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【宇宙物理学】見えない何かが宇宙にある?それ、暗黒物質です。

──目に見えないのに宇宙を形づくるもの

 暗黒物質。またの名をダークマター。
 以前記事にしたダークエネルギーに負けず劣らずのSFワードですね(笑)しかしこちらもちゃんと科学的に存在が予測されているものになります。
 触れれば闇落ちしそうな名前の物質ですが、実はこの暗黒物質、宇宙では割とありふれた物質と考えられています。


1. 宇宙には“見えない何か”があるらしい?


 夜空の星や銀河を眺めると、宇宙は光で満ちているように見えます。しかし、天文学の研究によれば、私たちが目で見える物質(星・惑星・ガス・塵など)は、宇宙全体のほんの5%程度にすぎません。残りのうち約27%は「暗黒物質(ダークマター)」と呼ばれる、光を放たず、私たちの目では直接観測できない謎の物質だと考えられています。
光らず、観測もできないのに存在すると考えられているのはなぜでしょうか?


2. なぜ暗黒物質があるとわかるのか


 「見えないものをどうやって知ったの?」と疑問に思思いますよね。鍵となったのは、銀河の回転の観測です。

 銀河の星々は重力によって中心に束ねられ、惑星が太陽を中心に公転しているように、銀河の星々も銀河の中心の周りを回っています。
 ある重力源の周りを回転する星の回転速度は、重力源の重力の強さと中心からの距離により決まります。同じ重力源の周りを回転する天体であれば、中心から離れるほど回転速度が遅くなります。ケプラーの第3法則といいます。
 銀河は多数の星が集まってできているので、太陽の周りを公転する惑星ほど単純には計算出来ませんが、それでもこの法則を使ってある程度各天体の回転速度は計算出来ます。銀河内の各位置での重力の強さはある程度計算できるためです。

 ところが、実際の観測結果は予想外のものでした。
外側の星も内側の星もほぼ同じ速さで回っていたのです。

 これは明らかにケプラーの第3法則に矛盾します。この問題は「銀河の回転曲線問題」と呼ばれ、1970年代にはほぼ確定的な問題になっていました。
 同じ重力源では中心からの距離によって回転速度が遅くなる筈なのに、遅くなっていない(むしろ外側の星ほど回転速度が速い観測例もありました!)。
法則は重力源の強さと距離によって回転速度を求めるものなので、法則が正しいとするならば回転速度が速くなるためには重力が強い必要があります。
計算から重力は計算できているはずなのに、さらに重力が強くなければ観測結果を説明できない。
ここらは導かれる推測は、「見えない何か」が重力を加えている…?

 その他にも、銀河同士がぶつかるときの動きや、銀河団全体の質量の測定、重力レンズ効果(光が大きく曲がる現象)など、さまざまな観測が「大量の見えない何か」があることを裏づけています。

 この見えない何かが有する質量による重力が影響していると考えると、種々の問題がうまく説明出来ます。そこでこの見えない何かを暗黒物質と呼ぶことにしたのです。


3. 暗黒物質が光らない理由


 この暗黒物質、存在は確かに予測されているのに見えもしないしどんな観測結果にも存在を示すデータが現れません。
このように直接観測出来ないことを宇宙物理学では「暗い」と表現したりします。
暗黒物質が暗いのは、電磁波をほとんど発しない、または吸収しないためと考えられています。普通の物質は光や電磁波と相互作用しますが、暗黒物質はそれをほとんどしないので、私たちの望遠鏡に映りません。重力だけがその存在を示す手がかりです。まるで「影の住人」が宇宙の骨組みを支えているようなイメージです。


4. 正体の候補たち


 暗黒物質の正体はまだ確定していません。いくつかの候補がありますが、どれもまだ検証段階であり、証拠は見つかっていません。


・WIMP(ウィンプ):弱く相互作用する大質量粒子。理論上は重くて安定しており、重力以外とはほとんど関わらない粒子です。地下の特殊な検出器で探索が進んでいます。


・アクシオン:仮説上の極めて軽い粒子。宇宙初期の理論を補う存在として提案されています。


・巨大な天体群:ブラックホールや暗い矮星などがまとめて質量をつくっている可能性も考えられましたが、観測結果からそれだけでは足りないことがわかっています。



5. 宇宙の骨組みをつくる


 暗黒物質は単なる「目に見えない塊」ではありません。むしろ宇宙の構造をつくる“設計図”のような役割を果たしていると考えられています。

 銀河を形成するには長い時間が必要と考えられていましたが、観測から初期の宇宙でも成熟した銀河が存在していたことが判明しています。これは現在観測できる物質だけでは説明出来ません。
 しかし暗黒物質の存在を加味すると、うまく説明出来ます。暗黒物質が最初に重力の“足場”をつくったことで、普通の物質が集まり、銀河や銀河団が形成されたと考えられるのです。私たちの銀河系や地球も、その見えない骨組みの上に生まれたのです。


6. 日常に隠された神秘


 暗黒物質は直接感じられないものの、私たちの存在を陰で支えていると考えると不思議な感覚になります。たとえば夜空の星の並び、天の川銀河の美しい渦、これらが保たれているのも暗黒物質の重力が背景にあるからです。
普段は見えない「もうひとつの宇宙の素材」に思いを馳せると、身近な星空がより神秘的に感じませんか?


7. これからの探求


 暗黒物質を突き止めるための挑戦は続いています。地上の大型検出器、宇宙望遠鏡、加速器実験など、多方面から研究が進められています。もし正体が明らかになれば、宇宙の進化だけでなく、物理学の新しい法則の扉も開かれるでしょう。

 また、暗黒物質が宇宙全体の重力地図を形づくっていることがより正確にわかれば、ビッグバンから現在までの宇宙の成長のシナリオがさらに精密に描けるようになるはずです。


◇まとめ


 暗黒物質とは、宇宙の約4分の1を占めるのに、光では見えない不思議な物質です。銀河の回転や重力レンズ効果などからその存在はほぼ確実とされていますが、正体はいまだ謎のままです。

 それでも、暗黒物質がなければ今の宇宙の構造も、私たちの存在もなかったかもしれません。目に見えないけれど確かにそこにあるもの――それを知ることは、宇宙の成り立ちを理解する大きな一歩です。

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