MVP ARCHIVE HISTORY|Energy : Energy History EX : ITER / 人類が挑む核融合実験炉


人類が挑む核融合実験炉
太陽は、核融合 によって膨大なエネルギーを生み出し続けている。
その現象を地上で制御し、将来の発電へ利用することを目指して建設が進められているのが、ITER( International Thermonuclear Experimental Reactor )である。
核融合 エネルギーを実用化するために必要な技術を実証する、世界最大級の国際共同実験炉で、フランス南部で建設が進められており、日本、欧州、アメリカ、中国、韓国、インド、ロシアが参加している。
ITERとは
ITER の名称には「 国際熱核融合実験炉 」という意味が込められている。
ITER 最大の目的は、核融合反応 によって、投入したエネルギーを大きく上回る核融合出力を長時間維持できるかを実証することである。
これは商業発電ではなく、将来の核融合発電所へ向けた技術実証の段階に位置付けられている。
なぜ世界が協力するのか
ITER は、一国だけで建設・運用するにはあまりにも巨大で複雑なプロジェクトである。
装置全体は数百万点もの部品から構成され、超電導磁石、真空技術、極低温技術、高耐熱材料、精密制御など、多くの最先端技術が必要となる。
そのため各参加地域が、それぞれの得意分野を担当しながら装置を製作し、フランスへ運び組み立てる方式が採用されている、世界最大級の科学技術協力プロジェクトの一つでもある。
トカマク方式
ITER では、現在もっとも研究が進んでいる トカマク型核融合炉 が採用されている。
核融合炉 の中心技術、ドーナツ状の真空容器の内部へ約1億5,000万℃のプラズマを作り出し、超電導磁石によって容器へ触れないよう浮かせながら閉じ込め、この超高温プラズマの中で、重水素と三重水素が融合し、巨大なエネルギーを放出する。
主な構成
真空容器( Vacuum Vessel ) : プラズマを閉じ込めるドーナツ状の空間
超電導磁石 : 強力な磁場を作り出し、プラズマを浮かせて制御
ブランケット : 高速中性子を受け止めて熱を回収、将来は三重水素を生産
クライオスタット : 巨大な真空断熱容器、超電導磁石を極低温環境で維持
高周波加熱装置・中性粒子ビーム加熱装置 : プラズマを必要な温度まで加熱
燃料
ITER では、
・重水素(Deuterium)
・三重水素(Tritium)
重水素は海水中に豊富に存在する。
三重水素は自然界ではほとんど存在しないため、将来の実用炉ではリチウムから生産する計画が進められている。
ITER でも、この燃料サイクルを将来へつなげるための研究が行われる。
Q=10という目標
ITER で最も重要な目標の一つ
Q = 10
Qとは、核融合反応 から得られる熱出力を、プラズマ加熱へ投入したエネルギーで割った値を示す。
( ※ 例えば50MWの加熱エネルギーで500MWの核融合出力を得られれば、
Q = 10 となる。)
これは発電所としての効率ではなく、「 核融合反応 そのものが十分成立しているか 」を示す重要な指標である。
発電は行わない
ITER は巨大な核融合炉であるが、核融合反応 で発生した熱を利用して蒸気タービンを回す設備は備えていない。
ITER の目的は、「 核融合反応 を安定して維持できること 」を実証することである。
その成果をもとに、次の段階である実証発電炉( DEMO )へつなげることが計画されている。
DEMOへの橋渡し
ITER の次に計画されているのが DEMO である。
DEMO では、核融合反応 を利用して実際に電気をつくり、商業炉へ必要な技術を検証する予定である。
「 研究炉 → ITER( 実験炉 )→ DEMO( 実証発電炉 )→ 商業用核融合発電所 」という段階を経て、核融合 発電の実用化が目指されている。
日本の役割
日本は ITER計画 の主要参加国の一つである。
超電導磁石の製造や、高精度機器の開発など、多くの重要な装置を担当している。
また、茨城県那珂市では JT-60SA が運転されており、ITER と並行してプラズマ制御や 核融合 技術の研究が進められている。
日本は、将来の 核融合 技術を支える重要な役割を担っている。


実用化への課題
ITER が成功したとしても、すぐに 核融合発電所 が完成するわけではない。
長期間の連続運転、高エネルギー中性子へ耐える材料、燃料である三重水素の生産、設備の保守性、建設コストなど、多くの課題が残されている。
ITER は、それらを一つずつ解決するための重要な一歩となる。
未来のエネルギーを目指して
ITER は、人類が初めて本格的に「 太陽のエネルギー 」を地上で利用しようとする挑戦である。
ITER によって得られるデータや経験は、次世代の 核融合 発電所へ受け継がれていく。
実用化にはなお時間を要すると考えられているが、世界各国が長期的な視点で協力を続けている理由もそこにある。
ITER は、一つの実験炉であると同時に、人類の将来のエネルギー技術を切り開くための国際共同プロジェクトなのである。
Archive Point
ITER は、核融合エネルギー の実用化を目指して建設が進められている世界最大級の 国際共同実験炉 である。
重水素と三重水素を燃料とし、約1億5,000万℃のプラズマを超電導磁石によって閉じ込め、投入エネルギーを上回る 核融合 出力( Q=10 )の実証を目標としている。
ITER は、将来の 核融合 発電所へ必要な技術を確立するための実験施設であり、その成果は次世代の実証炉( DEMO )や商業用核融合発電所へとつながることが期待されている。

