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レビ人の組(mishmarot:ミシュマロット)の原点(1回目)――幕屋守護から律法教育、賛美奉仕への変遷と家系原理

*イスラエル聖所奉仕の根幹をなす「mishmarot(ミシュマロット)」制度。本稿では、その他のイスラエルの民のmaamad(マアマド)、祭司のmishmarotに続くシリーズ3回目として、祭司の奉仕以外の広い実務を担う「レビ人」の原像を徹底解剖する。

 偶像崇拝の危機に行われたレビ族の選出、初子奉仕からの交代、そしてゲルション・ケハト・メラリの三家系に課された聖潔保持の任務。民数記からミシュナに至る一次史料を博捜し、移動式幕屋から定住神殿へと至るレビ人の機能変遷を詳らかにする。

 単なる「補助職」という誤解を解き、神の聖潔と民の日常を隔てる「聖なる防波堤」としてのレビ人の実像をご覧下さい。


はじめに:前回の振り返り

 前回は祭司のmishmarot(ミシュマロット)について語った。そこでは次の内容を確認した。

1.ダビデ王は、アロンの息子であるエルアザルとイタマルの両系統の長との合議によって、「くじ」によるローテーションの制度を確立したこと。

2. そのローテーションの担当の組は全部で24あり、mishmarot(ミシュマロット)と呼ばれること。単数形はmishmar(ミシュマル)であること。

3. バビロン捕囚からの帰還後は祭司の家系が激減し、わずか4家族のみという壊滅的な状況に陥ったこと。

4. 大祭司たちは、名前の継承やリストの再編を通じて、聖所奉仕の伝統的制度を守ることに心血を注いだこと。

5. 祭司のmishmarotは地方の代表団であるmaamad(マアマド)と連携し、第二神殿時代の礼拝システムを支える根幹となったこと。

 まだご覧になっていない方は、以下のリンクから参照して下さい。

◉エルサレム神殿における祭司の組(mishmarot:ミシュマロット)の組織構造と変遷:歴代誌からネヘミヤ記に至る家系再編の法理

レビ族選出の歴史的転換点

 今回はその続き、残された最後のピースである、レビ人のmishmarot(ミシュマロット)について解説したいが、それ以前にレビ人についての基本的な理解をしなくてはならない。

 従って今回はレビ人の基本の説明に終始し、彼らのmishmarotは次回扱うことにする。

 まず祭司とレビ人の由来について話したいと思う。

 どちらもイスラエルの12部族の1つレビ族に所属する。モーセがシナイ山にいる間、民は偶像崇拝に陥ったが、レビ族だけはそれに染まることなく、過酷な刑罰の執行にも加わった。そこで、それまではイスラエルの初子祭儀を担当していたのだが、以後はレビ族がこれに取って代わった。

聖所奉仕の移譲

 元々は初子が典礼奉仕していたことについては、口伝律法ミシュナ「Zevachim(ゼヴァヒーム)」14章に書かれている。

 臨在の幕屋が立てられるまで、bamotは許容され、奉仕は初子によってされていた。臨在の幕屋が立てられた時、bamotは禁止され、奉仕は祭司たちがすることになった。

(Zevachim 14:4)

 ここで言う「bamot(バモット)」とは、臨在の幕屋(神殿)における祭壇以外の祭壇である。創世記を見ても分かる通り、シナイ山における律法の授与以前には、族長たちは思い思いの場所に祭壇を築いた。

 それが許容されたのは臨在の幕屋を立てるまでで、以後は禁止された(*厳密に言うとソロモンの神殿が建てられるまで、許容と禁止の時代が入り組んでいます)。この時、奉仕を担当するのも初子からレビ族の祭司になったことを言っている。

 次にこの点に関するトーラ(モーセ五書)から引用する。次のように書かれている。

 見よ、わたしはイスラエルの人々の中からレビ人を取って、イスラエルの人々のうちで初めに胎を開くすべての初子の身代わりとする。レビ人はわたしのものである。すべての初子はわたしのものだからである。エジプトの国ですべての初子を打ったとき、わたしはイスラエルの初子を人間から家畜に至るまでことごとく聖別して、わたしのものとした。わたしは主である。

(民3:12~13)

 レビ族を選んだ理由は上記の通り、金の子牛事件の際の対応による。

 他方でこの事件よりも前に、神は既にアロンとその子孫を祭司として選ぶことを明言している。次の通りである。

 祭司としてわたしに仕えさせるために、イスラエルの人々の中から、兄弟アロンとその子ら、すなわち、ナダブ、アビフ、エルアザルとイタマルを、アロンと共にあなたの近くに置きなさい。

(出28:1)

 従って、時系列に従うと、以下の通りになる。

①アロンとその子孫が祭司として選ばれる。

②金の子牛事件が起こる。

③レビ族が選ばれる。

④臨在の幕屋を立てる

⑤アロンとその子孫が祭司として、それ以外のレビ族はその補助として奉仕を開始する。

 次にレビ族内部の家系について説明する。まずはトーラから。

レビ族の家系について


 レビの子らの名は次のとおりである。すなわち、ゲルション、ケハト、メラリ。ゲルションの子らの氏族ごとの名は次のとおりである。すなわち、リブニ、シムイ。ケハトの子らは、氏族ごとに挙げると、アムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエル。メラリの子らは、氏族ごとに挙げると、マフリ、ムシ。
 以上が、家系によるレビ人の氏族である。

(民3:17~20)

 これによると、まずレビの息子は3人いることが分かる。すなわち、ゲルション、ケハト、メラリの3人である。この3人の息子たちを含めて本文をまとめると、次のようになる。

  1. ゲルション系(2氏族): リブニ、シムイ

  2. ケハト系(4氏族): アムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエル

  3. メラリ系(2氏族): マフリ、ムシ

レビ人の任務分類(1)


 この内、ケハトの氏族アムラムの息子がアロンとモーセである。神はアロンとその息子だけが祭司として奉仕するように定められた。彼ら以外のレビ族全員が「レビ人」であると理解すれば間違いない。

 それぞれの具体的な担当についても、トーラに明記されている。最初に箇条書きにすると、次の通りである。

①聖所の警護と管理:民数記 1章50~53節
②祭司の補助と幕屋の奉仕:民数記 3章6~9節
③聖域の器具への接近制限と連帯責任:民数記 18章2~4節
④裁判の助言と判決への関与:申命記 17章8~9節
⑤賛美と音楽:後代(王国時代に編成)

 順番に見ていこう。まずは①から。

 レビ人には掟の幕屋、その祭具および他の付属品にかかわる任務を与え、幕屋とすべての祭具の運搬と管理をさせ、幕屋の周囲に宿営させなさい。移動する際には、レビ人が幕屋を畳み、宿営する際にはレビ人がそれを組み立てる。それ以外の者が幕屋に近づくならば、死刑に処せられる。イスラエルの人々はそれぞれ所定の位置に、部隊ごとにその旗を掲げて宿営するが、レビ人は掟の幕屋の周囲に宿営し、怒りがイスラエルの人々の共同体に臨まないように、掟の幕屋の警護の任に当たらねばならない。

(民1:50~53)

 イスラエルの民は約束の地カナンに向かう過程で、聖所である臨在の幕屋をその都度解体し、運搬する任務を負っていた。レビ人はこの任務について全面的な責任を負っていたものである。

 その手続は幕屋を単なる「物」としてではなく、聖なるものとしてトーラに定められた順序に従って扱う。

 「それ以外の者が近づくならば、死刑に処せられる」とは、無防備に聖域に近付くことは死を意味したことを言っている。レビ人は、一般の民が誤って聖所に近付いて命を落とさないように警護する担当でもあったことになる。

 その為、12部族の配置の中の彼らの位置についても、レビ人は「幕屋のすぐ周囲」に宿営し、他の部族は離れた場所に宿営した。図式的には「幕屋(中心)→ レビ人(内環)→ 12部族(外環)」という具合である。

 次に臨在の幕屋の解体や運搬の役割分担について確認する。

ケハトの子らの仕事は、臨在の幕屋と神聖なものにかかわる。

(民4:1)

 これはケハトの氏族は聖所、至聖所とその中の祭具に関わる担当であったことを示している。具体的には契約の箱、金の祭壇、聖卓などである。

 次はゲルションの氏族について。

 ゲルションの氏族が作業をし、荷物を運ぶ仕事は次のとおりである。彼らは幕屋の幕、臨在の幕屋とその覆い、その上に掛けるじゅごんの覆い、臨在の幕屋の入り口の幕、庭の周りの幕、幕屋と祭壇の周りの庭の入り口の幕、綱、そのために用いられるすべての用具を運搬し、それに伴うすべての作業をする。

(民4:24~26)

 本文の通り、ゲルションの氏族は幕や覆いなど、布製品を担当した。最後はメラリの氏族である。

 彼らが臨在の幕屋で行う作業としての運搬の務めは次のとおりである。すなわち、幕屋の壁板、横木、柱、台座、 32庭の周囲の柱とその台座、杭、綱、その他すべての祭具およびそれにかかわる仕事をすることである。

(民4:31~32)

 彼らは柱や台座など、重い構造物を運んでいた。

レビ人の任務分類(2)

 以上簡単に見たが、まとめると以下のようになる。

1、ケハト家:最も聖なる器具の運搬(民 4:4~15)
2、ゲルション家:幕や覆いなどの布製品の運搬(民 4:24~26)
3、メラリ家:枠板や柱などの構造物の運搬(民 4:31~32)

 次に「②祭司の補助と幕屋の奉仕」について述べる。これについてもトーラに明記されている。

 レビ族を前に進ませ、祭司アロンの前に立たせ、彼に仕えさせなさい。・・・(中略)・・・あなたはレビ人をアロンとその子らに属する者とせよ。彼らはイスラエルの人々の中からアロンに属する者とされている。

(民3:6~9)

 これは本文の通りである。次に「③聖域の器具への接近制限と連帯責任」について。今度は民数記18章から。

 あなたの同族、すなわちあなたの父祖の部族であるレビ族の者たちをも用いて、身近な助け手とし、あなたとあなたの子らと共に掟の幕屋の前で仕えさせなさい。彼らはあなたの務めを助け、幕屋全般の務めを果たす。しかし彼らは、聖所の祭具および祭壇に近づいてはならない。彼らもあなたたちも、死ぬことのないためである。彼らはあなたの助け手として、臨在の幕屋の務めを果たし、幕屋のすべての作業に従事する。一般の人はあなたたちに近づいてはならない。

(民18:2~4)

 ここではレビ人が祭司の補助の役割をすること、しかし祭司のみの奉仕の領域には踏み込んではならないことを述べている。

 「彼らもあなたたちも、死ぬことのないためである」と神は言われる。レビ人が一線を越えれば、彼らだけでなく、祭司も管理責任を問われるという連帯責任の原則が示されている。

レビ人の任務分類(3)

 次に「④裁判の助言と判決への関与」について、次のように書かれている。

 あなたの町で、流血、もめ事、傷害などの訴えを裁くのが極めて難しいならば、直ちにあなたの神、主が選ばれる場所に上り、レビ人である祭司およびその時、任に就いている裁判人のもとに行って尋ねなさい。彼らが判決を告げるであろう。

(申 17:8~9)

 これは地方の法廷において審理が難しい事案は、「主が選ばれる場所」である臨在の幕屋(後の神殿)に行き、上級審の判断を仰ぐように命じている箇所である。「レビ人である祭司」というのは、「祭司以外のレビ族がレビ人」という定義からすると混乱の招く翻訳である。

 イスラエルの司法制度については、既に扱っている。興味のある方は次のリンクから確認して欲しい。

◉【シリーズ目次】ミシュナ『Sanhedrin』法理研究

https://note.com/mishnah/n/n8cf87c1bb399

 しかしレビ人が律法を扱う専門家として念頭に置かれていると言える。

 最後に「⑤賛美と音楽」については、トーラに直接的な言及はない。ダビデの時代に決定的な仕方で現れるものである。

 ダビデはレビ人の長たちに命じて、詠唱者であるその兄弟たちを任務に就かせ、琴、竪琴、シンバルなどの楽器を奏で、声を張り上げ、喜び祝うようにさせた。レビ人たちはヨエルの子ヘマン、その兄弟の一人ベレクヤの子アサフ、その兄弟であるメラリの一族の一人クシャヤの子エタンを任務に就かせた。

(歴上15:16~17)

結びに

 以上がレビ人のmishmarot(ミシュマロット)を理解する上での土台である。次回はいよいよ彼らのmishmarotについて扱う。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を継続し、さらなる『掃除』を推し進めるための研究費として、志ある方のご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ総目次はこちらから。

◉聖なる同期システム:祭司・レビ人・民が織りなす神殿奉仕の全貌【全7記事・完結】

https://note.com/mishnah/n/nca2eb55cd191


 本記事周辺の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334


 全記事の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【時系列総目次】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事インデックス

https://note.com/mishnah/n/nd780d32f266c


(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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