障がい者グループホームのリアルと5つのつまずき──制度だけでは語れない、お金の支援
「グループホームって、月にいくらかかるの?」
「お金の管理は、誰がやるの?」
相談を受けるときによく聞かれる質問です。
制度や資料を見れば、家賃や補助の金額は載っています。
ただ、実際の現場ではその通りにならないことも多く、数字の間にはいろんな事情や感情が入り込みます。
この記事では、制度や費用の概要に加えて、現場でよくある5つの金銭トラブルと、その中で行われている支援の工夫を紹介します。
支援者として、家族として、どこまで任せるのか――
「お金の自立」をどう支えるか、一緒に考えてみませんか?
第1章|制度と現実──障がい者グループホームの金銭事情
🏠 家賃
相場:3〜6万円台(立地・築年数・設備で変動)
補助制度
特定障害者特別給付費(月1万円)
自治体の家賃補助(月1万円前後/市町村差あり)
生活保護利用者は住宅扶助上限まで自治体負担(実質負担ゼロ)
現場コメント
同じ家賃でも、建物のタイプや部屋の条件はさまざまです。事業者は地域の相場や生活保護の住宅扶助上限額に合わせて家賃を設定します。
最近は、ラグジュアリー仕様で家賃高めのホームも増加傾向。
部屋によって広さ・和室洋室・日当たり・騒音なと環境は異なるため、見学時に必ず確認を。
短時間でも部屋で過ごし、体感してから決めるのがおすすめです。
🍽 食費
朝食:約300円〜
夕食:約500円〜(昼は通所先が多い)
月額:25,000〜30,000円程度
安さ重視=レトルト中心、高め=手作り・健康配慮型
現場コメント
安いからと入居したら全食レトルトだった例もあれば、高めでも野菜たっぷりの手作りや健康配慮型の食事を提供するホームもあります。
健康や生活満足度に直結する毎日の食事。
見学時は献立表や実物を見せてもらい、味や量、栄養面も確認しましょう。
💡 光熱費・日用品費・通信費
月額:10,000〜15,000円
固定額制と実費制があり、建物形態で異なる
日用品には共用のトイレットペーパーなどが含まれるのが一般的 ただし、何を共用に含めるかはホームによって異なる。
例:共用のシャンプー・ボディソープ・洗濯洗剤まで備え付けるところもあれば、各自持参のホームもある。
現場コメント
一軒家型はメーターがないため固定額制が多く、アパート型は実費制が多いです。
固定額制は安心感がある一方、実費制は節約意識が高まりやすい特徴も。
固定額制でも、年度末に実際の使用量に基づいて精算するのが基本です。
契約前に清算方法を確認しておくと安心です。
あわせて、
日用品の範囲(共用のトイレットペーパー・洗剤・シャンプーなど)
Wi-Fiの有無や使用料
も事前に確認しておくと、入居後のギャップを減らせます。
💰 月額合計の目安
家賃・食費・光熱費で月6〜8万円前後。多くは障害基礎年金+1〜2万円で暮らせる設計です。
第2章|支援の“あいだ”にある迷い
「お金が足りなかったら、また送るから」
親が本人にかける言葉としてよく耳にします。それは優しさでもあり、不安の裏返しでもあります。
現場コメント
「本人に任せたいけど任せられない」という葛藤は多くあります。
無駄遣いの心配、親の高齢化、管理し過ぎによる自立阻害――
こうした感情は制度だけでは解消できません。
第3章|金銭管理の4つのパターン
親が管理(ホームと預り金契約あり)
安心感は大きいが、自立準備が進みにくい。親が元気なうちから段階的に本人に管理を委ねる練習や、親の代わりを管理を担う人をあらかじめ決めておくと安心。家族信託も選択肢。後見人が管理
法的保護力は高いが、費用も発生。いったん開始すると原則長期継続で、終了・変更には家庭裁判所の審判など正当事由が必要。開始前に他制度と比較し慎重に判断。日常生活自立支援事業(あんしんセンター)
月1回程度の訪問で金銭出納・支払い代行。急な支払いには不向きだが、多くは非課税世帯で無料または低額利用可能。本人管理(支援付き)
自立への一歩だがリスクもあるため、金額設定や支出の分け方を工夫。定期的な振り返りが必須。
第4章|グループホームの金銭管理の限界
金銭トラブルを避けるために、ホーム内で預り金管理をしない方針の法人もあります。また、制度や契約があっても全額管理は難しく、本人の意思と安全配慮の間で調整が必要です。
一方、買い物やATMへの同行など丁寧な関わりも多く行われているのが実情で、他機関との役割分担が求められます。
現場コメント
アプリ課金、食費削減による健康悪化、親の高齢化、全額使い切ってしまうなどのトラブルは日常的に発生します。
「失敗させたくない親」と「経験させたい支援者」の間で揺れる場面も多く、同じ制度でも結果は人によって異なります。
第5章|5つの“お金のつまずき”と支援の工夫
※以下の事例は、個人情報保護のため一部内容を変更していますが、背景や支援の方向性は実際の現場に基づいています。
①節約のつもりが健康悪化
40代男性。節約とダイエット目的で食費を極限まで削り、朝はヨーグルト、昼は半額パン、夜は納豆と豆腐のみ。半年ほどで体力が落ち、階段でつまずくことや外出後にぐったりする日が増えた。
空腹と栄養不足から衝動的な間食やコンビニ弁当購入が増え、結局、食費は節約前より高くつくようになった。
➡️夕食だけ栄養バランスの取れたホーム食に戻し、週500円のおやつ積立を導入。支援員と一緒に買い物をし、甘いものや果物も楽しめるように。
体力も回復し、外出や通院も無理なくこなせるようになった。「おやつがあると気持ちが楽」と笑顔が増え、衝動的な間食も減った。
②スマホ代未納で孤立
20代女性。動画やゲーム課金で通信費が月2万円超。未払いでスマホが停止し、通院予約や支援者への連絡が途絶え孤立状態に。スマホが使えないストレスからイライラや不眠も悪化した。
➡️格安SIMへ変更し通信費上限を設定。支援員とアプリ管理を共有化し、課金や長時間利用を防止。通信費は半減し、毎月の明細確認が習慣化。連絡が途絶える不安がなくなり、支援者や友人とも落ち着いてやり取りできるようになった。
③躁状態による浪費
双極性障害の30代男性。躁状態になると衝動買いが止まらず、月半ばで生活費が尽きる。過去に家族へ繰り返し援助を求めて迷惑をかけてきたため、家族も援助を拒否。食費や交通費が不足し、夜間支援員に借金を申し込んだりと生活は不安定だった。
➡️日常生活自立支援事業(あんしんセンター)を利用し、通帳と印鑑を預ける。月1回交付された生活費をホームが預かり、1日1,500円ずつ小分け支給。通帳・印鑑はあんしんセンター、日常運用はホームという分業で浪費が減り、生活が安定。お金を無心される心配がなくなったことで、家族との関係もやや改善した。
④逆転構造になった親子関係
生活保護を受ける20代男性。頻繁に実家へ外泊し、親との食事代を本人が負担することが習慣化。本人の生活費が親の家計補助となり、本人の生活が不安定に。
➡️制度の見直しと親子の生活分離を支援。親を介護保険や福祉制度の窓口につなぎ、食事や生活援助を制度内でカバー。双方の家計と生活が安定し、「会うときはお金の心配をしなくていい」と関係も改善。
⑤お金があっても支援が必要
40代女性。仕送りと年金で十分な収入があるが、フードデリバリーや通販、タクシー利用が頻回。ホーム入所後に体重が急増し、生活習慣病のリスクも高まった。
➡️週ごとの予算袋とチャージ式カードを導入し、「使いすぎる前に相談する」ルールを設定。支援員が買い物計画を一緒に立て、バランスの良い食事を確保。浪費と体重が減少し、「計画的に使うのが楽しくなった」と語る。
支援付き金銭管理の3ステップ
本人の希望や価値観を聞く
「自分のお金なのに、なぜ管理されるのか?」という疑問は自立の入口。 どうしたいかを聞くことが重要。必要な支援内容をすり合わせる
1週間ごと支給、支出の記録共有、大きな買い物の事前確認など、支援範囲と本人の自由範囲のバランスを話し合う。記録とフィードバックを習慣化
成否ではなく振り返りを重視。自立は経験の積み重ねで育つ。
上限設定と“見える化”のすすめ
「管理」は取り上げることではなく、見える形にして安心して任せること。
上限を一緒に決めて可視化すれば、支援者が交代しても引き継ぎやすい。
第6章|まとめ
「できない」は「経験していない」だけの場合も多い
支援と自由のバランスは仕組みで補える
親・支援者・本人が譲れない条件を共有することが大切
金銭管理は制度や契約だけでは完結せず、他者との関係性の中で育まれる力。
小さな工夫や経験の積み重ねが、安心した暮らしにつながります。
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