持っているところだとはつゆ知らず。知っているはずの北野天満宮が、急に遠く感じる。私の知っている北野天満宮に関する情報と言えば主祭神が菅原道真、髭切を所蔵し、もみじが美しいの3点であった。
それがこんなにも文化財を有しているとは。この展示を見た後、北野天満宮まで足を延ばす人もいるだろう。無論、私もその1人だ。
髭切と膝丸は展示室の中、個室のようなところで静かに光を放ってたたずんでいた。美術品に「余裕たっぷり」という言い方はおかしいが、余裕たっぷりな感じで中央に鎮座していた。
源氏の重宝が放てる空気と言うのだろうか。ここだけほかの展示室とは空気感が違うような気がした。引き寄せられるようにして展示室へ入る。
こちらは写真撮影がOKであった。昨年、東京国立博物館で行われた「大覚寺展」で2振を見て以来である。
部屋の中には先客が2、3人しかいなかったため、じっくり見てから写真を撮ろうと思っていたら、続々と人が増え撮影会が始まり、慌てて写真を撮ることに。写真を撮ってから2振に関する解説や展示をじっくりと見る。かつての所有者たちを示した資料もあり、源氏の刀であったことを改めて確認。
非常に見応えのある、満足度の高い展示であった。
展示を見終えたら、おなかが空く。コラボメニューを食べるべく、館内の前田珈琲へ。すでに並んで待っている方々の姿があり、名前を書いてしばし待つ。
店内に入って注文したのは「白のレアチーズ」と「陽光のスカッシュ」だ。陽光のスカッシュは炭酸がきつくなく、レモンがさっぱりしていて飲みやすかった。白のレアチーズも口当たりがよくあっという間に完食。さすがに量が多いかと思い諦めたものの、いざ完食してみれば膝丸コラボのカレーを注文してもよかったかもしれないとちょっと後悔。
ミュージアムショップでコラボの切符風記念カードを交換。コラボファイルは売り切れていたので、藤の香りの御財布香を購入。
そして次の目的地へ向かうべく、先を急いだ私はすっかり忘れていた。
京都国立博物館到着のコラボボイスを聴くことを……!
しっかり者の同行者がいれば覚えていてくれるかもしれないが、これが1人旅の怖いところである。
それでも私は1人で旅に出る。特別展で興味を持った先に、予定を変更して行くことも可能だから。
だから翌日、急遽予定を変更して北野天満宮へ行くことになる。
