【注目の1ページ】「病院が救急車を受け入れられない」本当の理由──第8次医療計画が示す“救急医療の再構築”
■ “地域医療構想”というと、病院のベッドの話だと思っていませんか?
──でも実は、いま国が見直しを進めているのは「病床の数」だけではありません。
救急医療の体制も、その大きな柱の一つです。
厚生労働省が公表した第8次医療計画の見直しポイント(2025年7月)では、地域医療構想における「救急搬送と受け入れ体制」の強化が強く打ち出されています。
■ 救急医療をめぐる課題は、いま現場で何が起きているか
報道などでも、「救急車のたらい回し」や「搬送先が決まらず1時間以上かかる」といった話題がたびたび取り上げられています。
現場で起きているのは、たとえばこんなことです。
高齢者の救急搬送が増加
軽症での救急車利用が多く、三次救急(高度救命)に負担が集中
搬送先の病院と救急隊との情報連携不足
夜間・休日の受け入れ先の確保が困難
こうした現状を受けて“断らない救急”から“つなぐ救急”へと考え方をシフトする必要が出てきました。
■ 第8次医療計画が示す「救急医療の再構築」
厚労省の資料(下記PDF19ページ)では、今後の救急医療の再構築に向けて、重点的に取り組むべき方向性が整理されています。
一次救急、二次救急、三次救急の役割分担と連携強化
救急ワークステーション(救急車やドクターカーの拠点整備)
医療機関・行政・消防の三者でつくる地域搬送体制の整備
高齢化に伴う搬送増加を見越した救急医療計画の再設計
つまり、病床機能の分化だけではなく“どこで命を支え、どう搬送するか”まで含めた再編が進められています。
■高齢者の救急搬送、その先にある「望ましい医療」とは?
また、第8次医療計画では、居宅や介護施設からの救急搬送が増加している現状にも言及されています。
特に高齢者の場合、「救急車を呼ぶかどうか」や「どこまで医療を行うか」は、本人や家族の意向によって大きく異なります。
そのため今後は、地域包括ケアシステムの中で、医療・介護関係者が“患者の希望する医療”を必要な時に確認できる体制の整備が求められています。
厚労省は、以下のような方向性を示しています:
ACP(アドバンス・ケア・プランニング)を日常的に行う
自治体・医療従事者が、「人生の最終段階において望む医療」について、家族や本人と対話する機会を設ける
医療・介護現場が、いざというときにその意向を共有・尊重できる仕組みを構築する
こうした取り組みは、「搬送後の医療」をめぐる混乱や過剰医療を防ぎ、本人の尊厳に沿った医療と看取りを支えるものです。
■ 地域によって、すでに取り組みが始まっています
たとえば、以下のような取り組みが全国で始まっています:
医師が同乗するドクターカーの運用(※一部地域では24時間体制での運用も報告されています)
救急隊と医師がリアルタイムで連携できる情報共有体制の整備(資料上は「消防と医療機関の情報連携の強化」)
軽症者の救急車利用を抑制するため、相談体制の整備や適正受診に関する住民向け広報も進められています(※資料上は「相談体制の整備や軽症者への対応の適正化」)。
都市部だけでなく、地方でも、救急の“つなぎ方”を再構築しようとする動きが見られます。
■ 厚労省資料はこちら(該当:19ページ)
https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/001521527.pdf
■ おわりに──「救急医療」も、地域全体で支える時代に
第8次医療計画は、単なる病床数の計画ではなく、地域の医療・介護・福祉をどうつないでいくかという総合的なビジョンを持っています。
その中でも、「救急医療」はまさに命の入り口。
だからこそ、「救えるはずの命をどう守るのか」という視点で、体制の見直しが始まっているのです。
noteでは今後も、こうした資料の注目ポイントを取り上げながら、「地域医療構想」をわかりやすくお届けしていきます。
▶関連記事
