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③選んだあとの話──それでもこの人と生きていくまで

▶前回|第2話「小さなズレ」


第3話|子宮腺筋症が発覚した日


ずっと重たい生理に苦しんでいた。
でも、「我慢するもの」だと思ってた。

その日は、明らかに違った。

この痛みは、どこかおかしかった。
横になっても眠れない。
腹部を通り越して、お尻の方まで激痛が走る。

彼があまりにも心配するので、
私は別の病院へ行った。


診断名は、子宮腺筋症。
そして告げられた選択肢は2つしかなかった。

  • このまま擬似閉経を10年するか(高額な薬で)

  • 子宮を全部摘出するか

え、選択肢、2つしかないの。


彼は静かに言った。

「子どもより、君の方が大事だよ」

その言葉に、詰まった。

その言葉が、優しかったのか残酷だったのか、
すぐにはわからなかった。

わずかな沈黙のあと、私は言った。

「一番早く手術できる日でお願いします」

その場で決めた。

潔い決断に、自分でも少し驚いたが、心は静かだった。
静かすぎて、逆に違和感があった。


“子どもを持てないかもしれない”

その現実は、あとからじわじわと
内出血のように効いてくる。

でもその時の私は、ただ思っていた。

もう、この痛みを終わりにしたい。

何十年も苦しめた、
でも別れがたい、私の子宮と、お別れすることにした。


手術は腹腔鏡下手術で行われた。
傷も小さく済んだはずなのに、
”なくした”という実感だけが鈍い。


一人の何もしない時間が長いほど
余計な考えが入り込んでくる。

現実という痛みは、今ごろ鈍くやってきた。

女性のカタチのような臓器を失い、
どう逆立ちしても、もう産むことができないとわかってる。

それなのに、心だけが追いついてきてくれない。

私はこのまま更年期を迎えるだけの、
戸籍上性別が女性なだけの、
なんの肉体なんだろう。

そんなおかしな、ばかげた考えが頭を巡る。


入院中、彼は毎日来てくれた。
たった30分もいられない日もあった。
それでも、必ず顔を見せに来た。

そして懐かしい。
夜9時の電話と、11時のおやすみのLINE。

いつも上手いことは言えない。
それでも行動で気持ちを伝えてくれる。

「うん」とか、「まぁ」とか。
そんな返事ばかりで、少し物足りなさを感じていたのに。

今はむしろ、その方が落ち着く気がする。

私って贅沢だなぁ。
いいじゃない、言ってくれなくても。

それだけでいいかもしれない。

入院中の、痛くて苦しくて、わがままになっていた私。
それでも彼は何も言わず、ただそこにいた。

不完全で、わかりにくい。
それでも私は、
そのめんどくささごと、受け入れたいと思っていた。


▶次回|第4話「選んだあとの話」

失ったもの。
埋まらないズレ。
不完全なままの関係。

それでも私は、
「選んだあとをどう生きるか」を考え始めていた。



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