見出し画像

② 溢れ出ていく歪んだ器──ペラペラになるまですり減っていった


プロローグ



私の周りには、
不思議と疲れた人が集まってくる。

会うたびに元気になっていく彼女を見ながら、
私は何かを吸い取られたように、
ぐったりしてしまう。

悪気はない。
ただ私といると、
元気になれるらしい。

みんな無自覚に、
私から搾取する。


第一章: パンチングマシーン


みんなと飲みに行くと、
楽しさはある。

でもだんだんと、その空気が変わってくる。

そういう人は愚痴が多い。

マイナス思考の人が多い。

私はパンチングマシーンなの?
殴るだけ殴って、スッキリしてる。

私もつい、
親身に耳を傾けてしまう。

なんのバリアも張らず、
剥き出しの心と身体で、
受け止めてしまう。

その無防備な肉体は、
やがて全てを吸い取られ、
お酒の力と共に、私は屈してしまう。

そのあとは、
どうやって家に帰ったかわからない。

でもみんなのざわついた声だけが、
耳に残って鬱陶しい。


第二章: 私が扱いやすかった


みんなに言われる。
いつも明るくて、一緒にいると楽しい。

そう言われても、それは耳障りのいい、
"都合のいい人"のリライトだった。

何を言っても否定しない人。
どんな話も受け止める人。
最後まで聞いてくれる人。
最高のリスナーだった。

それはやさしい友だちではなく、
"扱いやすい人"
そう定義されていたのかもしれない。

気づいたのは、ずっと後だった。

これが異常だということに。


自分が全てを受け入れないといけない、
そうインストールされていた。

結局私の中に、問題があったのだ。

私の中の前提を書き換えない限り、
ずっと続いていく、心の軋み。

沈黙を埋めること。
空気を壊さないこと。
相手の機嫌を伺うこと。

その全部を優先しないといけないと、
自分に課していた。 

そうやって私は、
ペラペラになるまですり減っていった。


第三章: 前提の修正


優しさは、
全部受け止めることじゃなかった。

我慢して笑うことでもなかった。

ただそこにいて、
少しだけ距離を置くことだった。

いい人でいるより、
自分を大切にする方を選びたい。

そうでありたい。




エピローグ


しばらくして、
私は、人と一緒にいても、
少し自分を保つことが
できるようになってきている。

相手の言葉に全部反応しなくなった。
沈黙を埋めることをやめた。
私が選んで帰るようになった。


価値観が覆った。
何も起こらない。

でも、何も壊れなかった。

私が、壊れないようにと、
大事に守ってきたものが

ただの歪んだ器だったことに気づいた。


そのあとは、
張り詰めていたものが、
ふっと緩んだ。

私は今、搾取される側じゃない、
私が選んで空気を作る側になれた。



────────────────
▶ 同じ根っこ
求められるほど、
自分が薄くなっていく気がした。


▶︎ その器は、どこで歪んだのか
壊れたんじゃない。
最初から、そうなるように作られていた。

▶︎ それでも、愛されたかった
満たされたいのに、
壊れる方へばかり向かってしまった。


いいなと思ったら応援しよう!