「○○の際は」が伝わらないのはなぜ?~福祉現場で長年感じていた疑問と、共助崩壊の予兆~
「福祉増進と職員負担軽減との両立をめざす」というテーマで発信している、みきやと申します。関西在住の地方公務員で、2027年4月の統一地方選で地元の市会議員になり、地場産業を取り戻すことをめざしています。
今年の4月に児童扶養手当の基準額改定がありました。
私の職場では、手当額の改定に伴い、所得制限で手当額が0円の方以外全員に通知をお送りしました。
その際に「役所にお越しの際はオンラインでの予約をお願いします」という案内文を同封したところ、全体の2~3%程度の方が特に用事がないにも関わらず予約を入れて来られました。
役所で働いていると、「○○のときは△△してください」という表現が伝わっていないと感じることがよくあります。今回の案内文を送った結果がまさにこれ。
なぜ伝わらないのか。その手掛かりとなることがありました。
きっかけはウラケンさんのVoicy
ウラケンさんこと浦田健さんが、Voicyでアレクサンドラ構文というものを紹介していました。
この放送では「アレクサンドラ構文」が紹介されており、多くの人が文章を読み間違えている可能性があることについて触れていらっしゃいました。
ちなみにアレクサンドラ構文とはこういうものです。
Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
問:この文脈において、『Alexandraの愛称は( )である』の空欄に当てはまる最も適当なものを、
(1)Alex、(2)Alexander、(3)男性、(4)女性、の中から選べ
https://news.yahoo.co.jp/articles/f505f94449606030a14396a2e2d660513fbf255b
機能的非識字
この放送やYahooニュースでも触れられていたのが機能的非識字という存在でした。
機能的非識字とは、文字自体を読むことはできても、文章の意味や内容を理解できない状態のこと。例えば、SNSに書かれている簡単な文章は理解できても、新聞に書かれている内容は理解できない状態のことをいうそうです。
予約を入れてきた方の中で起きていたこと
今回のオンライン予約の誤解は、まさにこの機能的非識字が影響している可能性が高いと感じました。「○○の際は予約してください」という前提条件が認識できず、「予約」という言葉だけが目に留まってしまったのかもしれません。
役所からお送りした文書が分かりにくかったという可能性も否定できません。ですが今回の通知は2024年8月の現況届で使用したフォーマットを少しアレンジしただけです。
現況届の際は読み違えるということがなかったのですが、今回は一定数の読み違えが発生したようです。
現況届のときは予約するのが正解でした。
でも今回は「役所にお越しの際は予約する」のが正解です。
ところが、
「『予約してください』と書いてあるなあ」
↓
「現況届のときも予約してから行ったなあ」
↓
「何か役所に行かないといけないのかも。8月に現況届があったし。」
と考えたのかもしれません。
この問題の根深さ
福祉の現場では、制度の拡充と規制強化が頻繁に繰り返されます。児童手当の例を挙げれば、支給対象年齢の引き上げという拡充の一方で、多子加算の要件が複雑化し、毎年確認が必要になるなど、情報が複雑化の一途を辿っています。
「新たに○○になりました。でも△△の人は■■していないと手当がもらえません」といった、前提条件付きの表現は日常茶飯事です。
しかし、今回の経験を通して痛感したのは、「△△の人は」という前提条件が、一定数の方には伝わらない現実です。
本人としては正しく読み取れていると感じている。でも実際には情報を正しく理解できていない。その結果、役所側で改めて案内しなおす必要が発生してしまったわけです。
「電話して聞けばいいや」が引き起こす負担
「分からなかったら電話して聞けばいいや」という考えは、一見すると便利な解決策のように思えますが、このことによる負担を軽視しないほうがいいと思っています。
例えば人口約5万人の四条畷市では、年間の受電件数が約15万件あったそうです。安易な電話誘導は行政職員の負担を増大させることになります。限られた人員で、複雑な問い合わせに一件一件対応することは現実的ではありません。
共助の減退と公助への依存増大
少し前までは、「家族の誰かに聞く」という選択肢もあったかもしれません。機能的非識字の方が現代において急激に増えているとは考えにくく、これまでは家族の誰かが正しい読み方を伝えてくれていたことで、役所への問合せが抑えられていたのかもしれません。
ところがだんだんと単身世帯が増えていく中で、身近な人に聞く機会が減少してしまいました。自助・共助・公助のうちの共助の弱まりですね。その結果、公助である行政への依存度が大きくなっているのではないか。
ウラケンさんのVoicyをきっかけに、役所で時々起きていることの謎が少し解明できた気がしました。
