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ミシュナ『Tamid(タミッド)』篇・逐条完全解説第4回:「金の祭壇と聖卓の乳香」の為の火床の分離、「Lishkat HaGazit:リシュカット・ハガジット)」における祈り(2章5節)

*ミシュナ『Tamid(タミド)』2章5節を元に、エルサレム神殿における2つの火床(薪)の厳格な運用を解説する。

 聖所内の献香とは別に、安息日ごとに交換される「供えのパン(lechem hapanim:レヘム・ハパニーム)」に添えられる乳香は外の祭壇で焼かれる。

 その法的根拠をトーラ(出エジプト記・レビ記)から導き出し、祭壇における肉体作業から「切り石の間(Lishkat HaGazit:リシュカット・ハガジット)」での祈りへと向かう祭司たちの動線を、建築構造的矛盾への回答と共に詳述する。


前回の振り返り


 前回は「Tamid(タミッド)」1章4節~2章4節を取り上げ、以下の内容を確認した。

 主な内容は以下の通りである。

【1】terumat hadeshenと「聖なる廃棄物」の処理(1章4節)

 担当の祭司は銀のシャベルで、祭壇中央の最もよく燃えている炭をすくい取り、祭壇を下りる。

①配置場所

 炭はスロープの東側に沿って約10アンマ(約5メートル)進んで、スロープから3手幅(24〜30センチ)離れた場所に置く。

②他の廃棄物

 この場所は、焼き尽くす献げ物の鳥の餌袋や、聖所内の金の祭壇やmenorahから出た灰を置く共通の場所でもあった。

【2】祭壇の更地化と灰の山「tapuach(タプアフ)」(2章1節〜2節)

 最初の奉仕が終わると、他の祭司たちが合流し、祭壇の上を整理する。

①燃え残りの移動

 前夜から燃え残っている脂肪などは、新しい薪を積むために一度祭壇の脇やスロープの上部へ除けられる。

②tapuach(タプアフ)

 祭壇の中央には灰が積み上げられ、これを「タプアフ(リンゴのような山)」と呼ぶ。

③繁栄の象徴

 三大祭(祝祭日)の際は、多くのいけにえが献げられた証として、あえて灰を取り除かずに山を高くし、神殿の活気と栄光を演出した。

【3】薪(ma'arachah:マアラハー)の選定基準(2章3節)

 祭壇で燃やす薪には、適切な樹種が選ばれた。

①使用禁止

 オリーブとぶどうの木は、イスラエルの地の繁栄を支える貴重な実をつけるため、燃料にすることは避けられた。

②推奨

 主にいちじく、ナッツ、杉の一種が、燃えやすく火力が安定しているため好んで使われた。

【4】メインの薪(Ma'arachah ha-Tamid:マアラハー・ハタミッド)の配置(2章4節)

 日毎の焼き尽くす献げ物を焼くための最も大きな薪の山が、祭壇の東側に整えられる。

①配置の基準

 薪の先端が中央のtapuachに触れるように置くことで、正確な位置を確保した。

②燃焼の工夫

 物理的に燃焼を助けるため、薪の間には空気の通り道となる空間が作られた。

 以上のように灰の処理から薪の選定に至るまで、「昨日の奉仕の継続」という神学的な意味や、効率的な燃焼という物理的な配慮が組み合わされていることが示される。

 これらの項目を見て、まだ自分の知識に不安を感じる人は以下のリンクから確認して欲しい。

◉ミシュナ『Tamid(タミッド)』篇・逐条完全解説第3回:祭司の奉仕の順序と「灰(tapuach:タプアフ)」の神学的構造(1章4節~2章4節)

https://note.com/mishnah/n/n5774ea79964d


 今回はこの続きである。口伝律法ミシュナ「Tamid」2章5節からである。

1.「2つ目の薪」と聖所内の献香:出エジプト記30章の法規

 彼らはいちじくから良い材木を選ぶ。2つ目の薪の為に、献香の為に。南西の角に、4アンマ角から北側に、想定される5セアの炭である。安息日においては8セア。

(Tamid 2:5)

 まず「彼らはいちじくから良い材木を選ぶ。2つ目の薪の為に、献香の為に」とあるのは、毎日聖所の中でする献香の奉仕に関連している。トーラ(モーセ五書)の中では次のように書かれている。

 1アカシヤ材で香をたく祭壇を造りなさい・・・(中略)・・・7アロンはその祭壇で香草の香をたく。すなわち、毎朝ともし火を整えるとき、 8また夕暮れに、ともし火をともすときに、香をたき、代々にわたって主の御前に香りの献げ物を絶やさぬようにする。 9あなたたちはその上で規定に反した香や焼き尽くす献げ物、穀物の献げ物、ぶどう酒の献げ物などをささげてはならない。

(出30:1~9)

 本文の算用数字は節の番号を表している。

 この祭壇は金の祭壇とも呼ばれ、聖所の中に置かれている。本文の通り朝と午後、2回この祭壇の上で香を焚くが、ここで焼き尽くす献げ物や穀物の献げ物を焼いてはならない。それは外の祭壇で焼くものだからである。

 今、「Tamid」2章5節で言っていることは、金の祭壇の上に置く炭をどのように作るかについてである。その為の薪が「2つ目の薪の為に、献香の為に。南西の角に、4アンマ角から北側」とその配置が特定されているものである。写真を見て欲しい。

香を焼く炭の為の薪

 ここに献香の為の薪が積まれる。写真の中で黄色で囲っているものがそれである。この薪から炭が作られ、聖所に持って行かれ、金の祭壇の上に置かれる。香草はその炭の上に置かれるという手順になる。

 それは「祭壇の南西の角であり、かつ北側に4アンマ(約2メートル)だけ寄せた位置」に置かれている。これも写真の通りである。

2.「想定される5セアの炭」:安息日における供えのパン(lechem hapanim:レヘム・ハパニーム)と乳香


 その後の「想定される5セアの炭である。安息日においては8セア」とは、平日と安息日ではこの薪の量が異なることを言っている。その理由は「tamid」2章の本文の続きに記されている。次のように書かれている。

というのも、彼らは2杯分の香をパンの上に置くから。

(Tamid 2:5)

 これについては少し説明を要する。

「2杯分の香をパンの上に置く」:レビ記24章にみる聖卓の規定


 聖所の中には聖卓が置かれており、その上には12個のパンが置かれる。この12個のパンはlechem hapanim(レヘム・ハパニーム)と呼ばれ、安息日ごとに新しいものに交換される。トーラの中では次のように書かれている。

 5あなたは上等の小麦粉を用意し、それぞれ十分の二エファの分量の輪形のパンを十二個焼く。 6それを一列に六個ずつ二列に並べ、純金の机の上に置いて主の御前に供える。 7各列に純粋の香料を添える。それはパンのしるしとして燃やして主にささげる。 8アロンはイスラエルの人々による供え物として、安息日ごとに主の御前に絶えることなく供える。これは永遠の契約である。 9このパンはアロンとその子らのものであり、彼らはそれを聖域で食べねばならない。それは神聖なものだからである。

(レビ24:5~9)

 まずは下の写真を見て欲しい。

lechem hapanimを置く聖卓

 左右に6つずつ棚になっているのが分かると思う。それぞれの棚にパンを1つずつ置くのである。パンはそれぞれ10分の2エファの分量で作られる。

 それが上記5~6節の「あなたは上等の小麦粉を用意し、それぞれ十分の二エファの分量の輪形のパンを十二個焼く。それを一列に六個ずつ二列に並べ、純金の机の上に置いて主の御前に供える」の意味になる。

 それぞれの列には香料を添える。先述の通り、パンは安息日ごとに新しいものに交換するが、この時に香料も新しいものに交換する。古い香料は燃やすのである。

 それが7節の「それはパンのしるしとして燃やして主にささげる」の意味である。

 他方で1週間置かれたパンは、次の安息日に祭司たちが食べる。9節に「このパンはアロンとその子らのものであり、彼らはそれを聖域で食べねばならない」とある通りである。聖域とは、ここでは祭司の庭のことを指す。

 以上を前提に、もう一度「Tamid」2章5節を引用する。

 彼らはいちじくから良い材木を選ぶ。2つ目の薪の為に、献香の為に。南西の角に、4アンマ角から北側に、想定される5セアの炭である。安息日においては8セア。

(Tamid 2:5)

 位置については既に見た。「想定される5セアの炭である。安息日においては8セア」とは、準備する薪の分量について言っている。

「古い香料は燃やす」:外の祭壇と金の祭壇の峻別


 安息日においては、聖所のlechem hapanimの古い香料を燃やすので、普段よりも多めに炭が準備されるという事である。しかし次の点は明確に理解しておかなくてはならない。

①献香は聖所の中の金の祭壇の上で焚かれる。

②lechem hapanimの古い香料は外の祭壇で焼かれる。

 従って安息日においては、この「2番目の薪」の一部は炭になって聖所の金の祭壇に置かれる。そこで香料を焚く。他は外の祭壇に残ったまま、古い香料を焼くことになる。

 先に進む。まだ「Tamid」2章5節である。

3.「夜の間に焼かれなかったもの」:奉仕の継続性と再点火の儀礼

 脂肪やその他の部位で、夜の間に焼かれなかったものは、祭司たちは薪に戻す。彼らは2つの薪に火を点け、刻まれた石の部屋に行く。

(Tamid 2:5)

 最初の文章は燃え残った部位を再点火することを言っている。祭壇は一晩中燃えているが、まだ形が残っているものは、廃棄するのではない。

 前回見た通り、始めに祭壇の上を更地にする。つまりこれらを一度脇へ除けておき、新しく整えた大きな薪(Ma’arachah ha-Tamid:マラハー・ハタミッド)の上に戻すのである。

 これにより、前日の奉仕を完全に全うし、継続して新しい日毎の焼き尽くす献げ物を献げる姿勢が示される。

 「彼らは2つの薪に火を点け 、刻まれた石の部屋に行く」については、まず前半部分から説明する。

 「2つの薪」あるのは、これまで説明してきた2つの薪のことであり、以下のものである。

①Ma’arachah ha-Tamid(マアラハー・ハタミッド)
 日毎の焼き尽くす献げ物を燃やす為の薪。

②南西の角に置かれる薪
 金の祭壇で焚く香料の為のものであり、安息日にはlechem hapanim(レヘム・ハパニーム)に添えた古い香料も焼く為のもの。

これら2つに同時に火を点けることで、その日のすべての奉仕のの火が確保される。

4.「刻まれた石の部屋に行く」:Lishkat HaGazit(リシュカット・ハガジット)と聖所・俗所の境界


 次に「刻まれた石の部屋に行く」であるが、この部屋はよく「切り石の間」と呼ばれる。ヘブライ語では「Lishkat HaGazit(リシュカット・ハガジット)」と呼ばれる。

 「Lishkat HaGazit(リシュカット・ハガジット)」は以前の記事で触れた通り、最高法院が開かれる広間である。この広間は特異な構造をしており、神殿の敷地の内外にまたがる仕方で建てられていた。

 それは神殿の敷地内では座ることが出来ないが、判事は座らなくてはならない規則があったので、両者を満たす形式として、このように構想されたものである。

 これは以前の記事で詳しく述べているので、理解していない方は下のリンクから確認して欲しい。

◉イエスを裁いた最高法院における裁判について(上)――神殿の「Lishkat HaGazit(リシュカット・ハガジット:切り石の間)」と座席禁止規定の矛盾

https://note.com/mishnah/n/nfdd178d93af0

 「刻まれた石の部屋に行く」というのは、朝の日毎の焼き尽くす献げ物の準備を終えた祭司たちが、祈りとくじ引きの為に行ったとされる。それは後の回で解説する。

 今回の内容は以上である。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を継続し、さらなる『掃除』を推し進めるための研究費として、志ある方のご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ目次は以下からご覧になれます。

◉【シリーズ目次】ミシュナ『Tamid』法理研究

https://note.com/mishnah/n/ne0f9ce5dd9f8

 本記事周辺の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334


 全記事の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【時系列総目次】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事インデックス

https://note.com/mishnah/n/nd780d32f266c


(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef

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