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仮庵祭(Succot:スコット)の本質(6回目)――祭司24組(mishmarot:ミシュマロット)による供え物の分配と、第8日(Shemini Atzeret:シェミニ・アツェレット)の法理的独立

*ユダヤ教の最高権威であるトーラ(モーセ五書)と口伝律法ミシュナの記述から「仮庵祭」の真の姿を解き明かすシリーズ6回目(最終回)。

 今回は、民数記29章に記された「追加の献げ物(mussaf:ムーサフ)」の祭りの期間中の数、祭司の役割分担、第8日目(Shemini Atzeret:シェミニ・アツェレット)」が持つ独立した祭日としての法理的性格を網羅。

 既存の抽象的な解説を排し、律法の「実務」という観点から鮮やかに真実の姿を再現します。


 前回まで仮庵祭(Succot:スコット)について5回の記事を書き、大体のことは掲載した。今回はmussaf(ムーサフ)とShemini Atzeret(シェミニ・アツェレット)について紹介する。

民数記29章における追加の献げ物(mussaf)の規定


 まずはmussafから。

 mussaf(ムーサフ)とは日毎の焼き尽くす献げ物(tamid)とは別の「追加の献げ物」である。祭日自体のための献げ物として、民数記28~29章に、祭日ごとに列挙されている。

 まだ不安な方は下のリンクから確認して欲しい。

◉七週祭(Shavuot;シャブオット)の法理(下):『民数記』mussaf(追加の献げ物)の順序と、和解の小羊にみる「聖性」の転換

https://note.com/mishnah/n/n90104c703c46

 最初にトーラ(モーセ五書)から引用する。

 12第七の月の十五日には聖なる集会を開く。いかなる仕事もしてはならない。七日の間主の祝いをする。 13あなたたちは、若い雄牛十三頭、雄羊二匹、一歳の羊十四匹を、焼き尽くす献げ物として主にささげ、燃やして宥めの香りとする。それらは無傷のものでなければならない。 14雄牛十三頭については、一頭につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉十分の三エファ、雄羊二匹については、一匹につき十分の二エファ、 15小羊十四匹については、一匹につき十分の一エファをささげる。 16また、雄山羊一匹を贖罪の献げ物とする。これらは、日ごとの焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物、ぶどう酒の献げ物のほかにささげる。

(民29:12~16)

 献げる家畜のリストは以下の通りである。注意して欲しいのは、仮庵祭の初日の献げ物である。仮庵祭は「7日間+1日別の祭日」であるが、全ての日で献げ物の数は異なる。

【1】焼き尽くす献げ物
①13頭の牛

 1頭につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉10分の3エファ

②2匹の雄羊

 1匹につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉10分の2エファ

③14匹の小羊

 1匹につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉10分の1エファ

【2】贖罪の献げ物

 1匹の雄山羊

 この初日の献げ物に関して、口伝律法ミシュナ「succah」では次のように書かれている。

 仮庵祭の初日、13頭の牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊。8組のmishmarotの為に14匹の1歳の小羊 。
 初日、mishmarotの内6組は2匹屠る。残りは1匹ずつ。

(Succah 5:6)

 この箇所を理解するには、mishmarot(ミシュマロット)について理解していなくてはならない。

mishmarot(ミシュマロット:祭司組分)による奉仕の動的ローテーション


 mishmarotとは祭司、レビ人のローテーションの組で、それぞれ24組ある。通常は1組で1週間の神殿奉仕を担当し、他の組は来ない。

 しかし三大祭りにおいては神殿祭儀が膨大であるので、全てのmishmarotが神殿で奉仕する。その役割分担について述べている。

 mishmarotについて不安な方は、下のシリーズから確認して欲しい。

◉聖なる同期システム:祭司・レビ人・民が織りなす神殿奉仕の全貌【全7記事・完結】

https://note.com/mishnah/n/nca2eb55cd191

 「Succah」5章6節の冒頭「仮庵祭の初日、13頭の牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊」は、上記の焼き尽くす献げ物の大部分と贖罪の献げ物の数である。

 これらはmishmarot24組の内、16組が担当する。残り8組の担当はすぐに触れられる。

 「8組のmishmarotの為に14匹の1歳の小羊。初日、mishmarotの内6組は2匹屠る。残りは1匹ずつ」。

 これは残りの8組の内、6組は2匹担当し、2組は1匹担当することを言っている。全部で14匹である。

 以上で初日の解説を終える。次に2日目である。

 17二日目には、若い雄牛十二頭、雄羊二匹、無傷の一歳の羊十四匹をささげ、 18これらの雄牛、雄羊、小羊のおのおのについて、規定の数量の穀物の献げ物とぶどう酒の献げ物をささげる。 19また、雄山羊一匹を贖罪の献げ物とする。これらは、日ごとの焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物、それに添えるぶどう酒の献げ物のほかにささげる。

(民29:17~19)

【1】焼き尽くす献げ物
①12頭の牛

 1頭につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉10分の3エファ

②2匹の雄羊

 1匹につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉10分の2エファ

③14匹の小羊

 1匹につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉10分の1エファ

【2】贖罪の献げ物

 1匹の雄山羊

雄牛の減数に伴う小羊分担比率の漸次的変遷(第2日〜第7日)


 ここで変わっているのは、雄牛の数である。初日から1頭減って12頭になっている。そこで、この部分を担当するmishmarotも1組減り、15組となる。残りは9組である。

 それに伴い、小羊の役割分担は次のように調整される。

 2日目、5組は2匹ずつ、残りは1匹ずつ。

(Succah 5:6)

 残りの9組の内、5組は2匹ずつ、4組は1匹ずつ、合計14匹である。

 以下、7日目まで同様に数が変化する。つまり雄牛の数が1頭減り、小羊の分担がそれに伴い調整される。

 これら全体の奉仕の流れについて、次のように書かれている。一部は再掲である。

 仮庵祭の初日、13頭の牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊。8組のmishmarotの為に14匹の1歳の小羊 。
 初日、mishmarotの内6組は2匹屠る。残りは1匹ずつ。2日目、5組は2匹ずつ、残りは1匹ずつ。3日目、4組は2匹屠る。残りは1組ずつ。4日目、3組は2匹屠る。残りは1匹ずつ。5日目、2組は2匹屠る。残りは1匹ずつ。6日目、1組は2匹屠る。残りは1匹ずつ。7日目は全ての組が等しい数を屠る。

(Succah 5:6)

 これは以下のように箇条書きに出来る。

①初日
16組のmishmarot:13頭の雄牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊
8組:6組は2匹の小羊、2組は1匹の小羊

②2日目
15組のmishmarot:12頭の雄牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊
9組:5組は2匹の小羊、4組は1匹の小羊

③3日目
14組のmishmarot:11頭の雄牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊
10組:4組は2匹の小羊、6組は1匹の小羊

④4日目
13組のmishmarot:10頭の雄牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊
11組:3組は2匹の小羊、8組は1匹の小羊

⑤5日目
12組のmishmarot:9頭の雄牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊
12組:2組は2匹の小羊、10組は1匹の小羊

⑥6日目
11組のmishmarot:8頭の雄牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊
13組:1組は2匹の小羊、12組は1匹の小羊

⑦7日目
10組のmishmarot:7頭の雄牛、2匹の雄羊、1匹の雄山羊
14組:全ての組が1匹ずつの小羊(14匹)

 8日目については次のように書かれている。

第8日(Shemini Atzeret)の不連続性と奉仕決定の抽籤制

 35八日目には、聖なる集まりを開く。いかなる仕事もしてはならない。 36あなたたちは雄牛一頭、雄羊一匹、無傷の一歳の羊七匹を焼き尽くす献げ物として主にささげ、燃やして宥めの香りとする。 37これらの雄牛、雄羊、小羊のおのおのについて、規定の数量の穀物の献げ物とぶどう酒の献げ物をささげる。 38また、雄山羊一匹を贖罪の献げ物とする。これらは、日ごとの焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物、ぶどう酒の献げ物のほかにささげる。

(民29:35~38)

 この日の献げ物は以下のようにまとめられる。

【1】焼き尽くす献げ物
①1頭の牛

1頭につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉10分の3エファ

②1匹の雄羊

 1匹につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉10分の2エファ

③7匹の小羊

 1匹につき穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉10分の1エファ

【2】贖罪の献げ物

 1匹の雄山羊

 つまり、初日から7日目までの献げ物の数のパターンには従っていない。役割分担については次のように書かれている。

 8日目、彼らは再びくじを引く。他の祭日と同じように。

(Succah 5:6)

 全部で10匹のいけにえであるので、24組のmishmarotでくじを引き、分担を決めることになる。

独立した祭日としての法理的性格と「喜び」の儀礼的実体


 仮庵祭の直後の日はShemini Atzeret(シェミニ・アツェレット)と呼ばれる。この日はyom tovである。今引用した民数記29章に「八日目には、聖なる集まりを開く。いかなる仕事もしてはならない」とある通りである。

 この日は上記の通り、日毎の焼き尽くす献げ物(tamid)とは別にmussafが献げられる。

 その他、仮庵祭に特有の掟はどうなのであろうか。まずはlulav等の束を振る掟について。

 lulav と柳の枝 の掟は6日間、あるいは7日間行われる。ハレルを唱えること、喜び祝うことは8日間行われる。仮庵の掟、水を献げることは7日間行われる 。フルートは5日間あるいは6日間吹かれる。

(Succah 4:1)

 ここからShemini Atzeretに関して次のことが引き出される。

①Shemini Atzeretにおいて、lulav等の束は振らない。

②Shemini Atzeretにおいて、Beit HaShoevahは行われない。

③Shemini Atzeretにおいて、水は献げない。

④Shemini Atzeretにおいて、ハレルの詩編(詩編113~118)は唱える。

⑤Shemini Atzeretにおいて、「喜び祝う」。

 最後の「喜び祝う」とは、トーラの次の箇所に拠っている。

 息子、娘、男女の奴隷、あなたの町にいるレビ人、寄留者、孤児、寡婦などと共にこの祭りを喜び祝いなさい。

(申16:4)

 これは七週祭の箇所で言われているが、三大祭り全てにおいて適用される。「喜び祝う」というのは、各々好きなように喜べばよいのではない。和解の献げ物を献げ、それを一家や客人と共に食べるのである。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を継続し、さらなる『掃除』を推し進めるための研究費として、志ある方のご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ目次は以下からご覧になれます。

◉三大祭りの法理学全説:トーラとミシュナから復元する過越祭・除酵祭(Pesach:ペサハ)、七週祭(Shavuot:シャヴオット)、仮庵祭(Succot:スコット)(全18記事・完結)

https://note.com/mishnah/n/n8fa728c36e30

 本記事周辺の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334


 全記事の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【時系列総目次】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事インデックス

https://note.com/mishnah/n/nd780d32f266c


(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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