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口伝律法ミシュナ『Kilayim(キルアイム)』の全法理 第7回:動物の異種交配禁止と共同使役制限の全法理:ラバの母系系列判断および申命記22章10節の網羅的拡張(耕作・牽引・誘導)

*口伝律法ミシュナ『Kilayim』第8章に基づく動物の異種混交禁止を徹底解説。

 人為的交配の禁止とラバの母系系列判断(馬系列・ロバ系列)に触れ、申命記22章10節(牛とロバの使役)を拡張した、禁止される動物の組み合わせを網羅。更に耕作・牽引・誘導の定義から、人間との共同使役の例外まで手加減抜きで詳解。


前回の振り返り:衣類の異種混交(shaatnez)における着用定義と実務規定の総括(第9章2節〜6節)


 前回は口伝律法ミシュナ『Kilayim(キルアイム)』第9章2節から6節に基づき、衣類の異種混交(shaatnez:シャアトネズ)における「着用」の厳格な定義と、実務上の例外規定について解説した。

 主な内容は以下の通りである。

【1】「着用」禁止の絶対性(9章2節)

 shaatnez(羊毛と亜麻の混紡)を身に着けることへの禁止は、状況を問わず非常に厳格である。

①場所を問わない

 公の場だけでなく、家の中やプライベートな空間での「カジュアルな着用」も一切許されない。

②直接触れなくても禁止

 重ね着をしていて、shaatnezの衣類が一番上にあり直接肌に触れない状態であっても、それをまとうことは禁じられている。

③不当な状況でも禁止

 役人による不当な取り立てから逃れるために、商品を私物に見せかけて着用することも許されない。

【2】使用目的による分類と例外(9章3節)

 「身にまとう(着用する)」目的ではない布製品については、一部例外が認められている。

①非着用品

 トーラの巻物を包むタオル、ハンカチ、バスタオル(または雑巾やふきん)などは、着用を目的としないため、shaatnezであっても禁止対象ではない。

②ラビ・エルアザルの異論

 寒い時に手に巻いたり膝に載せたりする可能性があるとして、これらも禁止すべきだと主張している。

③床屋のエプロン

 目的は毛除けであるが、形状が衣類に近い(体にまとう仕様である)ため、kilayimの適用対象となる。

【3】死者と動物に関する規定(9章4節)

①死者の経帷子

 律法の遵守義務は生きている者に課せられるため、死者にshaatnezの経帷子を着せて埋葬することは許される。

②ロバの鞍(サドル)

 座ることは「着用」ではないため、皮膚に触れる恐れがない硬い作りの鞍であれば使用可能である。ただし、そのブランケットを肩にかけたりすることは禁じられている。

【4】商業行為における「自己利益」排除の法理(9章5節〜6節)

 商人や職人が業務上shaatnezを扱う際の判断基準は、「自分に便益(防寒や遮光など)があるか」という点にある。

①衣類を売る商人

 顧客に試着イメージを見せるために自らまとうことは許容されるが、それが「寒さをしのぐため」や「日差しを避けるため」といった自身の利益を兼ねてはならない。

②仕立て職人

 縫製のために生地を膝や「もも」の上に置くことは認められるが、同様に「暖を取る」などの目的が含まれてはならない。

③敬虔な者(熱心な者)の振る舞い

 認められている状況であっても、あえて着用せず竿にかけたり、膝の上ではなく地面に置いて作業したりすることで、疑わしい行為を避けるべきだとされている。

 総じて、衣類のkilayimの核心は、単なる物理的な接触の有無だけでなく、「その行為によって自らが便益を得ているか」という客観的な目的を問う点にあると言える。

 以上の内容に不安を感じる方は、下のリンクから確認して欲しい。

◉口伝律法ミシュナ『Kilayim(キルアイム)』の全法理 第6回: 「着用」の厳格な境界線と、衣類を売る商人・仕立て職人の商行為における「自己利益」排除の法理(9章2節〜6節)

https://note.com/mishnah/n/nf755876eaa64


動物のkilayim(異種交配禁止)の基本原則と母系系列判断(第8章1節)


 今回はその続きで、kilayimの4原則の最後の一つである動物のkilayimについて扱う。まずは口伝律法ミシュナ「Kilayim」8章1節を引用する。

 ぶどう畑のkilayimは植えること、維持すること、使用収益することを禁止される。
 植物のkilayimは植えること、維持することを禁止されるが、食べること、使用することは許容される 。
 衣類のkilayimはあらゆる仕方で許されるが、着ることは不可である 。
 動物のkilayimは育てることも、飼うことも出来るが、交尾させることは出来ない。

(Kilayim 8:1)

 既に学んだところだが、最初の3つについて簡単に振り返る。

①ぶどう畑

 栽培・維持が禁止されるだけでなく、収穫物の使用や利益を得ることも禁止され、焼却義務がある。

②植物(穀物・野菜)

 栽培・維持は禁止であるが、食べること・使うことは許容される。

③衣類

 作ることや所有すること、売却などは許されるが、身に着けるこは禁止される。

 今回は最後の「動物のkilayim」を扱う。まずは異種の交配禁止について、トーラから引用する。

 あなたたちはわたしの掟を守りなさい。二種の家畜を交配させたり、一つの畑に二種の種を蒔いてはならない。

(レビ19:19)

 異種交配の禁止について、より具体的には「Kilayim」8章1節に書かれている。

 動物のkilayimは育てることも、飼うことも出来るが、交尾させることは出来ない。

(Kilayim 8:1)

 禁止される行為は人為的に交尾させることである。同じ囲いの中で飼うことは許される。同じ場所で飼うことの許容は「動物のkilayimは育てることも、飼うことも出来る」部分に示されている。

 続きには次のように書かれている。

ラバの交配における母系主義と系列判別(馬系列とロバ系列)

 kilayimの動物は、互いに不可である。

(Kilayim 8:1)

 この「互いに不可」は交配を指しているが、本節の「kilayimの動物」は単に異なる種類であることを意味しない。

 たとえばラバは馬と雌ロバの雑種であるが、母が馬であるか、母がロバであるかによって、区別することをも教えている。

 具体的に説明すると、以下のようになる。

①雄ロバと雌馬の間の子であるラバ

 馬の系列になる。

②雄馬と雌ロバの子であるラバ

 ロバの系列になる。

 つまりラバは母の系列に属する。そこで「①のラバは馬の系列」に属し、「②のラバ」はロバの系列に属する。

 このように、同じ種類同士の子であっても、必ずしも同じ種類の子と見なされるのではない。

 もしも①と②を人為的に交尾させるなら、kilayimの掟に抵触する。

 以上で異種交配の禁止について解説を終えた。

異なる種類の動物による使役(耕作・牽引・誘導)禁止の法理(申命記22章10節 / 「Kilayim」第8章2節)


 ここからは異なる種類の動物を一緒に働かせる(使役する)ことの禁止について解説する。まずはトーラから引用する。

 牛とろばとを組にして耕してはならない。

(申22:10)

 この節では「牛とろば」についてしか言っていないが、これは代表的なものとして挙げているだけである。「Kilayim」8章2節には次のように書かれている。

 家畜と家畜、野生動物と野生動物、家畜と野生動物、野生動物と家畜、kosherでない動物とkosherでない動物、kosherとkosher、kosherでない動物とkosher、kosherとkosherでない動物、-これらの組み合わせで耕作すること、引っ張ること、誘導することは禁止される。

(Kilayim 8:2)

 kosherの読み方について、英語圏で、また日本でも食品業界やビジネスの場では「コーシャ」と一般的に呼ばれていると思われる。
 
 ここではヘブライ語に準じて「コシェル」と表記する。トーラでは食べてよい生き物と食べてはならない生き物を区別しているが、食べてよい生き物をkosher(コシェル)と呼ぶ。

 トーラでは「牛とろば」にしか言及していないので、「一緒に働かせてもよい組み合わせ」を考えることのないように、あらゆる禁止される組み合わせを列挙している。

 箇条書きにすると、以下の通りである。

①家畜同士であろうと、異なる種類であるもの。

②野生動物同士であろうと、異なる種類であるもの。

③家畜と野生動物
 
④野生動物と家畜
 
⑤kosherでない動物同士であろうと、異なる種類であるもの。

⑥kosher同士であろうと、異なる種類であるもの。

⑦kosherでない動物とkosher

⑧kosherとkosherでない動物

 おそらく⑦と⑧は、どちらが雄でも、どちらが雌でも禁止されることを言っている。

 要するに如何なる動物の組み合わせであろうと、異なる種類を一緒に働かせてはならない。

使役行為(耕作すること・引っ張ること・誘導すること)の具体的定義


 使役の具体的な内容について、申命記22章で禁止されていることは耕作だけであるが、本節では「耕作すること、引っ張ること、誘導することは禁止される」とある。
 

 「引っ張ること」とはリードでその動物を引っ張ることを指し、「誘導すること」とは動物を叩いたり蹴ったりして動かすことを指す。
 
 タルムードによれば、ラクダは通常引っ張られ、ロバは通常誘導される。

 通常ある動物が引っ張って動かすのであれ、誘導して動かすのであれ、異なる動物を同時に動かそうとしてはならない。「耕作すること、引っ張ること、誘導することは禁止される」とはそのことを言っている。
 
 例えばラクダとロバを一緒にして、引っ張って動かそうとしたり、叩いて動かそうとしてはならない。

 ここに列挙された組み合わせは、交配でも禁止されることは言うまでもない。

人間と動物の共同使役における例外許容規定(第8章6節)


 人間はどうであろうか?次のように書かれている。

 人はこれら全てと許容される。-引くこと、耕すこと、リードすること。

(Kilayim 8:6)

 申命記22章で禁止されているのは、人間以外の動物の組み合わせである。人間と動物で一緒に仕事をすること、または人間と動物に仕事をさせ、他の人間がその組み合わせを指導することは許される。

 以上でkilayimに関する解説を一通り終えた。

(この記事は、旧約聖書の最高権威モーセ五書[トーラ]と口伝律法[ミシュナ]及びその膨大な参考書の研究に基づいています。日本語圏における聖書学の再構築を継続し、さらなる『掃除』を推し進めるための研究費として、志ある方のご支援をいただければ幸いです)

 シリーズ目次は以下からご覧になれます。

◉【シリーズ目次】ミシュナ『Kilayim』法理研究

https://note.com/mishnah/n/nbf78cc478503


 本記事周辺の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【全体目次Vol.1】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事リスト(No.1〜No.200)

https://note.com/mishnah/n/nf0de8c6c7334


 全記事の時系列目次は以下からご覧になれます。

◉【時系列総目次】ミシュナと旧約聖書・新約聖書:全研究記事インデックス

https://note.com/mishnah/n/nd780d32f266c


(ミシュナの構造による目次は以下からご覧になれます)

◉ミシュナの部(seder)に基づく全記事の目次

 ミシュナは生活と信仰の全領域を「種子」「祭日」「女性」「損害」「聖物」「清浄」の6つの部(セデル)で網羅している。各記事を法典本来の分類に配置し直すことで、2,000年前の「律法の現場」における聖書の背景をより明確に提示する。

https://note.com/mishnah/n/n4ccb130fe6ef


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