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『まさに安倍晴明』って何だよ?|陰陽師は妖怪退治の人ではなかった

歴史シリーズ第二回
今回は、陰陽師 安倍晴明

このシリーズ、続いてたの?
うん。そうみたいだね。

作者も終わったと思ってたよ

――創作のイメージに隠れた、平安の専門職

羽生結弦の『SEIMEI』。
まず、こちらを見てください。

すごい。
美しい。
まさに陰陽師。
まさに安倍晴明。

待て待て待て。

まさに安倍晴明
まさに陰陽師ってなんだよ

それは、映画の陰陽師のイメージだろ。

このイメージの陰陽師、
本当の安倍晴明なのか。

たぶん違う。
いや、絶対に違う。

羽生結弦の『SEIMEI』
映画『陰陽師』のイメージがかなり強い。

そして映画『陰陽師』も、史実ではなく創作です。

創作からの創作。

野村萬斎の安倍晴明。
羽生結弦のSEIMEI。
白い衣装。
五芒星。
式神。
呪術。
平安の闇。

うん。
めちゃくちゃカッコいい。
いや、だからフィクションだってば!

そして、よくわからない。
結局、陰陽師ってなに?

妖怪を倒す人?
札を投げる人?
式神を使う人?
「急急如律令!」の人。

これはもう創作に引っ張られているのか?

鬼殺隊がいないことはみんな知ってる。
そして、鴨川ホルモーという競技がないこともみんな知ってる。

でも、陰陽師は違う。
なぜか、そういう人がいた気がする。

いや、実際に陰陽師はいた
安倍晴明も実在している。

だからこそ、ややこしい。

完全な創作なら、創作だとわかる。
ただ、実在の人物と創作のイメージが重なると、どこまでが本当で、どこからが創作なのかわからなくなる。

天草四郎が魔界転生のイメージに塗り固められているのと同じだ。
※天草四郎編もいつか書きたい

いや、たとえるならもっとわかりやすくたとえなさいよ!

三国志の『桃園の誓い』なんてなかった。
桃園で義兄弟の誓いを立てる名シーン。
後の創作です。

聖徳太子の十人の話を聞き分けるのも伝説です。もはや、イメージが独り歩きしてる。

創作の安倍晴明。
映画の陰陽師。
羽生結弦のSEIMEI。
神社に並ぶ五芒星。

なんなら神社まで、こちらが期待する「陰陽師っぽさ」に寄せてきている気がする。

好きです。
とても好きです。
そう安倍晴明神社は阿倍野だ。

安倍晴明神社 安倍晴明像

そう、『あべの』。
心のふるさと『あべの』(阿倍野区)である。

そこに住んでた頃、陰陽師の映画が流行って盛り上がってた。

はい。というわけで。

結局、陰陽師って何をする人なのか。

第二回 安倍晴明

今回は、創作に隠れた安倍晴明。
史実よりも創作が有名な人物。
そもそも、安倍晴明とは、どんな人か

その人物に迫ってみます。

安倍晴明(921年ごろ―1005年)
平安時代中期に朝廷へ仕えた陰陽師。天文得業生、天文博士などを務め、天体観測、占い、祭祀などに携わった。晩年には従四位下に進み、天皇や藤原道長らの信頼を得たとされる。 安倍晴明は、平安時代に実在した人物。


生まれた年は921年ぐらい。
ただ、これは後に作られた安倍氏の系図。
そこに「1005年、85歳で亡くなった」とあることから逆算されたものらしい。

かなり、嘘くさい。
最初からぼんやりしている。
出生地も、父親も、若い頃も、はっきりしていない。

大阪の阿倍野には『生誕地の伝承』がある。
そして、京都には『屋敷跡とされる場所に晴明神社』がある。

どちらが本当なのか。
よくわからない。

昔の英雄には、この「よくわからない」が多い。

たとえば、宮本武蔵や織田信長。
やはり、複数の生誕地がある。
明智光秀にいたっては、生まれた年も、生まれた場所も、よくわからない。

英雄、全国同時多発誕生。

いやいや、そんなわけはない。
ただ、英雄にあやかりたい。
だから英雄はいろんな場所で生まれる。
生まれたことになる。

ただ、晴明は実在した。
これは間違いない

駅から安倍晴明神社の道のりがただ暑かった。

史実の中の安倍晴明

 歴史の記録に晴明の名が登場するのは、960年。天文得業生※として。

※読めません。

天文得業生(てんもんとくごうしょう)

登場からもうアニメや映画みたい。
まさに史実と物語が融合している存在。

さて、 天文得業生とは、天文を学ぶ学生の中から選ばれた上級の研修生のこと。

晴明は、その後、天文博士などを務め、朝廷の仕事に関わる。

よくわからんが絶対に天才だ。
それはわかる。

960年、その時、晴明は40歳前後。
40歳。平安時代に40歳?

しかも晴明は、このあと85歳まで生きたとされている。

85歳。
85歳だ。
現在でも高齢だ。

平安時代である。
そりゃ、尊敬される。
いや、畏れられるかも。

85歳で現役。
縁壱かよ。
立ったまま寿命が尽きる。

そりゃ最強の陰陽師になるわ
老師である。

歴史に登場したのが40歳頃。
もう 登場の時点で師匠側の年齢である。

では、若い頃は、何をしていたのか。
なぜ、突然、頭角を現したのか。

そこはよくわかっていない。
この空白こそが、創作の余白。

天才と言われる老師。
若い頃は謎。
いったいどんな生き方をしてきたのか?

後世の人たちが物語を入れる余白が
そこにはある。

そして、同じ時代を生きた人は?

紫式部や清少納言、藤原道長である。
もう一度書く
紫式部や清少納言、藤原道長。

名だたる有名な貴族たち。
そう『源氏物語』や『枕草子』の時代。
華やかな平安文化。

十二単。和歌。月を眺める貴族。
紫式部、清少納言、藤原道長、安倍晴明

教科書に並ぶ偉人に見える。

歴史上の人物。

しかし、どうだ。
物語の登場人物に置き換えてみよう。

光源氏。藤壺。六条御息所。安倍晴明。

源氏物語の登場人物でも違和感はない。
生霊となる六条御息所。
そして、実在する安倍晴明。
生霊を治めたのかもしれない。

教科書の実在の人物の並びでも
創作の登場人物の並びでも
違和感のない安倍晴明。

史実よりも創作が似合うのかもしれない。

継国縁壱   安倍晴明
継国巌勝   蘆屋道満
才能と嫉妬、光と闇

思わず国民的アニメのキャラが重なる。

天から才能を与えられた者と、その才能を誰より理解してしまった者。

創作の登場人物のイメージを
実在の人物の物語のイメージに重ねる。

実在ではなく、物語の中の人。
安倍晴明の背後には、そんな景色が漂う。

それは、なぜ、だろうか?

平安時代の実際

優雅なだけではなかった。
疫病。 火災。 日食や彗星。
身分の高い人の突然死。

それらは、なぜ起きたのか?
これから、何が起きるのか?

現代のような科学も天気予報も医療もない。
そんな時代。

わからない。
とにかく、わからないことが多い時代。

その世界では、星を見て、暦を読み、吉凶を判断する。いまでいう占いで行動を決める。
それが、陰陽師の仕事でした。

そして、陰陽師?

もう、この漢字がカッコいい。
そして、怪しい。
しかし、妖怪を倒す魔法使いではない。

そもそも、平安時代にも妖怪はいない。
みんな昔は妖怪いたと思ってるかもしれないけど、現実にはいない。

陰陽師の由縁は、朝廷の役所である「陰陽寮」に所属する専門職の名前だからである。

陰陽寮に住む陰陽師
たしかに、いかにも妖怪を倒しそうだ。

字が悪い。
そして、陰陽寮とは?

陰陽寮。雰囲気が漂っている。
陰陽師が集まる寮生活。
陰陽師たちが寝泊まりしている建物。

そうホグワーツみたいな修行する場所を思い浮かべてしまう。

実際は、ただの役所の名前である。
宿舎ではない。宮廷の中にある、暦・天文・占い・時刻管理を担当する専門部署の名前。

現在だと、暦や天文なので
気象庁に近いのもしれない。

仕事は、天気予報である。
妖怪退治は専門外だ。

「本日の業務。午前、暦を作る。午後、鎌倉で鬼退治」

たぶん、そんな予定はない。

星を見て、外出の日を変える。
日が悪ければ、儀式を延期する。

高校野球の雨天中止を判断する。
それのもっと幅広い版だ。

昔の人は、野球をやるやらないだけめはなく、国や人の身を守るためにいろいろ判断していたのだ。 晴明は、妖怪と戦う人ではなく「わからない何か」と向き合う専門職だった。

安倍晴明という物語

安倍晴明が物語になったのは、夢枕獏の小説『陰陽師』からではありません。

実はもっと、はるか昔。
晴明が亡くなった1005年。

その約100年後の『今昔物語集』に、すでに晴明の不思議な話がある。

鬼を見る。
式神を使う。
術比べに勝つ。

もう、かなりイメージの陰陽師。
いや、これは?

イメージの「陰陽師」は、こういう物語から作られたのかもしれない。

安倍晴明は近代になってキャラクター化された人ではない。平安の終わりごろには、すでに物語の中にいた。

1000年前から物語になっていた。

史実の専門職でありながら、100年で伝説になっていた。

現在に置き換えると『文豪ストレイドッグス』の太宰治や芥川龍之介かもしれない。

主役とライバル

もちろん、陰陽師は、安倍晴明ひとりではない。

いや、そりゃそうよ。

野球選手が全員、大谷翔平ではない。
剣士が全員、継国縁壱ではないように
普通の選手や剣士もいるし、なろうとしてもなれなかった人もいる。

陰陽師も同じことだ。
天才以外にもたくさんいた。

陰陽師にも、他の専門家たちがいた。
たとえば、賀茂忠行。

晴明の師とされる人物。

若い晴明が、普通は見えない鬼に気づく。
それを見た忠行が、晴明の才能を認める。

はい。もう物語。

そして、賀茂保憲。

こちらも平安時代を代表する陰陽師のひとりで、晴明の師ともされる。

後の記録では、保憲が暦道を賀茂家へ、天文道を安倍晴明へ伝えたとも言われる。

つまり、陰陽道は晴明ひとりの技ではない。師匠や同僚、家もあり、受け継がれる知識もある。

専門職の世界。
ただ、安倍晴明だけが圧倒的に有名。

それは、なぜか?
その問いに晴明の宿敵、蘆屋道満を考える。

術比べをする男。
呪いを仕掛ける男。
悪の陰陽師。

もはや物語に必要な敵の存在。
ただ、なぜ、そうなったのか?
なってしまったのか?

安倍晴明が主役で、蘆屋道満がライバルなのはなぜか?同じ陰陽師でも片方は正義の大陰陽師になり、もう片方は怪しい敵役に語られるのか。

史実上の実力だけで決まった話ではない。
主役になる物語かあった。

朝廷に仕えた実績。
天皇や貴族からの信頼。

そして、はっきりしない出生。
若い頃の謎。

人間と異界のあいだに立つような
何をしてるのかわからない仕事。

晴明のわからない余白に物語が流れ込んだ。主人公には、ライバルがいる。

劉備と曹操。
頼朝と義経。
小次郎と武蔵。
悟空とベジータ。

強い敵がいるほど、主人公は強くなり物語は面白くなる。そして、道満は、その晴明を強く見せる影になった。

朝廷に仕える晴明に対して
播磨の国の陰陽師。蘆屋道満。

播磨の国とは?
そう故郷、加古川である。

この地図の中に私の実家もある。

ここで、一気に安倍晴明から興味が蘆屋道満に移る。もはや、友だち(幼馴染)じゃないか。

あべのは、第二の故郷と呼んでる場所。
そして、道満の故郷は、自分の故郷でもあった。面白いね。

話を戻します。
なぜ、道満が敵となったか?

平安時代の播磨国は、遠い辺境ではなかった。明石、加古川、姫路などの播磨は、京から見れば近い国であり、隣の大国でもあった。

しかし、京ではない。朝廷の支配が届く場所でありながらも都の外側。

『源氏物語』にも明石の君が登場する。
そう、播磨は、都と無関係な田舎ではない。都の物語が届く場所だった。

ただ、都ではない。

安倍晴明は、京の朝廷に仕えた専門職。
蘆屋道満は、播磨の人物とされる。

都の晴明。中心にいる人物
播磨(隣の大国)の道満。外側にいる人物。

この地域差が、そのまま物語の役割を担ったように見える。有名な中心にいる者が主役になり、少し知らない外側にいる者が影になる。

その外側は、私にとっては地元だった。
遠い悪役ではない。私が育った場所だった。

物語は京で作られた。
たぶん、そういうことだ。

千年の時が、最強にさせた

そして、晴明の物語は増えつづける。

白狐・葛の葉を母に持つという伝説。
式神を操る天才陰陽師というイメージ。
蘆屋道満との対決。

五芒星。
呪術。
平安の闇。

そして現代。

夢枕獏の小説『陰陽師』。
岡野玲子の漫画。
野村萬斎の映画『陰陽師』。
羽生結弦の『SEIMEI』。

アニメ、ゲーム、安倍晴明は、媒体が変わるたびに姿を変える。それが陰陽道だと言わんばかりに。

そうどんなカタチになっても「安倍晴明らしい」作品となる。

史実から伝説へ。
伝説から創作へ。
創作から創作へ。

安倍晴明は、最初から最強だったのではない。物語が千年の時をかけて、最強に進化させた。

本当の安倍晴明とは?

創作のイメージをすべて取り除けば、それは本当の安倍晴明なのでしょうか?

式神、白狐の母、蘆屋道満との対決。
野村萬斎や羽生結弦を通じて感じるイメージ。

それらをすべて失くす。

残るのは、朝廷に仕えた官僚。
星を観測し、日を選び、祭祀に関わった平安時代の専門職です。

それは地味なのだろうか?
いや、たぶん、そんなことはない。

疫病。火災。天変地異。政争。病気や突然死。

何が起きるかわからない時代。
空を見上げ、意味を読み、国の判断をする。

国を操る占い師。
妖怪を倒さなくてもかなり怪しい。

「本当の安倍晴明」は、官僚の姿なのだろうか?

千年も語られ続けた伝説。
安倍晴明が残した歴史です。

史実ではない。安倍晴明が、後世の人たちに想像させた事実である。

それもまた、物語の歴史。

羽生結弦の『SEIMEI』を見て思う。

まさに安倍晴明。
まさに陰陽師。

いや、実物見たことないって。
しかし偽物でもない。

平安時代から続く、安倍晴明の最新のカタチ。創作のイメージで塗り固められた平安の専門職。

そのイメージは、千年後、事実として生きている。

この矛盾が面白い。
1000年前の官僚よりも
術を使い、妖怪を倒す。

そんな世界があってもいい。あなたが思い浮かべる安倍晴明は、どんな姿ですか。

史実の晴明。
説話の晴明。
映画の晴明。
フィギュアの『SEIMEI』。
アニメの晴明。
ゲームの晴明。

現在の官僚も1000年後には、国家や陰謀と戦う超能力者になっているかもしれない。

創作は時代を超える。
だから、歴史は、面白い。

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