【心の城・百鬼夜行録 番外編】 回復期の城主 〜揺らぎの路地〜 四
◇回復期・一ヶ月後(完全復帰)◇
関羽と諸葛亮の指導のもと、
一ヶ月間、しっかりと休養を取った城主。
今夜は、以前よりも元気よく宣言をする。
🦎🎀「完全回復!!
今日はちゃんと百鬼夜行に行く!!」
関羽「……うむ。無理せぬ程度に、だぞ」
諸葛亮「そうですよ。絶対にリアン殿から離れず、
七尾の毛皮から出ないと約束してくださいね」
ちゃんと送り出してくれる関羽と諸葛亮。
城主がそれに、きちんと返事をする。
🦎🎀「無理しない!
リアンから離れない!七尾の毛皮から出ない!」
張飛「毎度、返事だけはいいんだからよ。
ちゃんと見てるからな」
張飛が少し呆れ顔で、でも楽しそうにそう言った。
🦎🎀「今日は大丈夫だもん!」
🌙🦊「それじゃあ、中にはいって」
🦜🎀「行くよ」
久しぶりの百鬼夜行の道に、
城主の目が好奇心でキラキラと輝く。
🦎🎀「わ〜い!久しぶりだぁ。
……あれ?なんか変な感じする」
🦜🎀「どうしたの?」
城主が首をかしげながら言う。
🦎🎀「なんかね、違う場所に来ちゃった感じするの」
🦜🎀「違う場所?」
🌙🦊「そうだね。なんか、いつもと雰囲気が違う」
張飛「そうか?」
劉備「それほど変わりがない気がするが……?」
あたりを見回す面々。
すると、ぐにゃりと空気が歪み、
音が一瞬だけ遠くなった気がした気がした。
🦎🎀「なんか、気持ち悪い!」
🦜🎀「歪んだね」
🌙🦊「城主、しっかりつかまっててね」
不思議な歪みを感じた城主たちを、
張飛と劉備がキョトンとした顔をして見ている。
🦎🎀「二人とも、何も感じないの?」
張飛「特に何もないな」
劉備「ああ。いったいどうしたのだ?」
二人の様子に、城主の胸に不安が広がる。
🦎🎀「道、間違えたのかな?」
🦜🎀「一本道だったはずだけどね」
🌙🦊「何かが重なったのかもしれないね」
いつの間にか、張飛と劉備の姿が消えていた。
🦎🎀「二人がいないよ!」
🦜🎀「少し、このあたりを回ってみようか」
🌙🦊「そうだね」
あたりを見回し、慎重に進む三人。
ーーすると、隣にポッと明かりが灯る。
城主が横を見ると、そこには提灯が吊られていた。
あの話す提灯ではない。普通の提灯だ。
ポッと灯った明かりが、点々と暗闇だった道を照らす。
🦎🎀「この明かりに沿って行けばいいのかな?」
🦜🎀「それしかないね」
明かりに沿って歩いた先では、お祭りが行われていた。
不思議な衣装をまとった者たちが、
思い思いに踊り、歌い、笑っている。
そして、その音がすべてズレて聞こえる。
一つ目「おや、迷い人かい?」
二つ目「本当だ。久しぶりに見たよ」
三つ目「今日は祭りだから、一緒に楽しもう!」
トカゲと鳥と七尾の白狐の一行を、
全く気にすることなく話しかけてくる者たち。
みんな笑顔を向けているようで、
こちらを見ていないような、
そんな不思議な視線を向けてくる。
🦎🎀「せっかくだから、楽しもう!」
🦜🎀「あ、城主!出ちゃだめ!」
🦎🎀「はい」
🌙🦊「あ、油揚げ!」
🦜🎀「七尾!走っちゃだめ!!」
🌙🦊「はい」
飛び出そうとする二人を止めるリアン。
そんなリアンの苦労とは裏腹に、
お祭りは盛り上がっていた。
変なステップで踊る者たち。
その中に、見知った影を見つける。
🦎🎀「張飛!!」
張飛「おう、城主!なんか、楽しいな!!」
🦎🎀「どこに行ってたの?探したんだよ!」
張飛「ずっとここにいたぞ?」
張飛はそう笑うと、また踊りの輪に入っていく。
🦎🎀「なんか、……変」
遠くで踊っている張飛の影が、
他の者達と同化していく。
劉備「城主、ここにいたのか。探したのだぞ」
🦎🎀「あ、劉備……、って、何をそんなに持ってるの?」
劉備「そこで押し付けられてしまってな」
劉備は両手いっぱいに、
うさぎのぬいぐるみを抱えていた。
前が見えないほどに抱えながらも、笑っている劉備。
🦎🎀「ねえ、それ、どうして持ってるの?」
劉備「置いてしまったら、かわいそうだろう?」
🦎🎀「でも、お店に返してきたほうがいいと思うよ。
前、見えないし」
劉備「それはできないな。
これは私が持たなければならないのだ」
劉備はそう言うと、前が見えない状態だからか、
よろよろとおぼつかない足取りで、人混みに消えていく。
🦎🎀「ねえ、やっぱりここおかしいよ」
🦜🎀「出口を探さないとね」
🌙🦊「あっちに提灯の明かりが続いているよ」
祭り会場の更に奥へ、提灯の明かりが点々と続いていた。
城主たちはそれを頼りに祭りの会場をあとにする。
提灯の明かりに導かれた先にあったのは、
小さな広場だった。
誰もいない。
音も聞こえない。
祭りの喧騒も、聞こえない。
静かなそこには、
月明かりだけがそっと降り注いでいた。
🌙🦊「ここは心地良い場所だね」
🦎🎀「落ち着く場所だね」
🦜🎀「そうだね」
三人がその広場でしばらく佇んでいると、
ガサガサッと草をかき分ける音が聞こえ、
次の瞬間ーー
張飛「城主!!こんなとこにいたのか!」
劉備「なぜ、こんなところにいるのだ?探したのだぞ」
二人の声が静寂を破って、あたりに響いた。
🦎🎀「二人こそ、どこに行っちゃってたの!?」
張飛「急にいなくなったのは、そっちだろうが!」
🦎🎀「ずっといたもん!張飛、踊ってたじゃん!!」
張飛「踊ってねえよ!急にお前らがいなくなったから、
城に連絡して全員で探し回ってたんだよ!」
🦎🎀「……そうなの?」
劉備「そうだ。だが、無事で良かった。
歩いていたら、急に城主たちの姿が見えなくなって、
どれだけ肝が冷えたか」
🦜🎀「とにかく、城に戻ろう」
劉備「そうだな」
それからみんなと合流して、城に戻った城主たち。
何があったかを話すと、
諸葛亮が白羽扇で口元を隠しつつ、
少し考えながら口を開いた。
諸葛亮「百鬼夜行とは別の者たちが住む場所へ、
迷ってしまったのかもしれませんね。
あの辺りは、少しつながりやすい場所ですから」
🦎🎀「つながりやすい?」
諸葛亮「ええ。百鬼夜行で妖怪たちが集まることで、
そこに別のものが引き寄せられて、
異界と接続しやすい状態になっている。そう考えられます」
🦎🎀「怖いとこ?」
諸葛亮「そうですね。
場所によっては戻ってこられないこともありますよ」
🦎🎀「……!!」
ギュッとリアンの羽根にしがみつく城主。
そして、そっと羽根を寄せるリアン。
🦎🎀「戻ってこられて良かった。
ありがとう、探してくれて」
城主の言葉に、緊迫した空気が少し緩む。
その時、司馬懿が口を開いた。
司馬懿「道がわかったのはなぜだ?」
🦎🎀「提灯の明かりが灯っていたの」
司馬懿「……提灯?」
諸葛亮「ふふ。提灯さんは、
もしかしたら城主の道を
ずっと照らしてくれているのかもしれませんね」
城主は、くるりと回っていた提灯さんを思い出す。
あの時くれた提灯の明かりが、
リアンとの記憶も、
恐ろしい場所からの帰り道も照らしてくれた。
🦎🎀「今度あったら、お礼言わないとだね」
諸葛亮「そうですね」
久しぶりの百鬼夜行は、少し怖くて、
でも少し温かい気持ちを城主に残して、
静かに過ぎていった。
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前回の話しはこちらから
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