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この世界観が凄い【創作大賞感想】

 創作大賞では、毎年さまざまな作品を拝読しています。

 自分では到底思いつかないような奇想天外なストーリーや、ページの隅々から世界観が滲み出てくる作品に出会うと、思わず「あっ」と唸ってしまいます。

 最近はAI時代の到来もあってか、「世界観」そのものがひとつのブームになっているようにも感じます。私の中では、世界観を感じられる作品には「奥行き」があるように思います。(※あくまで私の見解です)

 では、作品の中に世界観を自然と滲ませるにはどうすればいいのでしょうか。その答えを探すように、創作大賞の応募作を読み進める日々が続いています。

今回は、創作大賞の応援期間ということで、私が「この世界観はすごい……」と感じた作品を、いくつか紹介していきます。


一週間しか生きられないロボットの話「living」/スギモトダイキさん

 七〜十日という短い寿命を与えられたロボットたちの物語です。もし自分が一週間しか生きられなかったら、何を選び、何を大切にするのだろう。そんな問いが静かに胸へ落ちてくる、深い余韻を残す作品です。

 まず圧倒されるのが、画力と「見せ方」の巧みさ。コマ割りの緩急、間の使い方──どれを取っても群を抜いていて、ページをめくるたびに心を掴まれます。

 Xで初めて作品を見かけたとき、あまりの完成度に思わず五度見してしまったほど。読み返すたびに新しい感情が生まれ、毎回違う景色が見えるような「奥行き」があります。

 短い命をどう使うのか。濃密に生きるとは何か。限られた時間の中で、ロボットたちが選び取る一瞬一瞬が美しく、切なく、そして仄かに溢れる「力強さ」にくらくらしました。

 ページの端々に作者のこだわりと情熱が宿っていて、終始「絵とストーリーのすごさ」に圧倒され続けた漫画です。ぜひ、一度みなさんに見てほしいです。

どうでもいいけど、やり切りたい|エピソード0:座右の銘/彩野リィさん

 彩野リィさんには、昨年ベストレビュアー賞を受賞された際にお会いしたことがあります。見た目はとてもかわいらしい方で、礼儀正しい女性でした。一方で、ハキハキとした様子から、一本芯の通った「仕事ができる人」のオーラが漂っていて、そのギャップがとても印象的でした。

 当日はあいにくの雨で、私はずっと彼女に傘を差してもらっていたのですが、そのさりげない気遣いにも人柄の良さが滲んでいて、「会社にいたら、先輩から絶対に愛される人だなぁ」と感じました。

#なんのはなしですか

 リィさんは、日常の何気ないものから、さまざまな方々の作品までを「イラスト」という形に昇華する力がとても高い方だと感じています。昨年度は創作大賞の応募作品をイラストで応援されていて、その表現力と「作品をイラストへと変換するセンス」に思わずうなりました。

 作品の空気や作者の想いまでそっとすくい上げ、「イラスト」に落とし込む力が本当に素晴らしいです。

みゆさんの、昨年度の応募作をイメージして描かれたイラストです。私もイラストを描いてもらいましたが、ストーリーの世界観をしっかり落とし込んでくるところ、流石です。

 そんな彼女が今回は「淡いピンクカラー」をテーマに、自身の座右の銘やロリータ服への思いを「コミックエッセイ」という形で表現しています。とくに心を掴まれたのは、ロリータ服への「熱い思い」を描いたエッセイ。

 そこには「かわいい」を追い求める、彼女ならではの揺るぎないこだわりが詰まっていました。

強い気持ちで「かわいい」をまとう。

最後の一文がいいね

 私もかわいいものが好きですが、リィさんの「かわいい」への向き合い方は、ただ「好き」というだけではなく、強くひたむきな情熱そのものを感じました。

 コミックエッセイから漂う「淡いピンクの世界観(そこにこだわりを感じます)」によるイラスト・コミックエッセイは、愛らしいイラストが描かれており、いろんな哲学や思いも出てくるのですが、決して、押しつけがましくないのも、これまた魅力的です。そこに、彼女ならではの「こだわり」を感じました。

99:1/渡鳥さん

 昨日は創作・チャレや企画コラボの小説の中に紛れて紹介してしまいましたが、あらためてしっかり取り上げさせていただきます。

 男女の産み分けが可能になった世界で、「産み分け」そのものに社会が執着していく──その設定がまず圧倒的で、読み始めた瞬間に引き込まれました。摘発を効率化するために密告者へポイントが付与される仕組みがあったり、女の子のいる世帯が増える地域ではアパレルショップや雑貨店が増えたりと、世界の隅々まで「産み分け社会」が浸透している描写が本当に巧みです。

 男社会の中で女性が弱者だった時代を経て、今は少しずつ女性の社会進出が進んでいるものの、まだまだ課題は多いと感じます。子孫を残すことを義務のように求められることに抵抗を覚える女性も少なくありません。

 この物語は、そんな現実の延長線上にある「もしも」を突きつけてきます。

 子を産むこと、結婚すること、社会の中で生きること──どうすれば人々は少子化に陥らず、そして誰もが幸せに暮らせるのか。生きられるのか。読み進めるほどに、胸の奥で「問い」が増えていきます。

 とにかく世界観の作り込みが圧巻で、ページをめくるたびに「あいた口が閉まらない」と感じるほどでした。設定の強度だけでなく、その世界で生きる人々の息遣いまで感じられる、深く考えさせられるストーリーでした。

Emberveil/灰谷燈さん

 壮大な世界観の中で紡がれるファンタジー小説です。幼いころに両親を失ったアリアと、無邪気で愛らしいネアのやり取りは、思わず頬がゆるむほど可愛らしいものでした。

 二人が抱える問題は決して軽くありませんが、ネアがアリアにだけ見せる本音や小さなわがままには、彼女への信頼と温かさが滲んでいます。少しずつ心を開いていくアリアの姿が垣間見れるところに、希望を感じられました。

 物語には、ぶっきらぼうなのにどこか憎めないマーレンなど、魅力的なキャラクターが次々と登場し、物語に厚みを与えています。キャラ設定が丁寧に作り込まれているため、誰もが生き生きと物語の中で息づいている印象です。

 彼らには、時に過酷な試練が訪れます。「人として生き、人として死ぬ」「誰かと共に生きるとは何か」「家族とは何か」「孤独とは何か」。幻想と現実の境界線はどこにあるのか。読み進めるほどに、これまで当たり前だと思っていたことへの「価値」をそっと問いかけられるような、深い余韻が残るストーリーでした。

【完】


追伸
自著「書く人生のはじめかた」もよろしくお願いします!

創作大賞に応募しています。もしよければ読んでいただけると嬉しいです。


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