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おひとり様でトトノウを決めた夜


先日、私はスーパー銭湯にて晴れてトトノウデビューを果たした。



あれから割とすぐにまたトトノウチャンスが到来し、前回はトトノウ先輩がいたのだが、今回はひとりでトトノウ世界に飛び込むことになった。


DAISOなのに200円というrichなスパバッグを片手に、緊張しながら大浴場を歩く。
──みんなが私を見ている気がする。
しっかりしろ、今日はトトノウ先輩はいないのだ。


まずはシャワーで己を清める。
私は洗うのが早い。
一口水分を含んでから、さっそく外にあるトトノウ世界の扉へ向かった。


──85度の扉が開く。


モワッ


きたぜ、モワッがきたぜ。


前回と同様に下から2段目の奥に座り、5分の砂時計をひっくり返す。
今日のテレビ中継は、世界陸上だった。前回はバレーボール中継。
サウナって、スポーツを見せたがるのだろうか。
みんな無言でじーっとメインキャスターである織田裕二が興奮している姿を一緒に見る。


5分経ち、始めは無理せずすぐにサウナを出た。
ベンチが空いていたのでひとりで座り、空を見上げる。
夜の風が心地いい。


「うさぎが好きな食べ物って10回言ってみて!」


私の目の前で小学生くらいの女の子2人が立ちながら話していた。
「うさぎが好きな食べ物、うさぎが好きな食べ物・・・」1人の子が言い始めた。
これ10回言うの長くない?飽きてこない?っていうか、人参じゃないの?と思いながら聞き耳を立てていると、「もう言うの疲れた!」と言って、どこかへ行ってしまった。
──教えてくれ、結論!


その後、すぐにトトノウ2ラウンドめに行き、また5分で出る。
出るとすぐ左に16度の水風呂がある。前回はその冷たさに即ギブで入れなかったが、85度からの16度って体がどうなるのか知りたくなり、挑戦することにした。


ちょろっと足先に水をかけてみる。
ヒッ!思わず声が出てしまうほど冷たい。そんな私の横を中学生くらいの女の子が平気な顔してジャブーンと入って行った。目が合った。
──負けてらんない。
私は思い切って肩から水をかけた。ヒィ〜ッ!我ながら情けない声が漏れる。
フッと小娘が笑う。


「冷たいねー!」

「すぐ慣れますよ」


小娘の塩対応に心が折れそうになりながらギンギンに冷たい水で体を冷やす。
指先から心臓まで一気に冷たさが駆け上がってきて、余りの冷たさに息が苦しくなる。
こんな時は呼吸だ!
ヒーヒーふぅ
ヒーヒーふぅ
うん、これはラマーズ法だ。
出産か?分娩室かここは!


私はひとり、見えない何かと闘いながら20秒ほどして水風呂から出た。
そして、またベンチに座り、夜空を見上げる。


サウナから水風呂に入った後の外気浴は、今まで経験したことがないくらいの爽快感だった。
頭も視界もクリアになり、体の細胞ひとつひとつがパッチリ目を覚ましたようだ。
めちゃくちゃ気持ちいい。


だいぶトトノッタので、そろそろ湯に浸かることにした。
どのお風呂にしようかと見渡し、誰も入っていないシルク風呂に決めた。
お湯を体にかけてから、そっと足の指先を乳白色の湯に入れていく。
──ここでふと、気がつく。
ここのシルク風呂だけが明るく照らし出されていることに。
私はまるでスポットライトを浴びているような感じになってしまった。
恥ずかしい。
誰も見てないと思うけど、それでも恥ずかしい。
湯に肩まで浸かりながらもライトに照らし続けられていることに耐えられず、すぐにシルク風呂を出た。
出る時もスポットライトを浴びながら。


次は、前回入らなかったバブルバスに入った。
想像以上に激しくバブっていて、驚く。
浴槽底部からの大量ジェット噴射が容赦なく私の体を上に持ち上げる。
──ちょっとなにこれ、激しすぎ。
抵抗も虚しく、ボコボコの泡に踊らされる私。
羞恥心まで泡立ってきた。
強烈バブリーダンスを踊らされたおかげで血の巡りが良くなりすぎ、全身が猛烈に痒くなってきた。


──んあっ、痒いっ、ギブ!


私は全身を掻きながらバブルバスを出て、ぬるめのシャワーで体を落ち着かせた。
えらい目に遭っちまったぜ・・。


最後にもう一度だけサウナに入ることにした。
3ラウンドめもまた同じ下段に座る。
自分の腕をじっと見ていると、汗のかき方が変わったことに気がつく。
解放された汗たちが次から次へと暴れ出す。
──私の老廃物も、余計な考えも、全部出てしまえー!
今度は6分ほど熱と向き合い、再び水風呂へ。
先ほどよりもスムーズに入水できた。


目をつぶり、体が急冷されていくのを感じる。
心臓がドクンドクンする。
最後にまたベンチに座り、外の新鮮な空気で自分を塗り替えていく。
全身がリセットされたみたいに、ただ気持ちいい。


──私、ひとりでトトノウを決めてやりましたよ。


心地いい風に吹かれながら夜空を見上げ、トトノウ先輩にドヤ顔で報告しておいた。


***


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