見出し画像

「差がある」と認めた日、彼はライバルであり目標になった

私は中学受験に失敗し、地元の公立中学へ進学しました。
自分の人生の中でも苦い思い出です。

あのときの悔しさは、今でも完全に消えたわけではありません。ただ、その選択の先で、生涯の友人と呼べる仲間に出会えたこともまた、確かな事実です。

そんな中学生活の中で、同級生の間で時折名前が挙がる人物がいました。

「赤倉 一行」

直接会ったことはありませんでしたが、不思議と印象に残る存在でした。

私と同じように中学受験を経験し、彼は有名私立へ進学していきました。もし結果が違っていたら、同じ教室にいたかもしれない。そんな“もう一つの可能性”を感じさせる存在でもありました。

話に聞く彼は、サッカーが好きで、Jリーグの下部組織でプレーしているとのことでした。常にストイックで、どこか達観している人物。

少し遠い。それでも、確かに気になる存在でした。

「いつか会ってみたいな」と思いながら、時間だけが過ぎていきました。


初対面で面食らった日


彼と初めて会ったのは、社会人になって数年が経った頃でした。

私が主催していたフットサルに、共通の知人を通じて彼が参加してくれたのです。ようやく会えたその存在は、どこか現実味が薄く、憧れのスポーツ選手に会うような感覚でした。

その帰り、皆で食事に行きました。

特別な会話はありませんでした。彼とは席も離れていて、ほとんど言葉を交わさないまま時間が過ぎていきました。

けれど、ある瞬間、場の空気が変わりました。離れた席にいた彼が、ふとこちらを見て、何の前触れもなく言ったのです。

「マサヤは保険屋、続けるんでしょ?」

あまりにも突然で、私は一瞬、言葉を失いました。

「あ、うん、続けるよ」

そう答えたものの、その先が続きませんでした。

なぜそんな質問を急にするのか。一体何を考えているのか。そもそも、自分はこの仕事をどう捉えているのか。

普段であれば適当に答えているはずの問いに、次につながる言葉が何も出てこない。

その瞬間、彼と私の間に、思考の深さの違いを感じずにはいられませんでした。自分はまだ“考えが浅い”という事実を突きつけられた気がしました。


言葉の奥にあるもの


その後、彼とは何度か顔を合わせるようになりました。

フットサルをしたり、少人数で食事に行ったり。少しずつ距離は縮まっていきましたが、同時に、ある感覚もはっきりしていきました。

「赤倉は、やっぱり他と違う」

彼の言葉には、いつも奥行きがありました。

何気ない会話であっても、ただの感想で終わりません。物事を多角的に捉え、自分の中で咀嚼しきったうえで言葉にしていることが伝わってきます。

そこには“なんとなく”がありません。考え抜いた末に言葉にしているという確かさがあります。

同級生から聞いていた評価は誇張ではありませんでした。むしろ、それ以上。

だからこそ、彼は余計に際立って見えました。


見えてしまった「差」


正直に言えば、私は彼と自分を比べていました。
そして、はっきりと感じました。「ああ、これは差があるな」と。

思考の深さ。積み重ねてきた時間。物事に向き合ってきた密度。そのどれを取っても、簡単に埋まるものではないと感じました。

一度、こんな質問をしたことがあります。

「保険屋にとって大事なことって何だと思う?」

彼は少し考えてから、こう答えました。

「保険以外で価値を出せているかどうか、じゃない?」

つまり、先にどれだけ“ギブ”できているか。その信頼の上に仕事が成り立っているかどうか、ということでした。

その言葉を聞いたとき、自分の立ち位置が少しだけ揺らぎました。

私は保険という枠の中だけで勝負しようとしていなかったか。その問いが、長く胸に残りました。


憧れを超えるために


それでも、「すごいな」で終わらせたくはありませんでした。「雲の上の存在」として距離を置いた瞬間に、自分の可能性まで閉じてしまう気がしたからです。

自分より優れていると感じる人間がいる。それは、動かしようのない事実です。

しかし、それは思考を止める理由にはなりません。彼に“追いつける”かどうかは分かりません。正直なところ、難しいのかもしれません。

それでも、“追い続ける”ことはできます。そう思えたとき、不思議と心が軽くなりました。

私はよく、2023年WBC決勝戦の円陣で大谷翔平選手がチームメイトにかけた有名な言葉「憧れるのをやめましょう」を思い出します。

私にとって彼は、いつしか「追いかける背中」になっていました。


静かに変わったもの


彼と出会って、劇的に何かが変わったわけではありません。それでも、一つだけ確かに変わったものがあります。

「基準」です。

どこまで考えるのか。どこで満足するのか。そのラインが、少しだけ引き上げられました。

彼の存在は、自分の現在地を測る物差しであり、自分自身に問いを投げ続けるきっかけになっています。

「お前はここまでの人間なのか?」と。


自分の立ち位置で、前に進む


あのとき、言葉を失った自分は、今もどこかにいます。
けれど同時に、あの瞬間があったからこそ、考え続けている自分もいます。

彼との差は、確かにあります。
そして、それは簡単には埋まらないのかもしれません。

だからこそ、「自分にしかできないこと」を磨き続けるしかありません。
どこまで辿り着けるかは分かりません。
それでも、進み続けるしかありません。

失敗も過去も、すべてをどう捉えるか。
中学受験の失敗も、劣等感も、今の自分を形づくる一部としてポジティブに引き受けられるか。
そこに、自分なりの可能性があると感じています。

明るさや前向きさは、特別な才能ではないのかもしれません。
けれど、それを磨くことで、「宮崎に会うと何だか元気が出るんだよな」と思ってもらえるかもしれない。

そんな「自分にしかできないこと」をどこまで突き詰められるかが、今後の私の人生を左右するのだと思います。

今日も私は、自分なりのやり方で、人生と仕事に向き合っています。
ライバルのあの背中を、見失わないために。


さいごに


あなたには、追いつきたいけれど、なかなか追いつけないライバルはいますか?ライバルの存在って、いいものですよね。

そして、振り返れば、こうして赤倉と出会うきっかけをつくってくれたのも、何気ない顔でその場をつないでくれていたのも、中学時代からの親友でした。

赤倉という良きライバルと出会うきっかけをくれた親友・七海よしき(よっちゃん)にも、心から感謝しています。


赤倉一行くんのプロフィール


・浅野中学(横浜FマリノスJr.追浜)
・浅野高校(川崎フロンターレユース)
・京都大学経済学部(京都大学体育会サッカー部)
・三菱商事株式会社(食肉トレーディング業務、受渡・契約担当)
・外資系金融機関(個人・法人営業)
京都紫光クラブ株式会社(代表取締役社長)

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集