熱湯行っとけ~
※これまでのお話。
熱湯行っとけ~
「ビードロ吸う」のメンバーは、YouTubeの企画でレコーディングの様子を撮影し、最後にライブをやることにした。
彼らは活動の限界に達していた。
バンドを始めたばかりの頃は楽しかった。四人でいれば何をやっても楽しかった。
でもだんだんとその楽しさは薄れ、それぞれがそれぞれのやりたいことを望むようになっていた。
そんなムードを察して「ボール任しとけ」は「まじかよミステリーツアー」を企画して四人の仲を深めようとしてみたのだが、それもあまり効果がなかった。
テーマは原点回帰だった。
四人の原点に戻って、楽しくセッションをして、昔のように仲良くやりたかった。
ゲットバック!
即興演奏で曲つくりをしていったが、なかなかうまく行かなかった。
演奏中、ずっとビデオを回していた。
「ボールまかしとけ」に「障子張りする」は不満を漏らした。
バンドの曲はいつも、「ボール任しとけ」と「ジャム例の」のものばかりが採用されて、「障子張りする」の曲は採用されなかった。
「ボール任しとけ」はピアノを弾きながら、「こんなメロディーを思いついたんだ」と言って弾き始めた。
「僕の母親をイメージしたんだ。僕が辛いとき、僕の母はいつもこう言っていたんだ。『なすがままにしなさい。LET IT BE』。僕はつらいとき、いつもこの言葉を思い出すんだ。そうすると、目の前が明るくなって、光がさしてくるように心が解放されるんだ」
「ボール任しとけ」はピアノを弾きながら、ハミングした。
「まだ詩ができていないんだ。イメージをメロディーにしたんだ」
そう言って、「ボール任しとけ」はピアノを弾き続けた。
メンバーのみんながその美しいメロディーに浸っていた。
しかし「障子張りする」がいきなり笑い出した。
「こいつは何を笑っているんだ?」という表情をして「障子張りする」を見た。「ボール任しとけ」はピアノの演奏を止めた。
「ごめん、ごめん。なんだかさ、このメロディーを聴いていたら、どうしてもそれが「熱湯行っとけ~」に聞こえてならないんだよ。そう思ったらもうそれが頭から離れなくて、「熱湯行っとけ~、熱湯行っとけ~」ってリフレインしちゃって」
そう言って「障子張りする」が笑った。
「確かにそう聞こえるな」
と「ジャム例の」が言った。
「うん、そうだな」
と「リンゴ擦った」も同意した。
「ボール任しとけ」は不満そうな表情をした。
「熱湯行っとけ~、熱湯行っとけ~♪」
と「ジャム例の」が歌った。
「障子張りする」と「リンゴ擦った」も一緒に唄った。
三人で、「熱湯行っとけ~」を合唱した。
「ボール任しとけ」がバン、とピアノの鍵盤をたたいた。
「いい加減にしてくれよ! いい曲が台無しじゃないか!」
「でもそう聞こえちゃうんだもの。それが頭から離れないんだもの」
「ボール任しとけ」は怒って部屋を出て行った。
セッションの中で、ある程度の曲が完成した。
そしていよいよ最後、スタジオライブのときがやってきた。
スタジオを借りて、観客を入れて、ライブ演奏をするのだ。
ビルの屋上で演奏しようという案も出たが、今はコンプライアンスがうるさいので、警察沙汰はやめた方が良いとの意見であった。
スタジオに入ると、観客が集まっていた。
だけどもそこにはステージも楽器も無かった。
そこにあったのは、熱湯風呂だった。
「さあ、熱湯コマーシャルの時間がやってきました。今日、熱湯風呂に入るのは誰でしょうか?」
「ボール任しとけ」がマイクを持ってそう言った。
他の三人は目を丸くして「ボール任しとけ」を見た。
まさかのドッキリ?
「誰も入んないんだったら、僕が入るよ」
と「ボール任しとけ」が言って手をあげた。
「それだったら僕が入るよ」
と「ジャム例の」が手を挙げた。
「いや、僕が入る」
と言って「リンゴ擦った」が手をあげた。
「じゃあ僕が入る」
と「障子張りする」が言った。
「ボール任しとけ」と「ジャム例の」と「リンゴ擦った」が「どうそどうぞ」と言って「障子張りする」に譲った。
「ボール任しとけ」があの歌を歌い始めた。
「熱湯行っとけ~、熱湯いっとけ~♪」
「ジャム例の」と「リンゴ擦った」もそれに加わった。
美しいハーモニーで美しいメロディが歌われた。
会場の観客も一緒になって合唱になった。
「障子張りする」は洋服を脱いで「熱湯風呂」に入った。
言うまでもないが、「びーどろ吸う」はこのあと解散した。
おわり。
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「謎解きはディナーの後に、みたいに言うな!」