「形容詞のable」と「接尾辞の-able」の微妙な関係
■形容詞"able"と、接尾辞"-able"は同じものか?
英単語の後ろに"-able"がついていると、「~できる」という意味になると思っている人は多いと思います。
大多数の人は、中学生の頃に"be able to"という表現を習っているので、形容詞"able"を単語の後ろにくっつけているという感覚を持っていますね。
なんなら、「動詞の後ろに接続する接尾辞"-able"は、形容詞"able"に由来する」と思っているのではないでしょうか。
ところがどっこい、それは違います。
指導者としては、"-able"は形容詞"able"から派生したものではないので、なんでもかんでも「~できる」と解釈してはいけない、ということを正しく教えることが必要です。
まあそんなこと知っているよ、という方には新情報が少なくて申し訳ないのですが、私が自分の思考を言語化することによって整理していくのにしばしお付き合いください。
一緒に形容詞"able"と、接尾辞"-able"の成り立ちについてお勉強・再確認していきましょう。
■形容詞"able"の語源
形容詞"able"は、ラテン語の「扱いやすい・手ごろな」という意味の形容詞、"habilis"の対格形"habilem"が語源です。
これは、ラテン語の動詞"habere"「~を持つ;携えている」に由来します。
この形容詞"habilem"が、古フランス語を経由し、時を経て"able"に変化していきました。
形容詞"able"は、語源をたどれば最初から形容詞なのです。
■接尾辞"-able"の語源
対して、主に動詞と結合して「〜する性質・可能性をもつ」という意味を付加する"-able"ですが、これは、ラテン語の形容詞を作る接尾辞”-abilis”に由来します。
接尾辞"-able"は、語源をたどれば最初から接尾辞なのです。
形容詞"able"から派生したのではありません。
"-abilis"は第一変化動詞、つまり「a幹動詞」に接続して形容詞を作りました。このラテン語の、「a幹動詞」に接続して形容詞を作る接尾辞"-abilis"が、英語の形容詞を作る接尾辞"-able"に繋がりました。
まずは英単語"memorable"の語源について確認してみましょう。
ラテン語 "memorare"「思い出させる」+"-bilis"
➡"memorabilis"「記憶すべき・注目すべき」
"-abilis"であるのは、"memorare"が"-are"で終わる"a幹動詞"であるため。
ラテン語の形容詞を作る接尾辞にはもうひとつ、"-ibilis"が存在しますが、これは「a幹以外の動詞」、つまり「e幹動詞」「i幹動詞」などに接続します。
接続する動詞の活用タイプによって"-abilis"が後続するのか、"-ibilis"が後続するのか変わるのです。
("-abilis"も"-ibilis"も究極的には"habere"に遡るので、"habilis"とは母親"habere"を同じとする、いわば兄弟関係に当たります)
なお、別の動詞の場合も見てみると、「触れる(=touch)」という意味の"tangere"は「a幹動詞」ではなく「e幹動詞」なので、"tangibilis"「触れることができる」というように、"-ibilis"が接続します。
("tangibilis"は、英単語"tangible"「触れることのできる」の語源。)
"-able"で終わる英単語の語源となる語が、たまたま「a幹動詞」に形容詞を作る"bilis"が後続した単語だったために、見かけ上"-abilis"➡"-able"というように見える形になっただけなのです。
元のラテン語までさかのぼって考慮すれば、もとの動詞の活用タイプによって"-abilis""-ibilis"の2種類のうちのどちらか後続する可能性が存在しました。
現代英語においても、上述の"memorable"と"tangible"のように、"-able"と"-ible"の2種類が「形容詞を作る接尾辞」として生存しているのです。
そのうちの"-able"という片方だけを取り出して、たまたま形が同じであった"able"と同一視してはならないのです。
派生元が同じなので、両方とも「できる」と言う意味を内包しているのが難しいところですが。
■結果から逆成的に成り立ちを捏造してはいけない
以上のように、"a"もしくは"i"が形容詞を作る"-bilis"の前にいたという理由から考えれば、たまたま同じ外見になってしまった形容詞"able"と、接尾辞"-able"を同一視して、「形容詞"able"が動詞の後ろにくっついて『できる』という意味を付加する、という解釈・説明は間違っている」ので十分注意しなければなりません。
そもそも形容詞"able"の持つ、「できる」という意味に囚われれば、"confortable"「快適な」や"fashionable"「おしゃれな」といった「誠意室・評価」を示す単語たちの意味が通りませんね。
もう一度繰り返しますが、接尾辞"-able"は、あくまでも形容詞を作る接尾辞であり、形容詞"able"とは語源的には親子関係は持ちません。
英語の形容詞を作る接尾辞"-able"は、形容詞"able"をそのままくっつけたものではなく、"-ible"という対になる形も存在する。そしてこれらは「動詞から『〜する性質・可能性をもつ』形容詞を作る接尾辞である」というように理解しておくことが重要です。
ラテン語をすこし齧ったおかげで、英語の"-able""-ible"の成り立ちを深く理解できた感じがします。
英語指導者向けにもう少し踏み込んだ説明をした記事はコチラ。

なんかめんどくさいおじさんだと思われますよ
