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口伝律法ミシュナ『Kilayim(キルアイム)』の全法理 第4回:道・壁を挟む2列の結合条件、3列における16キュビットの厳格化、ツァルモンの実例に見る蔓の成長方向の調整と14キュビット活用法の法理(4章7節〜9節)

*本稿では、口伝律法ミシュナ『Kilayim(キルアイム)』第4章7節から9節(および6章1節の先取り)を対象に、ぶどうの列が「結合」または「分離」する律法上の境界線を厳密に検証する。

 道や壁が2列のぶどうの木に与える影響、3列以上に厳格化される「16キュビット規則」、そして真ん中の列を除去した場合のラビ・エリエゼル・ベン・ヤコブの見解について網羅。

 更にラビ・ユダが挙げた「ツァルモンの農夫」の実例から、1年目と2年目で蔓の方向を制御し、土地の生産性を最大化(14キュビットを活用)した幾何学的・農業的な法理を紐解く。


前回の振り返り:壁との間の距離、作業スペースと「ぶどう畑」の定義


 前回は口伝律法ミシュナ『Kilayim(キルアイム)』第4章1節から6節に基づき、ぶどう畑における異種混交禁止規定の境界線や「畑」の定義について詳細に解説した。

 主な内容は以下の通りである。

【1】ぶどう畑の周辺(外縁と壁の間)の距離規定

 ぶどう畑の端と周囲の壁との間に、他の作物を植えてもよいとされる距離について、二大学派の間で論争がある。

①Beit Shammai(ベイト・シャマイ)

 独立した畑として認められる広さを8キュビットと定義するため、合計16キュビットが必要とする。

 ぶどう畑の作業スペース(4キュビット)+他の作物の独立した畑(8キュビット)+壁際の通路(4キュビット) = 16キュビット

②Beit Hillel(ベイト・ヒレル)

 独立した畑として認められる広さを4キュビットと定義するため、合計12キュビットを必要とする。

 ぶどう畑の作業スペース(4キュビット)+他の作物の独立した畑(4キュビット)+壁際の通路(4キュビット) = 12キュビット

 この規定の距離を満たさない場所に植えられた作物は、ぶどう畑の一部と見なされ、kilayim(キルアイム)の掟に抵触するため、収穫物から利益を受ける行為が禁止される。

【2】「単体の木」と「ぶどう畑」の区別

 他の作物を栽培する際に空けるべき距離は、対象が単体の木か畑かによって大きく異なる。

①単体の木

 6手幅(約48〜60センチ)の距離があれば足りる。

②ぶどう畑

 4キュビット(約2メートル)の距離を置く必要がある。

【3】「ぶどう畑」として認められる条件

 何本以上の木がどのような配置であれば「畑」と見なされるかについて、以下の見解がある。

①Beit Shammai

 最低5本の木を1列植えれば、ぶどう畑として成立する。

②Beit Hillel

 1列では本数に関わらず畑とは見なされず、最低2列必要であるとする。

 後世の注釈として、Rosh(ロシュ)は「2本+3本」の計5本、Rambam(ランバム)は各列最低3本必要で、計6本が必要であると主張している。

【4】ぶどうの木の幾何学的配置

 5本の木を植える際の配置によって、律法上の「畑」の成否が決まる。

①成立する配置(2対2+尻尾)

 2本ずつの平行な2列から、1本が「尻尾」のように突き出している形は「ぶどう畑」として認められる。

②成立しない配置(サイコロの5の目)

 2本ずつの四角形の真ん中に1本を配置した形は、律法上は「ぶどう畑」とは見なされない。

 以上の内容に不安を感じる方は、下のリンクから確認して欲しい。

◉口伝律法ミシュナ『Kilayim(キルアイム)』の全法理 第3回:「ぶどう畑の周辺」における12キュビット/16キュビットの距離内訳と「ぶどう畑」を構成する本数・配置の法理的定義(4章1節〜6節)

https://note.com/mishnah/n/n2787b8eb774d

ミシュナ『Kilayim』4章7節:道・壁・地境が2列のぶどうの蔓に与える「結合」と「分離」の境界線


 今回はその続きである。口伝律法ミシュナ「Kilayim」4章7節から引用する。

 もし誰かが自分の地所で1列植えて、別の1列を隣人の地所に植えて、間に私道や公道、もしくは10手幅に満たない壁があるなら、これらの列は結合する。もし壁が10手幅よりも高いなら、列は結合しない。ラビ・ユダは言う、「もし彼が上方で絡めたら、それらは結合する。」

(Kilayim 4:7)

 ここでは2列のぶどうの木が問題になっている。ぶどう畑の場合、間に道があったとしても結合していると見なされる。

 穀物や野菜の場合、4キュビットの道が間にあるのなら、結合しない。しかし樹木、特にぶどうの木に関しては、結合していると見なされる。

 ただし道幅が8キュビット以上である場合、2列は結合しているとは見なされない。列同士が8キュビット以上離れている場合、それぞれの列は完全に独立したものと見なされるからである。

 そこで、この場合はぶどう畑を形成しない。

 次に2列の間に壁がある場合である。壁の場合は10手幅(10 tefachim)に満たない場合、結合していると見なされる。ミシュナ本文にある通り、問題の2列の1列が別の者に所有されている場合でも変わらない。

 1手幅は約8~10センチであり、10手幅は80~100センチ程度になる。

 以上で「Kilayim」4章7節についての解説を終えた。次節に進む。幾つかに分割して検証する。

 もし誰かが2列のぶどうの蔓を植えるなら、-その間隔が8キュビットないならば、他の種をそこに蒔いてはならない。

(Kilayim 4:8)

 この2列は、合計で5本以上のぶどうの木で構成されていることが前提になっている。つまりはぶどう畑である。

 列同士の間隔が8キュビットに満たないなら、それは完全にぶどう畑である。間になにか別の種類を植えることは出来ない。これは既に何度か確認した。

 次が重要な規則になる。

ミシュナ『Kilayim』4章8節:3列構成における16キュビット制限の厳格化と既得権制約

 もし3列あり、16キュビットの間隔がないならば、他の種を蒔いてはならない。

(Kilayim 4:8)

 2列の場合、8キュビット以上互いに離れていると、それぞれ独立した1列を形成し、ぶどう畑とは見なされなかった。

 3列になると大きく規則が変わり、列同士の間隔が16キュビット(約8メートル)以上離れていないなら、結合しているものと見なされる。

 異論もあり、16キュビットは外側の2列の間の距離を言っているという見解もあるが、ここでは立ち入らない。

 以前の記事で「Kilayim」4章1節を検証し、「Beit Hillelによるとぶどう畑の中に16キュビットの間隔があるならば、他の作物を植えることが出来る」ことを確認した。

 ぶどう畑が3列以上のぶどうの木の列で構成されている場合、まさにそこに他の作物を育ててよい距離が確保されない限り結合することになる。

 「もし3列あり、16キュビットの間隔がないならば、他の種を蒔いてはならない」とは、そのことを言っている。kilayimと見なされるのである。

 続きである。

真ん中の列の除去(ラビ・エリエゼル・ベン・ヤコブの見解)における距離制限枠組みの非緩和(既得権制約)

 ラビ・エリエゼル・ベン・ヤコブはハニーナ・ベン・ハヒナイの名によって言う、「たとえ真ん中の列をやめたとしても、1列と次の1列の間が16キュビットないならば、他の種をそこに蒔いてはならない、もし始めからその配置にしていたのなら、8キュビットで許されていたとしても。」 」(Kilayim 4:8)

 ここでは3列でぶどう畑を構成していたが、真ん中の1列を取り除いた場合の対応である。

 2列でぶどう畑を構成する場合、8キュビットの間隔が空いているなら他の作物を植えることが出来た。

 ラビ・エリエゼル・ベン・ヤコブによると、元々が3列であったのなら、後になって真ん中を除いて2列にしたとしても、16キュビット以上の距離制限という枠組みは緩和されない。

 次節に進む。

ミシュナ『Kilayim』4章9節・6章1節:ツァルモンの実例にみる空間制御と14キュビット活用法の数理的ロジック

 もし誰かがぶどう畑を16キュビットずつ植えたなら、そこに種を蒔くことが出来る。
 ラビ・ユダは言った、「かつてツァルモンにおいて、ある人が16キュビットの間隔でぶどうの蔓を植えた。・・彼は2列の枝を同じ方向に曲げ、耕作地に植えた。そして翌年枝を別の方向に向け、休耕地に植えた。その話はラビたちの元へ出され、彼らはそれを認めた。」

(Kilayim 4:9)

 1段落目はぶどうの列同士の間隔が16キュビットあるなら、ぶどう畑を構成しないので、そこに他の作物を植えることが出来ることを言っている。既に確認したことである。

 2段落目はやや難しく聞こえるが、次のことを言っている。

 ある農夫が16キュビットの間隔を空けながら、ぶどうの列を何列か植えている。彼はこの16キュビットのスペースを活用して、他の作物を育てたいが、土地が劣化するのを防ぐ為に、毎年全てのスペースを使わない方がよいと判断した。

 言葉だけでは難しいので、視覚的に表すと、次のようになる。

【1年目】休耕地(A・C地)への蔓の誘導と耕作地(B地)における14キュビットの数理的算出

~ ~

ぶどうの列①

A地(休耕地)

ぶどうの列②

B地(耕作地)

ぶどうの列③

C地(休耕地)

~ ~

 A地とC地は休耕地。B地は耕作地で穀物を育てる。

 ぶどうの列①とぶどうの列②の蔓は、休耕地であるA地に伸びるように調整する。

 ぶどうの列③の蔓はC地に伸びるようにする。

 ぶどうの蔓の伸ばす方向を休耕地に向けるのは、蔓の下の土地には他の作物を植えることが禁止されているからである。「Kilayim」7章にその記述があり、このシリーズの後の回で扱う。

 このように蔓を休耕地に向けて育つように調整することによって、耕作地の16キュビットについて、その大半を用いることが出来る。

 ぶどう畑の場合、作業スペースとして4キュビット(約2メートル)確保しなくてはならなかった。

しかしここでは列同士が16キュビット離れているので、それぞれは独立したぶどうの木であり、作業スペースとして6手幅(約48~60センチ)の間隔のみ確保すれば足りる。

 「Kilayim」6章1節に次のように書かれている。

 (単体の)ぶどうの蔓の作業スペースはどのくらい要するのだろうか?あらゆる方向に6手幅である。

(Kilayim 6:1)

 手幅(tefach)とキュビット(アンマ)の間には、以下のような関係がある。

 6手幅 = 1キュビット(アンマ)

 従って、ぶどうの蔓の方向を調整すれば、耕作地において14キュビットを他の作物に使えることになる。

 ここまで1年目の解説を終えた。

 2年目は休耕地と耕作地が入れ替わり、ぶどうの蔓の方向が逆になるだけである。

 読者の便宜の為、上の図解を再掲しつつ2年目仕様に変える。

【2年目】耕作地と休耕地の年次入れ替え(輪作サイクル)に伴う蔓の反転制御法理

~ ~

ぶどうの列①

A地(耕作地)

ぶどうの列②

B地(休耕地)

ぶどうの列③

C地(耕作地)

~ ~

 B地は休耕地。A地とC地は耕作地で、穀物を育てる。

ぶどうの列②とぶどうの列③の蔓は、休耕地であるB地に伸びるようにする。

ぶどうの列①の蔓はA地とは反対側に伸びるようにする。

 このようにすることで、A地とC地でそれぞれ14キュビットのスペースを使い、他の作物を育てることが出来る。

 今回の解説は以上である。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を継続し、さらなる『掃除』を推し進めるための研究費として、志ある方のご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ目次は以下からご覧になれます。

◉【シリーズ目次】ミシュナ『Kilayim』法理研究

https://note.com/mishnah/n/nbf78cc478503


 本記事周辺の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334


 全記事の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【時系列総目次】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事インデックス

https://note.com/mishnah/n/nd780d32f266c


(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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