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🌙 【ちょっず埅っおお、台湟。】第䞀章 第二話:参道のカモ肉は倢の味

圌氏に嘘を぀きながら、悊子は台湟の小さな町・金山ぞ向かった。圌が「この町のいいずころを党郚知っおほしい」ず笑うたび、心は揺れる。奜きになったのは圌なのか、それずも圌の愛する故郷なのか。その答えを、ただ悊子は知らない。

倧きな倧きな垂堎のような堎所だった。参道らしい。
呚囲にはたくさんの食べ物や也物やらが軒を連ねおいる。
かき氷ずか、゚ビせんべいずか、モチモチの団子颚デザヌトもあれば、寝具店、䞋着店などなどが狭い道にひしめいおいる。火事が起こったらひずたたりもないが、この密集した生掻感あふれる参道は、日本にはない熱気があっお、楜しい。

ごちゃごちゃずした参道を、泚意深く進んでいく。気を付けないず人にぶ぀かったり、立ち食いの䞲が刺さったりする。料理を運んでいる人もいる。ぶ぀かったら倧惚事だ。

参道をかなり進んだずころで、コりは立ち止たっお、䞀軒の屋台に入った。お店にはドアもなく、参道に銀色の䞞テヌブルがすこしはみ出しおいた。コりは、䞀぀の䞞テヌブルに私を座らせた。他のテヌブルは、芳光客がぺちゃくちゃずおしゃべりしながら座っおいる。普通の屋台颚のお店なら店員さんがきたり、メニュヌの泚文甚玙があったりするのだが、それもない。

「悊ちゃん、ここで埅っおおカモ肉食べないずね」
「え、私ただお腹すいおないけど。11時過ぎだし。」
「ここに来たら、これを食べなくちゃ始たんないんだから。今空いおるし、垭もある。ちょっず埅っおお。」コりは悊子の答えを聞かず、人ごみに消えお行っおしたった。
コりの「ちょっず埅っおお」に䜕回付き合っただろうか。
でも圌の「ちょっず埅っおお」には䟡倀がある。きっず䜕か特別なこずが埅っおいるはずだ。

参道は人混みで溢れおいお、コりのボヌダヌのラガヌシャツはすぐに芋えなくなり、5分経っおも10分経っおもコりは䞀向に戻っおこない。
取り残された悊子は途端に䞍安になった。

「え、どこにいったんだろう」

電話をかけおみたが、コヌルには出なかった。
呚りは知らない人たちばかり。屋台の䞊ぶ蒞し暑い喧隒。こういう地方の芳光地に来るず、倖囜人なんか皆無で、聞こえおくる蚀葉は、䞭囜語ではなく、地元の台湟語ばかり。悊子は途端に孀独を感じる。

もし、台湟語が話せたら、こういう時、隣のテヌブルのおじさんやおばさんず䞖間話ができるのにな。コり君だったら、こういう時、隣の垭のおじさんやおばさんず台湟語でおしゃべりをしお、情報亀換するんだろうな。こういう地元感のある亀流は、䞭囜語より台湟語の方が盞手の心にグッずアクセスできる。でも、私は台湟語わからないから、ちょっずアりェヌ感があるんだ。

——私も台湟語話したいな。コり君も、い぀も台湟語だもんな。私ず話すずきだけ、䞭囜語だもんな・・・もっず、もっず、溶け蟌みたいな。


数日前だった。
倜、悊子を家に垰す道すがら、コりは聞いおきた。

「どこか行きたいずころある」

「そうね。台北や淡氎、台南、高雄は取材で䜕床も行っおいるんだけど、東北゚リアや、東郚はなかなか行けないのよね。車が無いず、アクセスが悪すぎお。金山、い぀も通り過ぎるだけで、ただちゃんず行けおないな。取材行きたいなずは思っおいるんだけど。」

「じゃ、決たりだね。金山、案内するよ。」

「遠くない」

「僕の䜏んでいる汐止゚リアからはそんなに遠くないよ。ランチに行っおみよっか。垰宅しおから、スケゞュヌル確認するね。」

倜、悊子をマンションの前で降ろしお、悊子はすぐにマンションの䞭に入った。そしお、コりの車のテヌルランプを階段の螊り堎からこっそり眺めおいた。ホタルのようだな、消えおほしくないなず思った。



郚屋でGMAILを開くず、日本の圌氏からメヌルが入っおいた。

「悊ちゃん、垰っおきたかな」

時刻は倜9時だった。

「垰っおきたよ。ホタル芋おきた。」

圌氏ずWEBツヌルを䜿っおすぐに音声䌚話を始めた。
「五月なのにホタル芋えるんだ。いいなぁ。僕も䞀緒に芋たいよ。」
「今床連れお行っおあげるよ。すごくきれいだったんだから。」

それから、悊子は、その日あったこずを圌氏に話した。
滝がきれいだったこず、叀い軜䟿鉄道に乗ったこず、暗闇のホタルがきれいだったこず。そしお、同僚ず博物通を䞋芋に行った・・・ず。

「ぞぇ、炭鉱の博物通かぁ。なんか難しそうだけど、すごいずこなんだね。」
「近代史に興味が出ればすごく面癜いよ」
「やっぱり悊ちゃんはすごいなぁ
僕、今床のお盆にそっちに行こうかな。」
「こっちは暑いよ私が垰囜しようかなぁ」
「え。本圓そしたら、軜井沢のホテル予玄しおおくよ。」

悊子は嬉しそうにはしゃいだ。
そしお同時に、真底嬉しそうに、金山ぞのドラむブを思い描いおもいた。

「今床、金山っお蚀う北東郚の町を䞋芋に行くかもしれない。楜しみ。前から行きたかったの。」

「そうなんだ。どんなずころなんだろう。たた教えおね」

圌氏ずの通話を切った埌、すぐに携垯電話を芋た。
届いおいたメッセヌゞの送り䞻を芋お、ずくんず心が匟んだ。コり君だ。
パタリずノヌトパ゜コンを閉じお、携垯のメッセヌゞを開く。

「来週の土曜日か日曜日、どっちがいい朝10時迎えに行けるよ。」

返信ボタンを抌そうずしお、指がボタンの䞊で䜎空飛行した。

わかっおいる、この指はちゃんず"返信"ボタンに着地するこず。
でも、「軜井沢のホテルに行こう」の声が心に優しく刺さっおくる。
悊子は刺すように返信ボタンを抌した。

「ただちょっずわかんない。たた連絡するね。おやすみ」

そうしおから、自分の脳内カレンダヌに、「来週の土曜日は金山」ず〇をした。
焊らしお駆け匕きずいうや぀だ。


———土曜日、泊たりに行かなきゃOKよね。

そう蚀い聞かせお、この土曜日がやっおきた。

参道のテヌブルで、コりを埅っおいる間、呚囲では台湟語がうるさく響いおいるが、悊子は日本語でいろいろ考えおいた。

———私は䜕をやっおいるんだろう。
———別に、私独身だしいいじゃん。
———にしおも、盞圓腹黒いよね。人ずしおどうなの。
———䞀床くらいわがたたに生きたい。
———子䟛だね。
———だっお、コり君玠敵なんだもん。
———コり君の䜕を知っおいるのよ。台湟語も話せないのに。

「悊ちゃんお埅たせ」

コりが汗をかきながら戻っおきた。
その手には、倧きなお皿が抱えられ、そのお皿の䞭に、倧きなむっちりずした鶏肉らしきものが入っおいた。

・・・・・・ふぅん、よだれ鶏か。前菜の定番だ。食べ飜きたな。
ず、悊子は䞀瞬思った。

するず、コり君は蚀った。
「カモ肉だよ。めっちゃおいしいんだよ。すこし先にあるお寺の境内で調理しおるんだ。境内で料理を泚文しおゲットしたら、お皿を持っおここたで数十メヌトル歩かないずいけないんだけどね。」

よく芋おみるず、呚りには確かにプラスチックのお皿を抱えお歩いおいる人が倚かった。こんな人蟌みの䞭で転んだら、取り返しが぀かないが、カモ肉の倧きな皿を抱えお境内を歩くこずが、この金山の䞀぀のむベントになっおいるようだった。

倧きなこんもりずした山のような肉。
二人だけで、こんなにたくさんのカモ肉を食べおしたっおもいいのだろうか。

「早く食べおごらん。この生姜ず䞀緒に食べるず、たた味わいが違うよ」

コりは悊子の小さな取り皿に、カモ肉を数切れ取り分けおくれた。悊子は長いプラスチックの箞を䜿っお、カモ肉を䞀切れ぀たんで、口に入れおみた。

ヌヌヌヌヌんやわらかい
旚味がうたみが旚味が

悊子は必死に咀嚌した。咀嚌するごずに、染み出おくる奥深い旚味。

「ナニコレ、メッチャおいしいんだけど非垞奜吃讚こんなの初めお」

顔を䞊げるず、コりず目が合った。

「この参道は枅の時代からの叀い参道なんだ。このお廟のカモ肉は、味も販売方法もずっずこんな感じで続いおいお、特城的だろう参道党䜓が鎚肉レストランなんだ。金山ず蚀えば、これを食べずしお䜕ず蚀う、だ」

こんなおいしくお庶民的な屋台が、私が生たれる癟幎以䞊前から続いおいるなんお、䜕䞇人もの人が、鎚肉の倧皿を抱えながら参道をいそいそず行き急いでいるなんお、䜕だか䞍思議だ。

コりはニコニコしながら、悊子が箞を運ぶ様子を芋おいる。そしお、二人はあっずいう間にカモ肉を平らげおしたった。

コりは立ち䞊がるず、近くにいた店員らしき人に台湟語で話しかけおいた。なにを話しおいるか気になったが、台湟語はどうしおもわからない。

その店員さんが䞭囜語で話しかけおきた。
「あなた日本の方なの」
「はい。ずっおもおいしかったです。ありがずうございたした」
「そんなお瀌なんお。日本人はやっぱり䞁寧ね。もっずさっぱりでいいんだから。それにしおも䞭囜語䞊手ね。圌が日本人だっお教えおくれなかったら、わからなかったわ」
「よく蚀われたす。でも台湟語ただわからなくお・・・・」
「台湟人ず結婚すればすぐわかるようになるわよ。台湟語もぜひがんばっお」
そう蚀っお、店員さんは悊子に手を振った。
  結婚かぁ
そう反芻しおちらっずコりを芋た。

「悊ちゃん、あっちの方に、有名な癜玉デザヌトのお店があるんだっおさ。食べに行っおみる」

「癜玉っお、あの玫芋ずかサツマむモで䜜ったや぀だよね。うヌん、食べたいけど、もうお腹いっぱいできれば、冷たいゞュヌスずか飲みたいなぁ。」

「そうだねじゃ、ゞュヌススタンドで飲み物買っお車に戻ろうか。」

コりは悊子ず手を぀なぐこずは無かった。
でも、悊子を゚スコヌトしおくれる。

二人はドリンクスタンドでお茶を買うず、駐車堎たで戻った。
悊子は、たるでそれが自分の車のように、助手垭のドアを開けお、助手垭に座った。

コりが゚ンゞンをかけた。ただ、゚アコンは生ぬるい。
ナビを芋ながら、コりが話しかけおきた。

「悊ちゃん、おいしそうに食べるね。食いしん坊で芋ずれちゃったよ。」

「䜕それだっお、本圓においしかったし・・・」

「俺は、お腹いっぱいで苊しいよ」

「あんなに食べるんだもん。苊しいなら残せば良いんじゃない」

するず、コりは突然眉間に皺を寄せお、怖そうな顔で悊子に顔を近づけた。

「実はあの鎚肉、䞀切れでも残すず、神様の呪いで、その人の倢を䞀぀消しおしたうず蚀われおいる  」

「えマゞで」

「うそだよヌん」

「なヌんだ。良かった。倢がずられたらやだもん」

「悊ちゃん、倢あるの」

「うん。旅行雑誌の線集の仕事、楜しい。い぀か自分で本出したいな。クレゞットにもっず名前茉せたい。コり君は」


「悊ちゃんの倢、玠敵だよ。僕も協力したい。

僕の消えおほしくない倢は  生涯のパヌトナヌだ。
そろそろ結婚したい。」

「  そうなんだ。コり君魅力的だもん。きっず倢は叶うよ」

悊子にはそう話す事しかできなかった。
しばしの沈黙が流れた。

「  僕の知っおる『この地域の良いずころ』党郚悊ちゃんに知っおもらいたい。」

ドギマギした。
「あ  うん、私もずっず金山に来たいず思っおいた。でもこのカモ肉のおいしさには、本圓に驚かされたわ。この参道党䜓がレストランなのね。

  もっずこの金山の歎史が知りたいなぁ。コり君にもっず教えおもらいたいし、いろいろ䞀緒に行きたいな。」

蚀った埌に少し埌悔する。ドギマギしすぎお、心の内をたざたざず明かしおしたった。これ以䞊深みにハマれば戻っおこられないのに。

「あのさ、今日は倜たで䞀緒に居られるの」

コりがじっず悊子を芋た。

「あ、でも、倜はおうちに垰らないず・・・」

「僕の友人ず䞀緒に晩ご飯食べない芪友を玹介したいんだ」

「芪友」

「僕の䞀番の友だちだ。あい぀、僕ずも䞭囜語で話すし、日本の事もよく知っおるし、悊ちゃん仲良くなれるず思うんだよね。今から、ドラむブしたらちょうどいい時間にあい぀ずの埅ち合わせ堎所に到着できるしさ」

「そうなの・・・じゃ、遅くならないのならいいかな。」

「よし、それなら、巊回りで、東北海岞線をぐるっず回っお、陜明山に行こう途䞭あそこに行く『野柳』」

「行きたい行ったこずなかった」

「よし、決たりだね」

コりは、手のひらを高く䞊げた。
悊子も手のひらを䞊げお、二人はパチッず手を重ねた。
コりの倧きく分厚い手のひらが、悊子の手のひらの奥にい぀たでも䜙韻ずしお残っおいる。二人は芋぀めあったたた、ゆっくり手を䞋げた。

午埌も続く二人きりの時間が、この車内に充満した。

暑い車内。汗ばんだ䜓を近づけたい衝動に䞀瞬かられたが、悊子はキュッず手を匕っ蟌めう぀むいた。頬が玅朮するのがわかる。胞の奥がキュッずする。

そんな悊子の様子を芋お、コりは悊子のおでこを優しくなでた。
同時に涌しい゚アコンの颚が二人の汗ばんだ䜓を冷やし始める。

「いこっか。」

そう蚀うず、コりは車のシフトレバヌを䞀速に入れた。゚ンゞン音が少し䜎く唞り、車はゆっくりず参道を離れお走り出した。

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