MVP ARCHIVE HISTORY | Economic : New Deal 1930年代 / ニューディール政策 - 危機に立ち向かった国家の再設計

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ニューディール政策 - 危機に立ち向かった国家の再設計
1929年、アメリカの株式市場の暴落をきっかけに始まった 世界恐慌 は、銀行の破綻、企業倒産、生産の縮小、大量失業を引き起こした。
1933年、フランクリン・D・ルーズベルト が大統領に就任すると、アメリカ政府はこの危機に対して、それまでとは異なる規模で経済と社会への介入を始めた政策が「 ニューディール政策( New Deal )」である。
金融制度の安定化、失業者への救済、公共事業、農業支援、産業政策、労働者の権利、社会保障制度の整備など、1930年代を通じて進められた一連の政策と制度改革の総称である。
崩れた経済を立て直す
世界恐慌 によって最初に深刻な問題となったものの一つが、金融システムへの信用の崩壊であった。
銀行が相次いで破綻し、人々が預金を引き出そうと銀行へ殺到し、企業への資金供給も滞り、金融不安が実体経済の悪化をさらに加速させていた。
ルーズベルト政権 は銀行制度再編、預金保険制度整備をし、証券市場への規制を強化して、1934年には証券取引委員会( SEC )が設立された。
単に景気を刺激するだけではなく、再び同じような金融崩壊が起こる可能性を抑えるため、経済を支える制度そのものが作り直されていった。
政府が「仕事」をつくる
失業率への対応は、政府が直接雇用をする大規模な公共事業が行われた。
道路、橋、学校、空港、ダム、電力設備などが各地で建設され、公共事業促進局( WPA )や市民保全部隊( CCC )、テネシー川流域開発公社( TVA )など、多数の事業が展開された。
これは失業者への単純な現金給付だけではなかった。
人々に仕事を提供し、その労働によって社会インフラを整備することで、雇用の創出と将来の生産基盤の形成を同時に進めようとしたのである。
国家と社会の関係が変わる
ニューディール が残した変化は、景気対策だけではない。
1935年には社会保障法が成立し、老齢年金や失業保険など、連邦政府が国民の生活を支える制度が本格的に整備され始め、労働者の団結権や団体交渉権も強化され、企業・労働者・政府の関係も変化していった。
それまで経済活動への介入を比較的限定してきた連邦政府が、金融、雇用、社会保障、労働環境などに継続的な役割を持つようになる。
ニューディール は、アメリカにおける「 政府は経済や社会にどこまで関わるのか 」という境界そのものを大きく動かした。
ニューディールは大恐慌を終わらせたのか
ニューディール 開始後、アメリカ経済は 大恐慌 の最悪期から大きく回復し、銀行制度は安定を取り戻し、生産や所得も回復し、失業者も減少した。
しかし、大恐慌 以前の経済状態が完全に戻ったわけではなかった。
1937年には再び深刻な景気後退が発生し、1930年代末になっても高い失業率が残っていたが、その状況を大きく変えたのが、第二次世界大戦 だった。
1939年にヨーロッパで戦争が始まると、アメリカでは軍需生産と国防支出が急速に拡大する。
さらに1941年の参戦後には、航空機、艦船、車両、兵器、鉄鋼、燃料などを大量に必要とする巨大な戦時経済へ移行した。
工場は稼働し、雇用は急増し、ニューディール 期にも残っていた余剰労働力と生産能力が急速に吸収されていった。
そのため、ニューディール を「 大恐慌を完全に終わらせた政策 」とだけ捉えると、1930年代から1940年代にかけて実際に起きた経済の変化を十分に説明できない。
ニューディール は経済を最悪の状態から回復させ、金融・社会制度を再構築、そして、その後に続いた巨大な戦時需要が、アメリカ経済を完全雇用に近い状態へ押し上げていった。
戦後へ残ったもの
第二次世界大戦 が終わると軍需そのものは縮小したが、ニューディール によって形成された制度の多くは消えなかった。
社会保障、預金保険、金融市場の監督、労働制度、公共インフラなどは、その後のアメリカ社会にも残り続けた。
さらに戦時中に拡大した生産設備、技術、企業、熟練労働力は、戦後の住宅、自動車、家電などの巨大な民間需要へ接続していく。
こうして 世界恐慌 から始まった危機は、ニューディール による制度再編、戦時経済による大規模動員、そして戦後の大量生産・大量消費社会へと連続していった。
ニューディールが残した問い
ニューディール政策 の歴史的重要性は、「 成功した景気対策だったか 」という評価だけでは捉えられない。
市場が大規模な危機に陥ったとき、国家はどこまで介入するのか。
失業や貧困は個人の問題なのか、それとも社会全体で支えるべき問題か。
金融市場の自由と安定を、どのように両立させるのか。
ニューディール によって再設計された国家・市場・社会の関係は、その後の世界各国の政策にも影響を与えた。
そして現在でも、金融危機、不況、社会保障、公共投資、政府支出をめぐる議論の背後には、1930年代に突きつけられた同じ問いが残っている。
ニューディール とは、大恐慌から生まれた一連の政策であると同時に、危機に直面した近代国家が、経済と社会に対してどのような責任を持つのかを問い直した大規模な制度実験だった。

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