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七週祭(Shavuot:シャブオット)の法理(上):『レビ記』の供え物と口伝律法『Menachot(メナホット)』から復元する「shtei halechem(シュテイ・ハレヘム)」の深層

*本稿は、口伝律法『ミシュナ』の「Menachot(メナホット)」篇を徹底的に読み解き、既存の聖書解説において等閑視されてきた「律法の現場」を物理的・法理的に再構築するものである。

 七週祭(五旬祭)において献げられる「二つのパン(shtei halechem:シュテイ・ハレヘム)」を中心に、「安息日の翌日」の正確な定義、聖書本文の「各自の家から」という表現の法理的解釈まで網羅。

 伝統的な諸註釈に基づいた専門性で、七週祭のリアリティと法的厳格さが、日本語圏に蘇ります。


はじめに:七週祭の定義と「安息日の翌日」の特定


 前回の記事の最後で、七週祭について冒頭で解説するべき点について解説した。

 以下のような内容である。まずはトーラの引用から。

 15あなたたちはこの安息日の翌日、すなわち、初穂を携え奉納物とする日から数え始め、満七週間を経る。 16七週間を経た翌日まで、五十日を数えたならば、主に新穀の献げ物をささげる。 17各自の家から、十分の二エファの上等の小麦粉に酵母を入れて焼いたパン二個を携えて、奉納物とする。これは主にささげる初物である。

(レビ23:15~17)

 冒頭の「安息日の翌日」とは上述のニサンの月の16日を指す。この日は「夜に国家的な行事として刈り入れを行い、夜が明けてからその内の精選した1エファを祭壇上で焼くというものであった。

 この日を第1日として「満七週間を経る」。

 「七週間を経た翌日まで、五十日を数えたならば、主に新穀の献げ物をささげる」とは、50日目に再び献げ物をするという事である。

 この50日目が七週祭であり、新約聖書で五旬祭と呼ばれている日になる。

 献げ物の内容が次節に続く。「十分の二エファの上等の小麦粉に酵母を入れて焼いたパン二個」(17節)である。これはshtei halechem(シュテイ・ハレヘム)と呼ばれる。

 新年の収穫の一般的な消費はomerを献げた後許された。神殿で新年の収穫を献げるのは、このshtei halechemを献げた後に許される。

 これは以下の意味になる。

①ニサンの月の16日の祭儀

 新年の収穫が許される。

②七週祭

 新年の収穫を神殿で献げることが許される。

 今回から七週祭について詳述する。最初に口伝律法ミシュナ「menachot」11章1節を引用する。

「shtei halechem」の規定:ミシュナ『Menachot(メナホット)』11章1節

 shtei halechemは1つずつ捏ね、1つずつ焼く。lechem hapanimは1つずつ捏ねるが、2つずつ焼く。それらは型にはめて作り、取り出したら再び型に入れる 。傷むことのないように。

(Menachot 11:1)

 shtei halechemは文字通りに翻訳すると「2つのパン」である。それぞれトーラの本文の通り、10分の1エファ(1イッサロン)の分量になる。

 lechem hapanimとは聖所の中の12個のパンのことであり、それらは「1つずつ捏ねるが、2つずつ焼く」。しかしshtei halechemは「1つずつ捏ね、1つずつ焼く」。

 lechem hapanimについて不安な方は、下のリンクから確認して欲しい。

◉ミシュナ『Tamid(タミッド)』篇・逐条完全解説第4回:「金の祭壇と聖卓の乳香」の為の火床の分離、「Lishkat HaGazit:リシュカット・ハガジット)」における祈り(2章5節)

https://note.com/mishnah/n/n353e94f15f56#c1aaa502-7fc1-401d-ba13-4f850b5f5064

聖所における焼成と安息日の優先順位


 「Menachot」11章2節に進む。

 shtei halechemもlechem hapanimも神殿の敷地の外で捏ね、形を作られるが、その敷地内で焼かれる。安息日の禁止を乗り越えない。ラビ・ユダは言う、「全ての過程は神殿の敷地内で行われる」。ラビ・シモンは言う、「shtei halechemもlechem hapanimも、神殿の敷地内でもBeit Paggi でも許容される。」

(Menachot 11:2)

 最初の一文に関しては、生地を捏ね、形を作る段階ではまだ聖別されていないことが前提になっている。そこで、この段階では神殿の敷地内で作業する必要はない。

 しかし「その敷地内で焼かれる」。これは下の写真を見て欲しい。

lechem hapanimの部屋

 写真の赤枠が火の部屋(Beit HaMoked;ベイト・ハモケド)であり、その中の緑の枠で囲まれた部屋が「lechem hapanimの部屋」である。

 毎週のlechem hapanimは「lechem hapanimの部屋」焼かれたが、1年に1回のshtei halechemもここで焼かれていたと思われる。

 「安息日の禁止を乗り越えない」とあるので、七週祭を焼くタイミングが安息日にあたった場合、前日に焼くことになる。これに関して次のように書かれている。

 shtei halechemは2日目より早く食べられることはなく、3日目を越えない。どのようにであろうか?それらが祭日の前の日に焼かれ、祭日に食べられる。それで2日目である。もし祭日が日曜日になるのなら、3日目に食べられる。

(Menachot 11:9)

 通常、shtei halechemは七週祭の前日に焼くようである。それが
「shtei halechemは2日目より早く食べられることはない」という事である。

 「もし祭日が日曜日になるのなら、3日目に食べられる」とは、焼くべき前日が安息日になるので、更に前日の金曜日に焼くことを言っている。

 次に品質について。今度は「Menachot」8章1節から引用する。

聖地イスラエルの「新穀」であることの絶対条件

 全ての共同体の献げ物、個人的な献げ物はイスラエルから、外地から取ってよいし、新しいものからも古いものからも取ってよい、omerとshtei halechemを除いては。それらは聖地から、新しいものから取らなくてはならない。

(Menachot 8:1)

 通常、穀物の献げ物に用いるものは、必ずしもイスラエルで作ったものでなくてもよい。また、それは前年のものでも構わない。

 他方でomerとshtei halechemについては、これらの柔軟性は認められていない。

 産地については「わたしが与える土地に入って穀物を収穫したならば」(レビ23:10)、新年のものであることは「新穀の献げ物をささげる」(レビ23:16)と明記されている。

 注意するべき点は次の箇所である。

「各自の家から」の真意と、異例の「酵母(chametz:ハメツ)」使用

 各自の家から、十分の二エファの上等の小麦粉に酵母を入れて焼いたパン二個を携えて、奉納物とする。これは主にささげる初物である。

(レビ23:17)

 まず「各自の家から」とあると全ての家庭から持って来るようなイメージになるので、誤解を招くと思われる。これは文字通りには「あなたたちの住まいから」であり、イスラエルの民という集合的な概念を表している。

 特異であるのは、「酵母を入れて」と明記している点である。祭壇上に献げるものは、全てchametzを入れてはならない。しかしここでは逆に入れるように命令されている。

 結論から言うなら、shtei halechemは祭壇上では焼かれない。祭司が食べるのみである。それは先に進みながら明らかになる。

 取りあえず、以上でshtei halechemそのものについての解説を終えた。レビ記23章に戻る。次の箇所は難解である。

献げ物の分類:焼き尽くす献げ物・贖罪の献げ物・和解の献げ物

 18このパンのほかに、傷のない一歳の雄の小羊を七匹、若い雄牛一頭、雄羊二匹をささげる。これらは穀物の献げ物やぶどう酒の献げ物と共に主にささげる焼き尽くす献げ物であり、燃やして主にささげる宥めの香りである。 19また、雄山羊一匹を贖罪の献げ物として、一歳の雄の小羊二匹を和解の献げ物としてささげる。 20祭司はこれらを、初物のパンと共に奉納物として主の御前に差し出す。二匹の雄の小羊は主に聖別されたものとして祭司のものとなる。

(レビ23:18)

 18~19節はshtei halechemと一緒に献げるべきものを列挙している。それは次の通りである。

【1】焼き尽くす献げ物
①1歳の雄の小羊を7匹
②雄牛1頭
③雄羊2匹

【2】贖罪の献げ物
雄山羊1匹

【3】和解の献げ物
小羊2匹

 問題は20節の「祭司はこれらを、初物のパンと共に奉納物として主の御前に差し出す」である。

tenufah(テヌーファ:奉納)の所作:パンと小羊の一体化


 「これら」の範囲は上記の【3】和解の献げ物にしかかかっていない。この和解の献げ物とshtei halechemをまず一緒に奉納(tenufah:テヌーファ)する。これについては「menachot」5章6節に記されている。

 七週祭のshtei halechemと2匹の小羊。どのようにするのだろうか?彼は2匹の羊の上にshtei halechemを置いて、両手をその下に据える。彼は伸ばし、引き戻す。持ち上げ、下ろす。奉納は東側で、・・・(中略)・・・で行われる。

(Menachot 5:6)

 次のことが書かれている。

①和解の献げ物である小羊の上に、shtei halechemのパンを1つずつ(?)置く。

②両手を小羊の下に入れる。

③まず東西南北に動かす。

④上下に動かす。

⑤この奉納(tenufah)は祭壇の東側で行ってよい。しかし東側のみ行うことが出来るという解釈もある。

民数記28章における「mussaf(ムーサフ:追加の献げ物)」の構造


 ここまでの内容で、七週祭の当日には以下の献げ物をすることを学んだことになる。

つまり「朝と午後のtamid」、「shtei halechemと関連の献げ物」である。

 しかし祭日にはこれに加えて、mussaf(ムーサフ)と呼ばれる献げ物も献げる。民数記28章は各祭日のmussafについてまとめられているが、七週祭については以下のように書かれている。

 26初物の日、すなわち七週祭に新穀の献げ物を主にささげるときには、聖なる集会を開く。いかなる仕事もしてはならない。 27あなたたちは、若い雄牛二頭、雄羊一匹、一歳の羊七匹を、焼き尽くす献げ物として主にささげ、宥めの香りとする。 28雄牛一頭について、穀物の献げ物としてオリーブ油を混ぜた上等の小麦粉十分の三エファ、雄羊一匹について十分の二エファ、 29小羊七匹については、一匹につき十分の一エファをささげる。 30また、雄山羊一匹をささげて、あなたたちのために罪を贖う儀式を行う。 31あなたたちは、日ごとの焼き尽くす献げ物と穀物の献げ物のほかに、以上のものをささげる。

(民28:26~31)

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を継続し、さらなる『掃除』を推し進めるための研究費として、志ある方のご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ目次は以下からご覧になれます。

◉三大祭りの法理学全説:トーラとミシュナから復元する過越祭・除酵祭(Pesach:ペサハ)、七週祭(Shavuot:シャヴオット)、仮庵祭(Succot:スコット)(全18記事・完結)

https://note.com/mishnah/n/n8fa728c36e30

 本記事周辺の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334


 全記事の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【時系列総目次】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事インデックス

https://note.com/mishnah/n/nd780d32f266c


(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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