『直感が欲しい』と嘆く前に、まずは笑って左脳を黙らせなさい




「直感が欲しい」「もっとスピリチュアルな才能があれば」
そんなふうに、自分にはない架空のプレミアム機能を欲しがって、青い鳥を探しに出かけた経験はないだろうか。
かく言う私も昔はそうだった……と寄り添いたいところだけれど、残念ながら私は元々この標準機能(初期装備)の感度が高いほうだ。だからこそ、あえて言わせてもらう。
「直感が欲しい」と嘆くこと。それは心理学的に言えば、「今の私には直感という素晴らしい機能がスッポリ抜け落ちております」と自らの脳に向けて盛大に自己申告しているようなものなのだ。言ってみれば、思考の癖が、あなた自身の可能性を勝手に制限してしまっているわけね。
70年代レトロポップなサイケデリック柄の壁紙に、アンバーな照明がねっとりと溶け込む純喫茶「天の川」。壁一面のLPレコード棚から流れるBGMを背に、今日も店の奥のボックス席では「波動研」の面々がたむろしている。
天然パーマの高校生、通称・オバチャンが、テーブルに広げたオカルト雑誌の『手相特集』を食い入るように見つめていた。
「うわぁ……俺の親指、ツルツルだ!『仏眼』がどこにもない!霊感ゼロの凡人確定じゃん……終わりだ……」
頭を抱えてこの世の終わりのように嘆く彼に、私はL字カウンターの中から、いつものうずまきキャンディを片手に呆れ顔で声をかけた。
「……あんたねえ。仏眼なんてただの関節のシワじゃないの。親指を曲げ伸ばしするのに必要なんだから、誰にだってあるでしょうに」
私は両手の親指をクイッと曲げて、くっきりと浮かぶシワを見せつける。
「五十鈴さんの言う通りです。手相というより関節の構造上の問題ですね。ちなみに、僕の親指にもくっきりと刻まれていますよ」
隣に座る七三分けに黒縁メガネの超秀才、有栖川くんが、詰襟の学生服をピシッと鳴らしながら理論然とした口調で自分の親指を突き出した。
「うそっ!?有栖川くんにもあるの!?しかも、全部の指に!?じゃあ俺だけシワがないってこと!?シュン……」
凡人宣告を食らったかのように、さらに肩を落とすオバチャン。そこへ、前髪オンザ眉毛のおかっぱ頭がトレードマークの幼なじみ、とんちゃんがそっと身を乗り出した。
「……オバチャン、大丈夫だよ。私にもそんなシワ、全然ないからさ……一緒に頑張ろ?」
「とんちゃん……!(うるっ)」
少し小太りなとんちゃんに慰められ、なぜか感動の涙を浮かべるオバチャン。カウンターの端っこでは、看板兎であるオスのホーランドロップ、はしぞうが未(ひつじ)の着ぐるみを揺らしながら、「平和っすねえ」といった顔で麦茶をすすっていた。
仏眼があるから特別で、ないから凡人。
私たちはなぜこうも、目に見える形やラベリングにすがりたがるのだろうか。
「直感が欲しい」「どうすれば論理的に身につくか」。そうやって頭を悩ませている状態そのものが、実は一番直感から遠ざかっているんだと思う。
いいこと?「こうするべき」「こうであるはず」という左脳(言語・論理)がフル稼働しているとき、私たちの右脳(感覚・パターン認識)はかなり静かになるらしい。取扱説明書を読みながら自転車に乗ろうとするくらい、ズレたことをやってるわけね。
直感を磨きたいなら、まずはそのうるさい左脳の、いわば「司令塔モード」をリセットする必要がある。
一番手っ取り早いのは、体を動かして脳を騙すこと。
私が開店前のスタッフルームでこっそりやっているように、両手を上げて全身を波打つように揺らす「昆布笑い」の笑いヨガなんて最高よ。
お腹の底から「ハハハ!」と笑ってみる。笑っているその瞬間、人間は論理的な思考を維持しづらくなる。左脳の「べき・はず」という判断が、一時的に背景に引っ込む。さらに、笑うことで自然と深い腹式呼吸になり、たった数分で瞑想したあとのような「副交感神経優位」の状態が出来上がるのだ。
脳が考える前に、体が先に整う。そこで、自分の中心に問いかけてみるのだ。
「今、私は何がしたいのか」「この決断、本当に私の心からのものか」。そうやって自分に聞いてみると、「あ、今の言葉はなんか違うな」という微細な違和感(直感信号)を、体が即座に拾い上げてくれるようになる。
そして面白いことに、この「問いかけ」を繰り返していると、そのうちひらめきが得られるようになるんだ。無意識が問いに応答するようになる、ってわけね。
もしあなたが、自分の直感のなさにモヤモヤしているなら、日常に「判断リセット」のルーティンを取り入れてみてほしい。
たとえば、朝の光を浴びながら1分間だけ全身で笑いヨガをしてみる。副交感神経が優位になったフラットな体で、「今日の私は、何が必要なのか」と自分に聞いてみるのだ。
あるいは、SNSやブログに記事を投稿する直前、2分間だけ笑ってからもう一度読み返してみる。固定観念が外れたフラットな脳は、「ここ、実は自分の本心とズレてるな」という違和感を、かなり確実に見つけ出してくれるはずだ。
「ない」と手相を睨んで嘆くのをやめて、まずは笑うこと。
あなたの直感は、他人に教えてもらうものじゃない。自分に聞く ことで、ようやく声が聞こえてくるものなのだから。
とはいえ、長年こびりついた思考のクセや、自分の星がどういう状態で陰転(空回り)しているのか、一人ではなかなか気づけないのも大人の厄介なところだ。
そんなときは、一人で抱え込まずにプロの力を借りるのも賢い選択だと思う。推命ラボの幸来子なら、四柱推命という命式をもとに、あなたが本来持っている才能を温かく紐解いてくれるだろう。
自分の現在地を知ることに、言い訳はいらないわ。
今日も今日とて、まずは体から、それぞれのレンズをピカピカに磨いていきましょう。

