風まかせ文芸部|炭酸
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よろしくお願いします。
お題:”炭酸”がテーマ
締切:8月10日(月)23:59
夏の終わり、放課後の屋上には、不揃いな三人の影があった。
怪我で部活を辞めた元陸上部のリク。
親の期待と進路に押し潰されそうなアオイ。
ヘラヘラ笑いながら密かに音楽の夢を追うソウタ。
ソウタが自販機で買ってきた格安のサイダーを、二人に放り投げた。
「ほら、奢り」
プシュッと、硬質な音が夕暮れの空気に響く。
「炭酸ってさ、なんか今の俺たちに似てね?」
ソウタがサイダーを一口飲んで言った。
「は? 何言ってんだよ」
リクが呆れたように鼻を鳴らす。
「だってさ。感情を溜め込みすぎると破裂しそうになるし、かといって放置したら気が抜けてただの甘い水になるじゃん」
アオイは膝の上でペットボトルを強く握りしめていた。
「……開けるのが、怖い時もあるよ」
アオイの声は小さく震えていた。
模試の判定、膨らむ不安。
内側の圧力が限界に近付いてるのを自分でも感じていた。
リクはその横顔を静かに見つめた。
走れなくなった時、情熱がすべてなくなってしまったような感覚を味わい、今の自分は、すっかり気が抜けたサイダーそのものだなと思っていた。
「爆発したっていいだろ」
リクがボソッと言った。
「え?」
アオイが顔を上げる。
「キャップを開けて泡が吹きこぼれたって、別に終わりじゃない。炭酸が抜けるのをじっと待つより、一気にシュワって弾けたほうが、ずっとマシだ」
ソウタが嬉しそうに笑い、持っていたボトルをわざとシャカシャカと振った。
「ちょっと、やめなよ!」
アオイが焦って声を上げる。
ソウタはニヤリと笑うと、キャップを少しだけ緩めた。
シューッと音を立て、抑えきれない気泡が手元に溢れ出す。
「溢れたら、拭けばいいんだよ。カッコ悪くたってさ」
そのバカバカしさに、アオイの緊張の糸がふっと緩んだ。
アオイはゆっくりと自分のボトルを開けた。
微かな刺激とともに、弾ける気泡が夕日に透けてキラキラと輝く。
「……なんか、喉に染みるね」
「それが青春の味ってやつだろ」
ソウタが胸を張る。
茜色に染まる空の下、冷たいサイダーを飲み干す。
不器用で、溢れそうで、でも確かにここにある僕らの時間。
喉を突く微かな刺激が、僕たちの止まりかけた未来を、静かに動かし始めていた。
AKIRA / FEVER IN JAPAN
